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不安社会革命|自分の考え方の癖を積極的に利用するニューバランサー達の未来(「脳科学は人格を変えられるか? / エレーヌ・フォックス」を読んで②)

また今回も「脳科学は人格を変えられるか? / エレーヌ・フォックス」を読んで感じたこと、未来はこんな事になる{かもしれない}という予報をいくつかご紹介したいと思います。
前回の記事は下記より。

認知のバイアス(偏り)とは?

エレーヌ氏は書籍の中で、「心の根底にある微妙なクセ・認知バイアス」について解説をしています。

ポジティブなことやネガティブなことへの反応の偏りはごくわずかで、単に被験者に質問をするだけでは計測ができない。そもそもわたしたちは、心の奥で起きているこうした動きは自分では認識していないのだ。こうした心の状態を「認知バイアス」と呼ぶ。

本の中で取り上げられていた事例は、<道に歩いている時に久しぶりの友人とすれ違ったけれども反応が無かった>という状況の時に、「自分は好かれていないから無視されてしまった」と思うか、それとも「気づかなかっただけ」だと思うかというものです。

状況を「どう解釈するか」が、「どう感じるか」に大きく影響することを、この例はわかりやすく示している。同じ状況を「相手は何かに気をとられていたのだ」とポジティブに解釈すれば、それは楽観的な心の傾向を助長するが、「自分は嫌われているのだ」とネガティブに解釈すれば、ネガティブな思考のスパイラルが怒り、悲観的な心の傾向にさらに拍車がかかる。

非常にわかりやすいですね。脳にはこのような認知のバイアスがたくさんあり、それぞれの考え方に影響を及ぼしているとエレーヌ氏は話します。
心配事があって身近な人に相談をしたら「考え過ぎよ!」と言われた事がある方もいるかもしれませんが、そのような時にもこの認知のバイアスが作用しているのかもしれません。

日本でも行われている認知行動療法。精神医療も予防する時代になるか?

日本でも抑うつを抱える人や不安障害を抱える方に向けて行われているのが認知行動療法です。最近では職場におけるメンタルヘルスが話題に上がり、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

認知行動療法の詳細は上の記事がわかりやすいので割愛します。
ウェルビーイングもバズワードになり、心身ともに健康を保ち続けよう!という風潮はとても加速してます。「治療ではなく予防だ」という言葉もよく聞くようになりました。
現在は診断を受けた人が行うプログラムとなっている認知行動療法ですが、これからは予防として積極的に活用する人たちが現れるのではないかと考えています。
ニューバランサー達は、自分の考え方の癖を病気にならずとも意識し、積極的にその癖を利用していくようになるでしょう。

予報01:瞑想の時間にプラス!ネガティブなものを見ないように脳の癖をつけるゲームが流行

注意バイアス」は、何に注目してしまうかという心の癖です。数あるニュースサイトの中から自分が見たい情報を優先的に読んでいく感覚は皆さんにもあるかもしれません。自分の好み以外にも、<不安な時は不安を煽る記事を / テンションが高い時は明るい記事を呼んでしまう>ように、自分の気分にも左右されていると感じることもしばしばあると思います。

心配性の人や悲観的な人はネガティブなものごとに引き寄せられるいっぽう、ポジティブなものごとを避けている。(中略)
不安症ではない人にはネガティブな情報を避ける方向に強い偏りがある。

Personal Zenは、認知行動療法の注意バイアス修正法のノウハウを基につくられたアプリ。怒った顔や怖いオブジェクトを避けながら、笑っている顔を指で追いかけるというシンプルなゲームです。ネガティブなイメージではなくポジティブなイメージを追いかけるトレーニングをすることで、脳にかかる認知バイアスを修正し、ストレスを軽減してくれるようです。
ニューバランサーは毎日のスキマ時間を使ってこのような科学的に不安を軽減するアプリやサービスを"自分のタイミング"で積極的に活用していくでしょう。
"ながら"でできるようなサービスが出てきたら、若者に爆発的な人気になるかもしれませんね。

余談ですが、ここ数年で飲料はトクホが非常に多くなりました。身体に良い"印"がつくことで人々が手にしやすくなります。ゲームには年齢制限のマークが現在ついていますが、逆にトクホマークのようなポジティブな健康印がつく日が来たらいいのになぁと考えたりしています。

予報02:自分の信じていたものを疑うコンテンツで信念を一新!"変化"が心のバランスを保つ秘訣になる。

もう一つ認知バイアスの中で取り上げられていたのが「確証バイアス」です。確証バイアスとは「見たい意見だけを見て自分の信念を強化する」バイアスです。
SNSなどのタイムラインは自分と近い思想を保つ人達が集まるため、自分の意見が肯定されているという錯覚が起こるということで、ここ数年フィルターバブルエコーチェンバー現象という名前で問題になっています。
無意識に植えつけられているバイアスは、個人の確証バイアスによってより信念を凝り固まったものにしてしまうのです。

