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チリ | ミュージック・ジャーニーvol.49

皆さん、民音ミュージック・ジャーニーへようこそ。
今回は、本年(2022年)、日本・チリ外交関係樹立125周年を迎えるチリ共和国へ、駐日チリ共和国大使館の皆様とともにご案内いたします。

絶景の大草原と氷河が広がるトーレス・デル・パイネ国立公園

南米大陸の太平洋側に面したチリは、南北に細長く延びたスリムな形状の国です。1つの国のなかで、さまざまな緯度を縦断することから、非常に多種多様な気候風土を持っています。

~チリ 旅のしおり~
・北から南へ4,330kmの縦断ツアー(南部地域は寒いので防寒着を忘れずに)
・「世界三大美しい砂漠」で天体観測をしよう
・首都サンティアゴで文化と歴史に触れよう
・カラフルな水上ハウスが可愛い「チロエ島」に寄ってみよう
・パタゴニアで氷河のトレッキングを楽しもう

チリは1つの国とは思えないほど見どころの多い国です。美しい風景や荘厳な景観をたずさえる地形から、「陸の孤島」と称されることもあります。

今回は北から南へ音楽とともに旅をしていきましょう。

北部:地球上で一番乾いた土地「アタカマ砂漠」

チリ北部はボリビアやペルーと接しており、アタカマ砂漠をはじめとする広大な砂漠地帯となっています。アタカマ砂漠は年間降水量が1mmにも満たないエリアがあるなど、地球上でもっとも乾いた土地の1つです。

また、空気が澄んでいるのに加えて、一年のほとんどが晴天に恵まれるため、天体観測にピッタリの場所でもあります。美しい星空を目当てに訪れる観光客も多く、日本を含む多くの国がこの地に天文台を設置しています。

果てしなく続く砂と岩の世界、色とりどりの花々で覆われた草原、透き通った塩湖など、幻想的な景色を楽しめることから「世界の三大美しい砂漠」としても有名です。

北部の音楽はボリビアとの共通項が多く、アンデス山脈にも接していることから、アンデス地方の楽器であるケーナやサンポーニャなどが使用されることもあります。
ここでは、民音が1990年に招聘した「チリ国立民族舞踊団」の公演から、チリ北部の特徴を表した楽曲を2曲続けてお聴きください。

1.「プニタキ」

2.「ロシータ・デ・ピカ」

中央部:歴史と文化の中心地「首都サンティアゴ」

中央部は温暖な地中海性気候で、国内でもっとも過ごしやすい地域です。平地はアンデスから注がれる水脈によって豊かな土壌が形成され、穀物やトマト、ブドウの名産地となっています。
首都サンティアゴは、人口の約40%が暮らす近代的な大都市であり、博物館や教育機関が点在する文化の中心地でもあります。

一方、旧市街には市民の憩いの場である「アルマス広場」を中心として、「メトロポリタン大聖堂」や大統領府の「モネダ宮殿」といった歴史的な建造物や観光名所が点在しています。それでいて、同じエリア内には庶民的なレストランや日用品のショップが数多く軒を連ねており、市民の日常生活とも密接な地域です。

モネダ宮殿


さて、多種多様な風土を持つチリでは、音楽の特徴を一括りにするのは難しい面がありますが、代表的なものを紹介するなら、チリ中部で発展した「クエッカ」が挙げられます。

クエッカとは、ギターやアコーディオンなどの楽器演奏や歌に合わせて、伝統衣装を着た男女が1対1で向かい合って踊る伝統舞踊のことです。鳥の求愛の動きをまねたダンスとも言われており、愛の言葉の代わりにハンカチを回しながら、円を描くように踏む陽気なステップが特徴的です。

独立記念日のお祭りや結婚式などの重要なタイミングで踊られる国民的な舞踊ではありますが、多様な風土を持つチリらしく、地域ごとにスタイルは異なります。

南部:ユネスコ世界遺産チロエ島の教会群

南部は雨が多い西岸海洋性気候であり、南に行くほど降水量が増えます。年間降水量が5,000mmに達する多雨地帯もあり、乾燥した北部や中央部とはまるで違った気候・風土を持っています。

南部の特徴を一言で表すなら、「美しい森と湖沼のエリア」であり、古都バルディビアからプエルト・モンまでは、常緑広葉樹や針葉樹が広がる森林地帯と大小さまざまな湖沼が広がる神秘的な景色が続きます。

富士山とよく似ている「オソルノ山」

また、プエルト・モンのさらに南には、複数の島々から形成される「チロエ島」があります。島に点在する16の木造教会は、2000年にユネスコ世界遺産に登録された観光名所の1つです。

