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【イベントレポート】実践者に聞く!ミライの教育の見つけ方Vol.08 新渡戸文化学園副校長 山藤旅聞さんゲスト

※本noteは、2023年2月18日に開催した「実践者に聞く!ミライの教育の見つけ方vol.08 生徒自ら授業をつくる 新渡戸文化高校のクロスカリキュラム」のイベントレポートです。

はじめに

こんにちは、一般社団法人 ミライの学校 事務局です。
このnoteでは、2023 年2月18日にミライの学校が開催したオンラインイベント「ミライの教育の見つけ方」の第8回の様子をお届けします。

2月は、新渡戸文化学園中学校・高等学校副校長、教育デザイナーの山藤旅聞先生にご登壇していただきました。

「学び」を止めない教育デザイナの山藤先生がつくる授業は、生徒たちが「問い」を持ち、「行動する」ように促すものです。昨年には、全国放送のニュースでも取り上げられた今注目されているクロスカリキュラム。山藤先生がつくる新しい探究学習とはどのようなものなのでしょうか。

そして、実はミライの学校を設立した当初から繋がりがあり、ご縁のある山藤先生。新渡戸文化学園とミライの学校で続けてきた取り組みから、山藤先生が実践する授業の全貌まで、余すところなくお楽しみください。
それでは、ここからイベント当日の様子をお届けいたします!

(1)ゲストスピーカーのご紹介

ゲスト:山藤旅聞先生


●プロフィール

新渡戸文化学園中学校・高等学校副校長、教育デザイナー/(一社)Think the Earth/(一社)旅する学校 代表理事
1980年東京都生まれ。
公立高校の教師として2014年にJICA東京主催「教師海外研修」でブータン王国を訪問。帰国後、教科と社会課題をつなげて、生徒自らが解決に向けて「行動する」ことを目指す授業スタイルを確率する。2017年から(一社)Think the Earthに所属し、SDGsを取り入れた教育デザインや、教育旅行デザインの実践・紹介について全国規模で講演を展開中。環境省グッドライフアワード 環境大臣賞受賞(2019年)

(出典:実践者に聞く!ミライの教育の見つけ方 Vol.08 ゲスト 新渡戸文化学園中学校・高等学校副校長の山藤旅聞先生のご紹介|ミライの学校|note)


モデレーター:高畑拓弥

(一社)ミライの学校 代表理事
(一社)Disport 代表理事
(株)リブル
取締役慶應大学SFC卒。総合商社入社後、インドネシア赴任を経て独立。徳島県最南端の海陽町に移住。(一社)Disportを設立し、県立海部高校の魅力化コーディネーターとして県外生を15倍以上に。未来の水産業の形を創る(株)リブルを設立、牡蠣の種苗生産からスマート養殖の確立に従事。小中学生の越境流動性を高めるため、「デュアルスクール」「サテライトスクール」のモデルを全国へ展開する(一社)ミライの学校を設立、代表理事に就任。

(2)本編1 教師人生を考え直すきっかけとは?

山藤先生は、新渡戸文化中学校・高等学校の副校長を務めるだけでなく、様々な活動をされています。そのどれもが、学校での活動を通して生まれた事業との説明から始まりました!

教員になって10年が経過し自信も出てきた頃に、短期でJICAの仕事でブータンを訪れたそう。現地ではホームステイをしながら4つの高校で理科の授業を教え、この経験が教師人生を考え直すきっかけとなる出来事だったそう。

印象に残っている事として、ホームステイ先の長男は、土日は必ず家の仕事をしてから部活に行くことがあたり前の環境。蛇口をひねると黄色く濁った川の水が出てくるような家で、国のフェーズの違いや宗教的な違いはあるものの、この暮らしは非常に利他的でかつ嬉々として学ぶ姿勢に出会い、日本でやっていた教育は何だったのだろうと考える大きなきっかけになったそうです。

このブータンでの経験を山藤先生は「日本では出会ったことのない、嬉々として学ぶ中高生に出会いました。キラキラした目というよりは、今日は必ず何かを掴んで帰るぞ。」という目をしていたことに衝撃を受けたと語ってくださいました。


