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私はヨーコ

この星に生まれ落ちて、私はずっとジョンを探す旅に出ているのだと思う。

オノ・ヨーコと呼ばれていた時があった。
前髪をセンターで分けて、長くて黒い髪に細かくウェーブをかけていた時に、そう呼ばれていた。
「初めてお会いした時、あ、この人ヨーコだ、と思いました。こうしてお話をさせていただくようになって、やっぱりヨーコだ、と思いました。」
私のことをヨーコと呼んでいた人は、以前そのようにお話をしてくれた。

私がヨーコと呼ばれていた時、自分のことが嫌いだった。
特に自分が依存体質なことを自覚していて、だからこそ恋愛というものを極力避けて生きてきた。
それでも人は誰かのことを好きになってしまう生き物で、私もその誰かと出会う度に恋に落ちてきた。
だけどその度に傷ついて、そんなことを繰り返しているうちに「大切な人なんていなくていい」と思うようになっていった。

そんな時にかけられた言葉。
「実里さんは一途で依存っぽいところを含めて、ヨーコなんですよ。だからただ、ジョン・レノンを探せばいいだけの話なんですよ」
私のことをヨーコと呼んでいた人からの言葉だった。
「私はヨーコで、例え依存体質であっても自分のことをむやみに否定しなくていい。そんな自分を受け入れてくれる人、ジョンのような人と出会えばいい。」
とてもシンプルな話だけど「私は私のままでいい」と肯定してもらえた気がして、その言葉に随分と心が軽くなった。

あれから黒くて長かった髪をバッサリ切って、髪色も明るくした。
見た目が変わると同時に不思議と依存体質だった自分からも脱却できたような気がした。
それでも今でも、夜の海に行って泣いてしまう時がある。
この途方もなく広がり続ける夜空を見上げては「私のジョンはどこにいるのだろう」と心細くなってしまう時がある。
それでもきっと、この星のどこかにジョンはいる。
私は私のまま、私にとってのジョンを見つけ出せばいい。

私はヨーコ。いつかきっと、ジョンに出会える。
まだ見ぬジョンの存在が、私のことを強くしてくれている。

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