チロエ島のもう1つの見どころが、カラフルな高床式の水上ハウスです。鮮やかな壁の色合いが水面に反射する独特の景観は、観光客にも人気のスポットとして知られています。

ここで、「チリ国立民族舞踊団」の公演から、チロエ島の人々の多様な生き方をモチーフに演出した作品をお楽しみください。

「チロエ」

氷河が広がる「パタゴニア」と絶海の孤島「イースター島」

南部よりもさらに南へ下ると、白雪に覆われた山岳地帯や氷河が広がった「パタゴニア地方」と呼ばれるエリアに入ります。チリとアルゼンチン南部にまたがるパタゴニアは南緯50度もの高緯度にあり、このエリアにある街「プンタアレナス」は南極まで飛行機で2時間程度の近距離に位置することから、南極への玄関口とも呼ばれています。

合計で30ヶ所もの国立公園があり、なかでもチリ側の「トーレス・デル・パイネ国立公園」は、どこまでも続く大平原と氷河の絶景が楽しめる人気のトレッキングコースが存在します。

一方、チリの本土から西へ約3,700kmの位置に浮かぶ「イースター島」は、温暖湿潤な海洋性亜熱帯気候であり、パタゴニアとは真逆のトロピカルな様相を見せる孤島です。現地の言葉では「ラパ・ヌイ」とも呼ばれ、1995年には島の一部が「ラパ・ヌイ国立公園」としてユネスコ世界遺産に登録されました。

イースター島の文化は、14世紀頃に移住したとされるポリネシア人が起源となっており、音楽や舞踊はポリネシアの伝統を受け継いでいるのが特徴です。ここでは、再び「チリ国立民族舞踊団」の公演から、「ラパ-ヌイ」をお聴きください。

「ラパ-ヌイ(大きな島)」

旅のおみやげ 宝石「ラピスラズリ」/ 民芸品「クリン」/ スパイス「メルケン」

チリは青く輝く希少な宝石「ラピスラズリ」の三大産地の一つです。深く美しい青色から、和名では「瑠璃」とも呼ばれており、ラピスラズリで作られたアクセサリーや小物は世界各地で人気です。
また、チリの民芸品市場では、馬の尻尾の毛で作られた世界唯一の手工芸品「クリン」が手に入ります。一風変わった品を持ち帰りたいという方には、チリの伝統的なスパイス「メルケン」がおすすめです。スモークした唐辛子の香りが魅力で、何にでも合う万能調味料として知られています。

1960年代から発展した新しいチリの音楽

1960年代、チリでは、「ヌエバ・カンシオン・チレナ」(スペイン語で「新しいチリの歌」)と呼ばれる音楽を通じた社会変革運動が起こりました。チリの民族音楽の復興を基調とした運動で、次第に大陸音楽の要素とラテンアメリカの楽器・リズムが加わり、独自性を持った楽曲が次々に生み出されていったのです。

新しい特徴を持つ曲調に、社会正義や意識変革といった力強い思想を秘めた詞が乗せられた楽曲たちは、60年代から70年代にかけて起こったチリの社会変革に大きな影響をもたらしました。
そして、音楽を通して確かな社会正義と幸福を求めていくという信念は、現代の音楽家たちにも変わらずに受け継がれています。

2000年代半ばには、ラテンアメリカの音楽にインスピレーションを受けた音楽運動が生まれました。こうしたうねりの中で輩出されたマヌエル・ガルシアやへぺ、ハビエラ・メナ、カミラ・モレノ、チノイ、ナノ・スターン、ペドロピエドラなどの多くのアーティストが、現在のチリの音楽シーンを彩っています。

その中から今回は、駐日チリ共和国大使館より推薦いただいた、2組の音楽家の演奏をご紹介します。

はじめに、チリを代表するシンガーソングライター、カミラ・モレノの楽曲を3曲お聴きください。彼女は、2009年にラテン・グラミー賞にノミネートされ、2016年にリリースされたアルバム『Mala Madre』では、チリの最高音楽作品に贈られるパルサーアワードで3冠を受賞しました。

1.Rey

2.Hice a mi amor llorar

3.Déjame (feat. Ximena Sariñana & Lido Pimienta)

つづいて、シンガーソングライター、ギタリストとして活躍するマヌエル・ガルシアをご紹介します。
彼は、2008年にチリ音楽賞を受賞し、2020年にはアルゼンチンのペドロ・アスナルとのデュオ『Abrazo de Hermanos』で、チリ人で唯一となるガルデル賞ベストコンセプトアルバムを受賞しました。チリ国内のみならず、メキシコや米国、中国など世界各国でツアーを行っています。

1.La danza de las libélulas

2.Hablar de ti

3.Carcelero

皆さん、チリへの音楽の旅はいかがでしたでしょうか。
音楽の旅はまだまだ続きます。次回もどうぞお楽しみに。

協力、写真提供:駐日チリ共和国大使館

Min-On Concert Association
-Music Binds Our Hearts-

ご案内

この記事は英文での提供もしています。
https://www.min-on.org/11756/min-on-music-journey-no-49-chile/

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