海月-Mitsuki-

みつきです 音楽家 / 詩人 歌 / ラップ / 執筆 / 朗読 My name …

海月-Mitsuki-

みつきです 音楽家 / 詩人 歌 / ラップ / 執筆 / 朗読 My name is Mitsuki. Artist Sing / Rap Youtube: https://www.youtube.com/channel/UCOg0s2Mo0f0z8tjvFxxIuIw

マガジン

最近の記事

アクマモドキ

一章 プレイバック・デーモン 悪魔みたいなガキだ――。  まるで安い漫画みたいですよね。ほら、あるじゃないですか。なんとなく主人公を酷い目にあわせて、それで盛り上がりを演出する。  ああ、そうです、そういうの。  別に悪いことではないと思います。いじめとか、不倫とか、そういうのって物語にしやすいじゃないですか。ヒキも作れますし、細かく区切って掲載するwebやアプリの漫画向きですよね。課金させたいなら、一番わかりやすい手法なんじゃないでしょうか。  失礼、話がズレました。  そ

    • 陸に溺れた人魚姫

      Intro 望んだ相手と、望んだように結ばれることなんてどれくらいあるのだろうか。  望んだ自分に、望んだようになれることなんてどれくらいあるのだろうか。  誰かの押し付けてくる価値観を強い意志で跳ね除けて、自分らしく生きることは本当に出来るのだろうか。  よくわからない。  小難しく考えることばっかり得意で、そのくせ大した結論が出ないからいつもいつも肝心なことが言えない。喉が詰まって、言いたい言葉が出てこない。喉が枯れてしまったかのように、声を失ってしまったかのように。ただ

      • 『脳に映る夢をみる』Visualizing Virtual World introduction

        浜辺の夢 母が亡くなったので急ぎ電車に乗った。  ここのところかかりきりになっていたはずなのに、死に目に会うことは出来なかった。そのことへの感傷はあまりない。朝方の始発にほど近い電車と同じように、なんとなく隙間が多く、なんとなく揺れているだけだ。  幾ら都会といえど、こんな時間では人が少ないらしい。たしか今年の元旦、これと真逆の感想を抱いた記憶がある。流石都会、こんな日でも人がたくさんいるものだと。けれど、その時と今では乗客の人数にそれほどの差異はないはずだ。僕の頭にあるイ

        • 『イカロス』introduction #少女カルテ

           教室の隅が光っている。  よくわからないけど、そんな気がした。小学校に入学して、嬉しさと緊張で心がぽわぽわぐつぐつしていたあの時だ。  集中し過ぎて逆に曖昧な世界の中で、その光だけは強烈に覚えている。凄かった。光の源は一人の男の子。そんな目の前の事実を認識するのにも少し時間がかかるくらい、私は戸惑っていた。  今まで見た誰よりもカッコいいとか、誰よりも背が高いとか、誰よりも優しそうとか。今思い返せば、そういうわかりやすい憧れと恋慕だったに違いない。  けれど、けれど。  何

        アクマモドキ

        マガジン

        • #MTK_漂流詩 かわいいシリーズ
          6本
        • #MTK_漂流詩 呪詛返シ
          1本

        記事

          #MTK_漂流詩 人形姫 おしまい

           その人はかわいかった。  SNSで見かけた、自撮り。  私を含めて多くの人が必死にかわいさを演出し、縋りつき、縺れあい、引き込まれていくかわいいの坩堝。そんな蟻地獄めいたSNSの自撮り界隈で、その人だけはあるがまにに輝いていた。  彼女はそう、澄んでいる。私たちにありがちな執念や怨念は全く感じられず、ちゃんとかわいかった。どうしてだろう、私は彼女を見たときに真っ先にそう感じたのだ。ちゃんとかわいいと、ちゃんとしていると。  じゃあ、もしかして。  濁ったかわいさを競い合う私

          #MTK_漂流詩 人形姫 おしまい

          #MTK_漂流詩 人形姫 おこり

           はじめて自分の顔にメスを入れた時、私の中には言いしれない虚無感があった。ついにここまで来てしまったのか、歪さを直視するようで涙が止まらなかったことを覚えている。  それとも、実は嬉しかったのだろうか。  「私」はいつもバラバラで、矛盾する感情や思考にいつも振り回されている。だから、自分のことがよくわかるけれどわからない。一個一個の部品は鮮明なのに、完成図はぼやけたままだ。  私は私を知りたい。  そのために、分解する。  かわいくなくてはいけないという強迫観念と、社会から認