科目の大切さに関する高校3年生への意識調査で、理科が大切であると回答した生徒は10%という結果。残りの90%の生徒は入学試験や就職試験がなければ勉強しないというこの状況は、教育が原因にあると悟ったそう。

この結果がさらに、ブータンで感じた事と繋がったそうです。

また、日本財団が行った「18歳意識調査」では、他国と比較して日本人の「国や社会に対する意識」の低さが見て取れます。この結果を山藤先生は、公立高校で教師をしてきた感覚とズレがなく納得したと自身の経験から語っています。

ブータンでの経験を経て、日本の高校生の現実に直面した山藤先生は、「学校を超えて、心を動かして解決していけるような行動変容を創るための場が必要」と確信し、中高生対象にボルネオへのスタディーツアーを企画・実行。このスタディーツアーは、5年間で100名以上の生徒を現地に赴く活動を現在も行っているそうです。

山藤先生は現在、学校のトランスフォームを行っているそう。
「スタディーツアーは、より大きくダイナミックにやるために外部と連携しながら学校の枠を外れて活動をしてきましたが、現在は学校ごとトランスフォームできる仕組みを先生方や生徒とつくっています。」と語り、学校教育の仕組みを根底から変革させる活動に飛び込んでいく強い覚悟に画面越しからも熱意を感じました。

好きなこと探究からはじまるクロスカリキュラム

新渡戸文化中学校・高等学校は他高との大きな違いは、総合的探究の時間です。多くの高校は週に1時間のところ、新渡戸文化中学校・高等学校では週に1回、丸1日を6年間取っているそう!高校3年間のみならず、中学校も含めた6年間行っていることに驚きです。探究し続けた生徒はどのような大人になるのかが気になります。

高畑   Q.「探究の時間に1日も使って大丈夫なの・・・?
山藤先生 A. 「学習指導要領で総合的探究の必要な単位数は1以上です。新渡戸文化学園では、その他の必要な単位は維持したまま、探究学習の単位を最大まで増やしています。
生徒たちが自立していく、主体性を高めていく、そして多様な進路を実現させる、一人一人の多様な生き方をアシストするための学校という最上位から逆算すると、教え込んで受験対策までの時間を増やしていくのではなくて、そこは最低限に変えて、自分たちが自己選択できる時間を増やしていくことに舵を切りました。
学校目標からカリキュラムという手段に変えていったときに、最上位の目標を実現するための時間割に変えていきました。」

探究学習の中身は基本は内省に充てているそうで、何が好きで、何に興味があるのかを深堀し、そこからだれかの笑顔を創っていく時間だそうです。現在では、年間40のプロジェクトが生まれているそうです。
生徒の主体性を大切にしながら進めていく、先生方の関わり方も気になるところです。

●新渡戸文化学園が目指す学びとは?

新渡戸文化学園が掲げる最上位目標というのは、初代校長がのこした言葉で「周りの人が少しでも良くなれば、それは生まれた甲斐がある」という言葉を軸に定めているそうです。

初代校長の意志を繋ぎ、自分の好きな事や興味関心を生かして、自分以外の誰か一人を笑顔にできるような人になること。そのための練習や行動を学ぶことが新渡戸文化学園が目指す教育目標であり、教育のシンボルとして「Happiness Creator」(幸せを生み出せる人)と位置づけています。

改めて定めた最上位目標と伝統を掛け合わせてつくった、「Happiness Creator」を実現させるために行事やカリキュラムを組んでいるそうです。
初代校長から受け継がれてきた意志を現代の教育と掛け合わせ、Happiness Creatorとして自分ととことん向き合う6年間は、この先の人生に最も大切な学びとなりそうですね。

●幸福度と自己決定力

幸福度は自己決定とすべての相関だったことが研究で分かったそう。これは、幸福度は学歴、年収は関与せず、自己決定の多さが幸福度を上げることが分かった。この結果からクロスカリキュラムは自己選択の連続なので、クロスカリキュラムが生徒にもるとす効果の裏付けにもなっていると仰っていました。

