2022/03/21
保坂和志『未明の闘争』を読む。保坂和志の世界は一作ごとに進化/深化しており、そこに頼もしさを感じる。男たちのホモソーシャルな戯れがあり、女性たちへのエッチな思慕があり、猫や世界の神秘をめぐって思索が織り成される。綿密に描かれる公園の風景の描写が圧倒的で、世界はこんなにも豊穣な情報量を含んで成り立っているのかと唸らされる。保坂和志は本当に世界をよく観察している、と思った。個人的な読書体験から引き合いに出すならル・クレジオやサルトル『嘔吐』が思い出された。あるいは津原泰水『ペニス