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しろいろ な おもい

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#エッセイ

私はヨーコ

私はヨーコ

この星に生まれ落ちて、私はずっとジョンを探す旅に出ているのだと思う。

オノ・ヨーコと呼ばれていた時があった。
前髪をセンターで分けて、長くて黒い髪に細かくウェーブをかけていた時に、そう呼ばれていた。
「初めてお会いした時、あ、この人ヨーコだ、と思いました。こうしてお話をさせていただくようになって、やっぱりヨーコだ、と思いました。」
私のことをヨーコと呼んでいた人は、以前そのようにお話をしてくれた

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真っ白な部屋に、花が咲いた日

真っ白な部屋に、花が咲いた日

真っ白な部屋の中、私たちは外の世界を知ることができない。
大部屋に流れるテレビのニュースの情報だけを頼りに、4月に咲く花に思いを馳せていた。

ここは閉鎖病棟。
外へ出られる窓も、綺麗な植物も何もない、ただ鍵のかかった真っ白な部屋。
皆が何かを抱えていて、だけどここにいる理由はあえて誰も聞かない。
私たちはその部屋でなるべく心穏やかに、たまに懐かしい歌を一緒に口ずさんで、ただ一日が過ぎていくのを待

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「また明日ね」に

「また明日ね」に

なんとなく
「今日で命を終わらせたいな」
と思ってしまった日でも
「また明日ね」
と笑顔で手を振ってしまう。

“その一歩”をどうにか踏み込まないように
たった今 呼吸を繰り返している事実から
なるべく意識を逸らす。

私には「明日」を約束した人がいる。

「これはきっと悪い夢なんだ」
そのことだけを信じて
この世界にたった一人だけの夜を迎える。

当たり前のように今日も朝日は昇る。

「目覚めら

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スマホ時代の人間関係

スマホ時代の人間関係

メッセージのやりとりをする相手なんて掃いて捨てるほどいる。
それでも心が満たされないのは何故だろう。

顔の見えない相手からの返信を待っている。
スマホを何度も立ち上げ、通知がゼロなことを確認する度に落胆する。
傷つくことが怖い。
それでも自分が相手を傷つけることにはもう鈍感になっている。
ちょっとした言葉で、態度で、簡単に切ることができる世界。
「またダメだった」その少しの心の傷を埋めるように、

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永遠なんてものは

永遠なんてものは

いつか壊れてしまうことに対する恐れを常に抱えている。

いつか割れてしまうことが怖くて、あえてお気に入りのお皿に出会おうと思わない。
いいと思ったものは大体儚くて、手にしたときに割れてしまうのではないかとドキドキする。
だから安易に触れたくない。

永遠なんてものはこの世に存在しない。
でも永遠というものをずっと探している。
だからおさないひかりさんの詩の一節に触れて、私は泣いたりもした。

先日

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