          #MTK_漂流詩 人形姫 おこり

          #MTK_漂流詩 人形姫 はじまり

          「まるでお人形さんみたい」  小さいころ、私の話をするお母さんは必ずそう言った。よくわからないけど、たぶんあの人は頭がメルヘン。きゅるるるんって擬音が似合う脳内をしていて、その証拠に私の名前はキラキラした文字だけで構成されてる。その文字が使われてしまった時点で美形以外は許されない。そんな名前。男の子ならそうだな、露美男でロミオとかそういう感じだろうか。美形ならいいけど、おブスでこれは悲惨だ。  もしも私に子供が出来たら、絶対に普通の名前にする。前年度の命名数ランキングを見て、

          #MTK_漂流詩 人形姫 はじまり

          #MTK_漂流詩 丑三つ時

           丑三つ時って何時だっけ?  よく知らない、あんま意識したこともない。そもそもこんな言葉どこで知ったんだっけ。  こういう時、わたしって賢くないなって思う。よく言われる、美姫は馬鹿だねって。うっさいなと思うけど、ほんとのことだからあんま言い返せない。それに、馬鹿なわたしのことがわたしは割と好き。馬鹿なままでいたい、賢くてもいいことないもん。  後ね、自分が馬鹿だって知ってるのはいいことだと思う。これで何か得したこともないけど、それでもそんな気がする。だって損してないもん、なら

          #MTK_漂流詩 丑三つ時

          #MTK_漂流詩 『おまじない』

           拝殿の奥にある鏡へ、持参した携帯の画面を向ける。合わせ鏡、昔ながらのおまじない。  01010101010101010101010101010101……  そうすれば会えるらしい。会ってどうするかは、あなた次第。あなたのしたいようにしなさい、決めるのはあなたしかいない、この場にはあなたしかいない、鏡の中にはあなたしかいない。  0も1もずっとあなた。  あなたと、あなたの、間の、あなたは、だあれ?  昔からある、おまじない。  昔ながらの、おまじない。  昔から、どいつも

          #MTK_漂流詩 『おまじない』

          #MTK_漂流詩 福男

           私の朝は早い。  というよりも、意図的に早くしているといった方がいいだろう。日の出の頃には目覚め、軽く汗を流し、メールのチェックをし、シャワーを浴びた後、家族と食卓を囲む。淡々としているのかもしれない。しかし、その緩やかな時間から確かな価値を嗅ぎ取ることが出来る自分が、私は好きだ。非常に気分がいい。  そもそもこのスケジュール自体が、ある種私の努力と成果の証である。22時に床につけるようになったのは幾つの頃だったか。使われる側から使う側になることで私の生活は激変した。  勿

          #MTK_漂流詩 福男

          #MTK_漂流詩 藁女

           羨ましい。  シンプルな言葉なのに、どうしてこんなにも心の奥底にこびりつくのか。  羨ましい、羨ましい。  自分がそう感じているという事実を認識して以降、私の人生はこんなにも不愉快でしかたない。  羨ましい、羨ましい、羨ましい。  持って生まれただけのものでのうのうと、笑顔で、幸福に、あんなにも楽しそうに生きている。溌溂と周囲を傅かせ、爛漫と他者を虐げる。花の姿をした暴君が、私は嫌いでしかたがない。この気持ちを分かってくれる人はたくさんいるはずなのに、表に出せば私の社会的な

          #MTK_漂流詩 藁女

          ルックバック感想-藤野に残されたものは呪いなのか? そうは思いたくない-

          はじめに皆様はじめまして、海月-Mitsuki-と申します。 やや気取った名前だなと思われるかもしれませんが、自分は普段この名義で音楽活動をしているので、あなたの感性は正しいです。 そしておそらくこの文章も気取った感じになると思います。ご了承ください。 さて、そんな自分が何故この記事を書いているのかと言いますと、タイトルにもある、藤本タツキさんの作品『ルックバック』を読んだからです。 2021年7月19日。日付の変更と共に公開された本作は、時代を抉る新時代青春読切の煽り文句

          ルックバック感想-藤野に残されたものは呪いなのか? そうは思いたくない-