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【読書記録】罪の声

昭和の未解決事件というものに割と興味があり、
つい目にすると手に取りたくなる。

興味はそそられるが、未解決事件ということは
苦しみ続けている人がどこかにいるかもしれない、という
ことなのだと身にしみて思わされる。

やはり映画よりも、小説の方が登場人物たちの胸の内や
葛藤、思いなどが具体的に語られる。
視覚的にパッと目に入り頭に入りやすいのは映画だが、
登場人物たちがどのように考え、どんな思いで行動しているかを
こちらも一緒になって考えられるのは小説だと思う。

「理不尽な形で犯罪に巻き込まれたとき、これまで聞いたことも見たことも
ない犯罪に直面したとき、社会の構造的欠陥に気付いたとき、私たちはいかにして不幸を軽減するのか。それは一人ひとりが考えるしか方法はないんです。だから総括が必要で、総括するための言葉が必要なんです。」

新聞記者がなぜ昭和の、過去の事件を追うのか。
過去の事件を調べ直し、特集することは社会にとって、みんなにとってどんな意味があるのか。

阿久津という、新聞記者にこれ以上使命感もやる気も見出せずにいた男が、
昭和の未解決事件を追うことで、
その意義を見出していく。

「俺らの仕事は因数分解みたいなもんや。何ぼ振動ても、正面にある不幸や悲しみから目を逸らさんと『なぜ』という思いで割り続けなあかん。素数になるまで割り続けるのは並大抵のことやないけど、諦めたらあかん。その素数こそ事件の本質であり、人間が求める真実なんや。」

阿久津という記者の、「過去の未解決事件から、今、そして未来につなげたい」という優しさ、堀田俊也の実直さに、塩田武士さん自身の優しさが垣間見えたような気がした。
ぜひ、違う作品も読んでみたい。


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