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【読書記録】逆ソクラテス/伊坂幸太郎


息子の塾で教材として取り上げられていたため、息子の要望にて購入。

しかし、読み終わった息子の心にはそんなに響かなかったよう。
「んーまあ面白かったけど…」とのこと。
残念ながら「ゴールデンスランバー」や「重力ピエロ」の方が彼の心をガッツリと掴んだ様子。(ゴキブリを「せせらぎ」と呼ぶ表現は息子のお気に入りとなり、最近息子は自分の顔にできるニキビを「『せせらぎ』と呼んでくれ」と言う。それはまた違うんじゃあ…)
息子の心には響かなかった本作だけれど、私の心はガッツリ掴まれた。
「ああ、こんな本を子どもに読んでいてほしい」と思う内容だった。
塾側としてもそんな思いがあったんだろうか。
子どもたちの日常の中で、大人が絶対で、どうあっても大人には勝てっこないような、まだ小さな、幼い小学生たち。でも、高学年ともなれば、何かしら「おかしい」とか「あれ?」と思うようなことが大人に対して、ちらほらと出てくる。それでも、その違和感をなかなか表現できなかったり、むしろそのまま鵜呑みにしてしまうこともある。そのまま大きくなってしまうこともある。
うちの息子なんかは、どちらかというとそれを面と向かって表現するタイプで、語彙力もあるもんだから、一度扱いを間違えると扱いにくいタイプかもしれない。そんな息子のような男の子(表現力がある面では似てるが、行動力の面では似ていない)が出てきて、まさに大人たちの植え付ける先入観と戦う「逆ソクラテス」
これは、子どもに読んでほしいけれど、大人が読んでもはっとさせられる。
反面教師となって、こんな言い方や、先入観を持たないようにしよう、と思う。
いや、やはり、むしろ大人にこそ響く物語だったのかもしれない。

二学期の息子の懇談で、担任の先生に「〇〇くん(息子)が最近、□□くん(息子の友達)と仲良くしていて心配です!」と言われた。「?」と思って聞いていると、先生の目から見て問題のある子らしく、そんな子と仲良くするのはいかがなものか?ということらしい。それは、私に言うことなんだろうか?と思いつつ、息子からその子の名前も聞いていたし、どんな話題で盛り上がっているかは想像がついたので、曖昧な返事に止めておいた。
その懇談のずっと前から、息子から先生に対する違和感を聞かされていたため、話半分に聞こうと思っていた部分もある。
「逆ソクラテス」を読んだ時に「ああ、これだなあ」と思い出す。

子ども時代にどんな大人に出会うかは大変重要だと思う。
「スロウではない」や「アンスポーツマンライク」に出てくる「磯憲」のような大人になりたいものだ、と思う。
もし、出会えなかったとしてもこうして本の中で、素敵な大人に出会えたなら、「これっておかしいよね?」「こんな大人がいたらなあ」を形にしてくれたとしたら、それって豊かになることに繋がるんじゃないか?
そう、私は期待している。
息子はすでにそういう視点を持っているので(若干あまのじゃく)、
目新しくはなかったのかもしれない。
自分が思っていることをうまく表現できなくてなんだかモヤモヤしてる子には
目の前がパッと開いてくれたらいいなあと思う。

ところで、伊坂さんといえば、
物語のラストで「あー!!!そう言うことだったのか!」があったり、短編とはいえ「あの作品の登場人物とこの作品のこれとは繋がっている」というのがある、というイメージが私の中であり、
実際、いくつかの作品同士は共通した登場人物が出てきたりしたので、
ついラストまで、最初の作品から繋がっているに違いないという期待値で読み進めていたのだが、そうとは言えない、わからない部分が多々あり、読み終えた後でネット検索もしてみたのだがスッキリしなかった。
予想に過ぎず、それが答えではないので。
ただ、伊坂さんのインタビューを読んでいても「短編」と言い切っているので、
やはり私が裏をかきすぎただけだろうか、と思っている始末である。
真相やいかに…
この私の説を話すと意外と息子と盛り上がったのだけれど。


この予想を話し合うのもひとつの楽しみではあるので、それが狙いならばまんまとハマったと言わざるを得ない。

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