たとえば、「女性は車の運転が下手だ」という信念を持っている人はその信念を、女性ドライバーの悪例を数多く目に留めることで確認しようとする。運転が下手な男性や運転が上手な女性を目にしても、それは認識をすり抜けてしまう。つまり、その人の核にある信念に合致しないものごとは、目の前にあっても認識されないのだ。信念のシステムはわたしたちが何を意識し、何を認識しないかを決定する。その信念自体はしかし、わたしたちがまず何を認識したかにかなりの度合いで左右されている

ニューバランサー達は、積極的に自分の信念を崩していきます
自分の凝り固まった無意識のバイアスに気づいた時には、急に自分の目の前の世界が広がり、人生が豊かになったと自覚するからです。

SXSWのピッチでファイナリストに選ばれていたPraxis Labsは、無意識のバイアスをトレーニングで気づかせる研修を提供するスタートアップです。SXSWでもここ数年間、VRを活用し、職場での人種や性別差別やハラスメントを被害者の視点で体験させることで無意識のバイアスを気づかせるようなVRコンテンツの開発は行われてきましたが、そのような専門の会社ができたということには驚きました。
このようにVRを活用しながら、他の人の視点に立って物事を考える訓練を提供する研修サービスはこれから盛り上がっていく分野でしょう。

ニューバランサー達も、自分の思考が偏ってないか?客観的視点に少しでも近づきながら、積極的に自分の考えを整理することで「知らぬ間に人を傷つける」不安をなくしていくでしょう。

また、MIT Media Labのプロジェクト FlipFeedのようなツールも、ニューバランサー達には非常に受け入れられるサービスになりそうです。
FlipFeedは人工知能を活用したGoogle Chromeの拡張機能で、政治思想の偏りによってツイートを分類してくれます。自分の意見と反対の人たちがどのような意見を持っているのかを確認できるようになることで、自分の考え方を批判的に見ることもできますし、単なる二項対立ではなくお互いの意見に共感できるところを見つける作業にもつながるでしょう。
自分の意見とは異なる情報といかに出会えるかニューバランサー達は、自分の中の不安を"同じような意見を聞いて解消"するのではなく、"違う意見も積極的に取り込みながら深く考える"ことで、自分たちで積極的に安心を作っていくのです。

予報03:身長体重の記録ではなく"気持ち"の記録でリフレッシュ。気分のラベリング時間が心の安定に

エレーヌ氏は本の後半で、抑うつを科学で癒す可能性について解説しているのですが、その中でもマインドフルネスを活用した行動療法について丁寧に説明しています。その中でもとりわけ面白いのが「ラベルづけ」です。

心に浮かんだ考えに「ラベルづけ」すれば、感情を制御することができる
感情をコントロールするには、自分がものごとをどう解釈しているか認識し直すだけでも効果がある。(中略)
<ラベルづけ>の作業で前頭前野の反応が強まり、それが扁桃体の反応を弱めることにつながったわけだ。
※全頭前野はサニーブレイン(ポジティブな心の動き)と強い関連があり、扁桃体はレイニーブレイン(ネガティブな心の動き)と強い関連がある

ラベルづけとは、今この瞬間の気持ちや起こっていることを言語化してラベルづけしていく作業を指します。
うつ病などの治療にもこのような<ラベルづけ>は行われているそうです。コラム法とも呼ばれ、状況やその時の感情を記述していく形がとられているようですね。こちらの病院もワークシートを公開してくれています。親切ですね。

治療ではなく予防、と先ほども話をあげましたが、このようなワークも病気になっていない方にとって、もっと身近になってくるでしょう。誰しも不安を抱える時代、ニューバランサー達は、毎日体重をはかるように自分の気分を記録して、積極的に自分のメンタルの健康を保つかもしれません。

Moodnotesは、自分の気分を記録していく認知行動療法をベースにしたアプリです。かわいい顔のアイコンを操作して、その時の感情を記録していきます。

apple watchやiPhoneのヘルスケアアプリで自分のデータを記録している人も多いかと思います。ニューバランサー達は、自分の気分までも記録して心も健康に保つことで、ダイエット感覚で自分のメンタルケアをする日もそう遠くないかもしれません。

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またまだ「脳科学は人格を変えられるか? / エレーヌ・フォックス」を読んで感じたこと、そこから考えられるニューバランサー達の生態について考えていきます。お楽しみに!



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