見出し画像

美術館は友達の家のようなもの。

「アートって難しい」

いつからだろう、そう思っていた自分が
純粋に美術館を楽しむことができるようになったのは。

絵画を鑑賞するのが好きな母の影響で、小さい頃から色んなアーティストの展覧会に連れて行かれることが多かったけど、小さな自分にとっては 絵画って、美術って、訳のわからないものだった。


それでもイラストを描くのは好きだったし、高校の時に通っていた画塾の先生からも「美大に行くなら色んな作品を観ておきなさい」と言われていたこともあって、展覧会はよく観に行ったりしていて。

だけれど

好きな作品はどれか?
家に飾るならどれがいい?
逆に苦手な作品は?

みたいにゲーム感覚で鑑賞することが多かった。

でも、大学生になって、ふと気づいたら、純粋に作品と向き合って楽しめるようになった自分がいることに気づいた。1つ1つのアートの前に立って眺めることがただただ楽しい。

自分の中でなにが変わったんだろう?とずっと考えてみたりもしたけれど
イマイチ納得いく答えは見つからなくて、

この妙に消化し切れない気持ちを心の片隅にかかえたまま、気づくと美大を卒業する年になっていた。


そんな時に原田マハさんと高橋瑞木さんが書かれた「すべてのドアは、入り口である。」を図書館で見つけて読んで。

すごく自分のモヤモヤしていた部分が言語化されていて「これこれ...!」と一人テンションが上がってしまいました。



作品と向き合うことが、自分と向き合う時間

画像3

この本ではメインとして現代アートを取り上げているのだけれど、今とても人気なゴッホやモネなどの印象派も当時の人たちからすれば「現代アート」。

現代アートは、自分たちと同じ時代に生きているアーティストが今の社会の問題などを反映させた、批評性を持った作品のこと。

現代アートが難しいなって思うのは、多くの人が知っていることや分かりきっていることを表現するものではなくて、人々が潜在的に見たいと思っていることや問題と思っていることをアーティストの視点を通して見るものだから。

たしかに自分の知らないことや分からないことって、中々理解できなかったりする。


でも同時に現代アートはその時代時代を映している鏡で。好きな作品でも嫌いな作品でも、その作品を見た「いまの自分」に問いかけてくるものを感じることができる。そしてそこで自分がどう感じたか。それを俯瞰的に見ることで自分なりの視点、自分について深めることにつながる。

だからアート鑑賞をすることで自分と向き合うことができるし、アーティストの視点を通して物事を見ることで自分らしい視点にも気づくことができたりする。

それってとても貴重なことだし、思考がぐるぐるしている時に展覧会などに行くと視野が広がったりアイデアが生まれやすくなったりするのにもつながってるんだろうなぁって思った。

アートを通して自分を知れる。それが美術鑑賞の醍醐味の1つだと思います。


友達の家を訪れるような感覚で、美術館へ

画像1

3年ほど前に、バルセロナのミロ美術館を訪問した。

海外の美術館って、日本みたいにじっと監視されている厳しい感じがしなくてとても居心地がいいのだけれど、このミロ美術館は本当に友達のちょっと豪華な邸宅へ遊びに来ているようなワクワク感と過ごしやすさを感じた。

最初に紹介した本の中でも言われていて印象深かったのが、アートが友達。そして美術館が友達の家。

友達の家に行って、友達と語りながら中を深めていく感じで、アートとも友達のように対話してその作品を知っていく。

アートを友達だと思えば、高尚な画家の作品でも愛らしく思えてくるし、一見よくわからない作品でも「何を考えているんだろう...?」と近づきたくなる。


アートって、やっぱり単体では完成しなくて、「見せる」「見に行く」というアーティストと私たちの相互の体験があってはじめて成立するものです。

リアルで考えると、仲良くなりたい友達がいたらもっと色んな話したいなって思うし、その人の趣味や好きなものを知りたくなりませんか?

それと同じように、好きなアートがあったらそれを描く動機や何を表現したいのか、アーティストはどんな人なのかってどんどん興味が出てくるはず。

そうやって、自分の友達を増やす感覚で好きなアートが増えていくものだと思うし、友達の家に遊びにいくような感覚で美術館を訪れると、「アートって難しい」っていう感覚もなくなって、気軽に鑑賞できるようになる。


そして、友達の視点・人を知る中で、自分と違う視点を発見するのもすごく面白い。違いを認識することで改めて自己が認識できる。自分について深く知るきっかけになります。


美術館の建築を楽しむ、作品と空間の関係性を考える

画像2

普段、美術館に行くとそこに展示されている作品に意識や視線はいくけれど、その作品を展示している空間の関係性を考えてみるのも面白い。

私は大学で空間デザインを専攻していて美術館の設計などにも興味があるので、展示空間もどんな作りになっているのかとかにすごく興味があります。

先日、大学で美術館の館長もされているキュレーター(美術館などで展示の企画や構成、運営などを行う人)の方の講演会があった。

実際に美術館でアーティストの展覧会を行う時に、どのように企画したり作品の配置や構成を考えたりするのかのお話をしてくださった。

もちろん美術館では主役は作品だけれど、その作品を一番魅力的に見せるために空間演出にも色々な思考の跡があって。空間にどのような工夫がされているのか。そういう俯瞰的な視点で展覧会を楽しむのも1つの素敵な楽しみ方だな〜と思った。


今まであまりそういう視点で展覧会を見ることが少なかったので、今度行くときはそういう点からも鑑賞してみたいな。



最近は美術館とかも閉まっているところが多く、展覧会を観に行く機会も少ないですが、もう少し落ち着いたらじっくりと絵画やアートを楽しむ旅をしたいです。

今のうちに色んな気になるアーティストとかを調べておこう〜


最後にとても共感した文章があったので載せてみます。

よく思うのは、映画も小説も、鑑賞する人、読む人がいてこそ、はじめて完結、成立する、ということ。アートもまったく同じだ。アーティストの息遣いが感じられる作品そのもの、それが展示される空間、美術館やアートスポットのロケーションも含めて、私たちが「体験する」ことこそが、アートをアートにすることができる、たったひとつの条件ではないのだろうか。


ぜひ皆さんも友達の家に遊びに行くような感覚で美術館を訪れて見てください。

この記事が参加している募集

推薦図書

最近の学び

読んでいただきありがとうございます。いただいたサポートは、今後の学びのために使わせていただきます。