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踊り場でおどる

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文学フリマで販売したZINEに書いたエッセイです。
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FUNNY DANCE

FUNNY DANCE

 木枯らしが吹き、冬が駆け足で近付いてまいりました。卒業式の日、本当はちょっとやりたかった答辞みたいなものを読みたいと思います。

 高校生活を振り返ると、本当にいろいろな日々が思い出されます。
 数学のテストで100点満点を取ったこと。その次のテストで8点を取って、あまりの落差に担任から呼び出されたこと。
 修学旅行で行った沖縄の、海が見える宿で、友だちが YUI の『SUMMER SONG』を

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君に紡げ

君に紡げ

 何度も見る夢がある。高校最後の文化祭、チア部で立った引退ステージの夢だ。
 本番直前になって、たとえばシューズとか、衣装とか、大事なものを家に忘れてきたことに気付き、途方に暮れる。しかし刻一刻と開演の時間は迫ってきて、私はずっと絶望している。そこで目が覚める。

 なんていう夢に、8年経った今でもうなされてしまうくらい、文化祭は私にとって、良くも悪くも記憶に残るイベントだった。
 高校生活そのも

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高校未デビュー

高校未デビュー

 人生で一度も、男の子と花火を見たことがない。クリスマスを一緒に過ごしたこともないし、ディズニーランドに行ったこともない。

 と言うと、憐れみの目を向けられたり、変に気を遣われたりするのだが、なぜそうなるのかが私にはずっとわからない。
 記憶をたどったとき、花火や、イルミネーションや、シンデレラ城を背景に、大好きな友だちの笑った顔がセル画みたいに重なって見える。
 愛のかたちは違うかもしれないけ

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キャプテン失格

キャプテン失格

 放課後、私は時々女優だった。

 今思い出しても笑ってしまうのだが、「やる気がないなら帰ってください」という台詞を一度だけ言ったことがある。とある平日、部活のミーティング中でのことだ。
 過去の自分とはいえ、こんな絵に描いたような〝部長〞っぽい言葉を、同じ口から発していたのかと思うとびっくりする。

 さらに笑ってしまう話、あれ全部、台本だった。
 数日前に言おうと決めて、ルーズリーフに一言一句

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イーストライド

イーストライド

 「死ね」という言葉を言われたことがあるし、言ったことがある。小学6年生の頃の話だ。

 目立ちたがりな性格だった私は、クラブや委員会のリーダーにガツガツと立候補していて、それをよく思わない子たちがいたようだった。
 「(◯◯ちゃんが)〝死ね〞って言っといてだって」とクラスメイト伝いに暴言を吐かれたり、「死ね」と書かれた手紙が道具箱の中に入っていたこともある。
 今思えば、私もそう言われるような行

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