【#忘れられない恋物語】周回遅れの恋
彼女と初めて出会ったのはいつだったのか…
それすら思い出せませんが、おそらく20年以上は前だと思います。
第一印象ははっきり覚えていませんが、カタイ人だな〜と思ったくらいでしょうか。
そんな第一印象なので、一目惚れなんて程遠く、「複数いる友人の中の1人」でしたね。
ちょっと話が逸れますが、僕は「最初は友達で、だんだん好きな人になる」というパターンはかなり稀です。
初めて出会ったとき、話したときの感覚で、「恋」のスイッチが入ります。
長く友達関係を続けている人に対して恋心を抱くとすれば、かなりのハプニングが発生したときではないでしょうか。
これまで生きてきた中でそんな事態になったことがないので、はっきりとは言えませんが…。
誰かが言ってましたよね?
「いきなり『恋人』という山頂を目指して失敗したのなら、残された登山ルートは『友達』という麓から登るしかない。ただし、その登山ルートには当然ライバルが多いけどね」って。
この言葉を初めて聞いたのは高校時代でしたが、「なんて的確な表現なんだ!」と感動したのを覚えてます。
すみません、話を彼女に戻します。
最初に会ってからも、本当に時々は出会っていたんです。
短ければ3ヶ月に1回くらい、長ければ半年ぶりということもあったと思います。
もちろん2人きりで出会うのではなく、「複数いる中の1人」として。
出会う場所は、すべて飲み会でしたね。
そんな関係が変わってきたのは、おそらくこの半年以内だと思います。
「関係が変わってきた」なんて、ボヤっとした言い方はよくないですね。
はっきり言うと、僕が彼女を意識することが格段に増えてきたんです。
恋心なのでしょうか?
僕は結婚して、子どもも2人いる立場です。
正直、もう恋心なんてどんな気持ちだったのか忘れていましたし、してはいけないことだと今でも強く思っています。
僕が彼女を意識することが格段に増えた理由。
それは、彼女がちょっと有名になったというか、どこでも見かけるようになったんです。
まさか、でしたよ。
今でも「なんで彼女が?」っていう気持ちはありますが、ここまで有名になると、僕のような人間の方が少数派なのでしょうね。
今さら「前から好きだったよ」なんて言えるわけないし、今の僕がそんなこと言えるわけないですしね。
今まで身近にいた人が、急に遠くに行ってしまったような…。
もう次に出会ったとき、僕の知っている彼女じゃなくなっているような気がして…。
「すごいね」って言っていいのか、「ビックリしたよ」って言っていいのか。
僕の知っている彼女なら、「私の魅力がわからなかったのね?」なんて意地悪なことは言わないと思います。
むしろ、そんな軽口を言われる方が「いや、わかってたけどさ〜」と軽く言葉を返せるのにって思います。
こんな会話をするほどの関係にならなかった。
それだけです。
もし、万が一、彼女と初めて出会った日に戻れたとしても、僕は彼女に対して恋心を抱くことなく、「恋」のスイッチが入ることなく、複数いる中の友達の1人としか捉えられないんだと思います。
距離は離れていないつもりでいましたが、それは見た目だけだったのです。
僕は彼女の近くを走っているように見えて、実は周回遅れだったのです。
そのことに気づいた今も、僕にはこれまでとおり彼女を遠くから見守ることしかできません。
有名になってチヤホヤされては消え…という業界でしょうから、今の状態があと何年くらい続くのか僕には見当も尽きません。
もしこの先、世間が彼女のことを忘れても…
まるで、彼女が存在しなかったように手のひらを返しても…
これまでとおりの距離感で接しようと思います。
決して恋心を抱くことのない、近くにいるつもりの関係で。
ピスタチオさんへ
初めて出会った日から、カタイままでも、お菓子になっても僕の好きな気持ちは変わりません。
いつまでも、さりげなく僕のビールのそばにいてください。
たとえ、このブームが去ったとしても…