新しい形の修学旅行「旅する学校」

現地で心を震わせる体験をしてほしいとの想いから誕生した旅する学校。
全国約20か所のエリアで、生徒自身が時期と場所を選び学ぶ修学旅行(探究型のスタディーツアー)を1年と2年時に計4回実施しているそう。
"現地で暮らす"ことがメインで、期間中のプログラムはほとんどないそう。プログラムの大きなポイントは今までの延長にない生き方を目指している大人がいることを大事にしていて、その大人たちと生徒に出会ってもらいたいとの想いで始めたそうです。
イベントで山藤先生の言葉で印象的だったのは「場所で選んでいるのではなく、人で選んでいます。」という一言です。どんな大人に出会い実際に体験するのかが大切であり、その土地を自分たちで選べることが何より主体性を育みますね。難しいプログラムを組むよりも、実際に暮らしの場に入りながら体験することで、身になっていくのですね。

さらにスタディツアーの4日間で、「問題発見能力」や「プロジェクトへの主体性」など、21世紀型スキルの上昇が見られたそう。

●クロスカリキュラム導入時の先生や保護者の方の反応は?

高畑 Q.「クロスカリキュラム導入に関して、その他の授業を縮小することに対しての従来の先生や保護者の方々の反応は?」
山藤先生 A.「今年、軸足を大切に振り返ろうと思っていたのが基礎学習です。クロスカリキュラムや旅する学校は花形の飛び道具のような話です。それ以外の普段の授業がありますが、その授業がかなり重要で、授業の中でも自分たちで考えたり判断したり、組み合わせる授業の中でも自分で目標設定していく過程が重要。自分で目標値を決定していく普段の授業と教科を組み合わせながら誰かの幸せのためにプロジェクトをつくっていくと総合的探究の時間が乖離しているのではなく、滲んでいく。それぞれが切り離された特別な活動じゃないというのが大事。」だというところに辿り着いたそう。

基礎学習を再度見直しをして、全てが繋がった学びとして体感することで卒業後も体感として学びは残っていくのだと山藤先生のお話を聞いて感じました。

今回のまとめと次回イベント

イベントの最後に山藤先生から、「学校という場所で実践する大人と出会い価値変容し、生徒主体で行動することで大人が巻き込まれ社会変容していく流れを教育界でつくっていきたくて活動を続けています!」と力強い言葉でこれからの抱負と、「もっと大人も子どもも遊ばないと!」とのメッセージ。
遊びは究極の主体、仲間と対等であり小中高時代にいっぱい遊ぶことが大切です。遊びと学びが融合し、その中で未来を考え夢を語る時間を増やし、本当に未来はつくれるのかもしれないと思わせてくれる大人に出会う時間と環境を僕ら大人がつくっていかなければならないと思っています。」とイベント参加者に伝えてくださいました。

生きていく上での術を遊びから学ぶということは、大人になるとつい遊ぶことを忘れてしまいますが、遊びこそ人生を豊かにしてくれる時間なのかもしれません。山藤先生のお話から、自分で自分の人生を歩んでいける要素として、多様な選択があることと、どんな大人と出会えるかが大事だと改めて感じることができました。改めて山藤先生、ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました!

【お知らせ】4/15(土)10:00~ 日本ワ―ケーション協会古地優菜さんゲストのオンラインイベント

▼イベント名
4/15(土)10:00-11:00 オンラインイベント
実践者に聞く!ミライの教育の見つけ方Vol.10 多様なワーク&ライフスタイルを実現する ワ―ケーションの新たな可能性とは?

▼内容
複業(副業)導入企業の増加に加え、コロナ禍以後リモートワーク導入企業が増加し、大人の「働く」環境は大きく変化しています。親にとって「働く」環境の変化は、「暮らす・育てる」環境の変化とも言えます。
一緒にこれからの「働く・暮らす・育てる」を考えてみませんか?

▼イベント概要
日時:2023年4月15日(土)10:00-11:00
方法:zoom(オンライン)
参加費:無料
定員:100名
申込:http://ptix.at/Ka9eyE

●過去のイベントレポートのご紹介