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稲穂見て 子ども心を 思い出し 恋のことをも 喜志の思い出

「ファアア、こんなに朝早くから何いったい」川西は眠そうな目をこすり朝の町を歩いている。昨日20歳になったのを記念して行われた同窓会で再開した同級生の男子・滝谷から朝の散歩に誘われた。久しぶりに地元・大阪府富田林の北側にある喜志の町を歩いている。誘った滝谷も眠そうでうつろな目。「もう少しだから、我慢して」と、小声でつぶやく。
こうしてもうしばらく歩くと田んぼが広がるところに出た。
「ほら、やっぱり、ネットで見た通りだ」

そこには多くの人が田んぼにいたが、その時の記憶が一気に思い出された。もう10年前から行われている奇跡の復興米の稲刈りで、9年くらい前に当時小学生だったふたりも参加したことがあったからだ。

「うわぁ、懐かしいね」「今でも思い出すなあ」ふたりはその様子を遠くからしばらく眺めた。
「そうだ」ここで滝谷は急に真顔になって川西を見つめる。
「僕、高校で俳句部にいたから俳句が読めるんだ」そう言うと大きく深呼吸、突然次のような一句を詠む。

朝散歩 懐かし稲穂 恋の風
(あささんぽ なつかしいなほ こいのかぜ)

「え?」川西は少し顔を赤らめた。「まさかの告白?」と思ったからだ。だが同時に川西は小学生の頃が鮮明に頭の中に思い出された。そこで川西はやはり自分の高校時代に属していた和歌部の経験をもとに次の短歌で滝谷に返した。

稲穂見て 子ども心を 思い出し 恋のことをも 喜志の思い出
(いなほみて こどもこころを おもいだし こいのことをも きしのおもいで)

川西は子供の頃に滝谷のことが気になっていた。その時はおそらく片思いだったのだろう。気が付けば思い出だったことすら忘れていた。だが一気にそのときのことが思わず甦った。

結果的にふたりは無意識にそれぞれの思いを伝えると、直後に手をつないだ。

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今日は、桃うさ:ぴょんぴょん幸年吉日な作家(木花薫)さんの恋祭り短歌と俳句大会という企画に参加しました。

こちらの本日の記事をモチーフに創作しています。

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