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雑文のおもちゃ箱

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片付かないおもちゃ箱、木々や廃材を集めて造った秘密基地、 ごっこ遊びの数々、半世紀の時間が経ち、それらの遊びは出来なくなったけれど言葉の遊びは、まだ始まったばかり。
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2018年1月の記事一覧

私のピタゴラスイッチ

私のピタゴラスイッチ

薄れゆく覚醒の数分後、いつからなのか始まりが定かでない眠りが訪れる。この時、飼い犬のうみは、私の身体のどこかに背中をピタリと寄せて横になっている。最近は夢も殆ど見ない、いや、覚えていない。朝が訪れるまでの数時間、規則正しくレム睡眠とノンレム睡眠を繰り返す。夜中の4時頃に長男が早出の仕事に出て行く。出勤前の着替えやらで、私が寝ている部屋を何度か出入りする。殆ど、目が覚めることはないけど、もしかしたら

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ハンドヒーリング

ハンドヒーリング

ある日の仕事帰り、行きつけの喫茶店でコーヒーを飲んでいると、ママさんが、隣の席に座っていたお姉さんにこの人にやってみればと、意味不明の声かけをした。するとお姉さん、年の頃は44、5歳だろうか。「お疲れではありませんか」と声を掛けて来た。「いや、疲れてないっす」「じゃ、どこか痛いところとかないですか」「痛いところですか。あーあります、あります。この肘、どうしょうもなく痛いです」「従業員のNさんもお手

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初めての金

初めての金

苦節 38 年、この制度が始まって 20 数年、ついについに免許証の色がゴールドになった。あれは忘れもしない 19 歳の夏、原付きバイクを友達に貸したら、そいつ免許持ってなくて、おまけに白バイに追われて逃げやがって、気がついたら無免許運転幇助罪で母親と一緒に家庭裁判所に行ったのを皮切りに、一旦停止違反、一方通行逆走、通行区分違反、スピード違反、歩行者妨害、駐車違反にシートベルトに携帯等々、いやーよ

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続、たんぽぽの唄

続、たんぽぽの唄

翌々日のこと
日曜日になって降り始めた雨が上がる。
小鳥たちがさえずり、春の風がなびく。

えー誰っ、お前。
誰って、まあ隣人です。
確かに隣には居るけど、まさかね。
昨日は居なかったよな。
はい、新入りです。よろしくお願いします。
いやいや、こちらこそだけど。
変わり者は俺だけじゃなかったってことか。
ここがどんなとこだか分かってるよね。
はー、状況的にはかなりリスキーなとこみたいですね。
先輩

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たんぽぽの唄

たんぽぽの唄

2月頃かな、あの日は寒かったよ。
何軒かの庭先と何本かの道路をフワフワと這うように漂って、
やっと落ち着いた着地点がここだったわけ。
そうそう、風まかせなのよ。
昭和の頃は、子供らによく千切られて、ふーっと息をかけては飛ばされて
きゃあきゃあと言う笑い声と一緒に飛んで行ったり、
ボロボロに汚れた服にくっついて、あちこちに散らばって、子供たちの住む家の近くに落ちて、生活の場を広げてもいたけれど、

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大人気ない話

大人気ない話

世の中、思い通りに行くことよりも、思うようにならないことの方が遥かに多いことは経験的に分ってはいても、縺れた糸が解けないままでいるのもきつい。何があったのって、大したことじゃないけど、私的なことだけお話すると、こうです。実は、かみさんの患者会を10年に亘り切り盛りして来た事務局長が辞めて、後任を私が引き受けることになったわけだけど、とてもしっかりした事務局長さんで、諸々の引き継ぎにあたって、任せる

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大人な飲み会メモ

大人な飲み会メモ

 それぞれに違う時間を漂流した男子2人女子2人、申し合わせたように、いやしっかりと予約していた時間と空間で差向かう。妖艶な熟女たちと、とっぽい若者と小っちゃいオヤジ、決して合コンではない、変な取り合わせだ。いや、多様性の理解と受容がなければ違和感を拭いきれない、不協和音のカルテットといったところだろうか。

 さて、これからどんな狂想曲が始まるのだろう。簡単に分かり難く紹介してみよう。酔ってるこ

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30年の時を駆けたら醒めない余韻で迷走したよ

30年の時を駆けたら醒めない余韻で迷走したよ

国鉄在職中の学び舎の同窓会が30年振りにあった。当時、郵政、電々、国鉄を三公社と呼んでいて、それぞれが3年生の幹部候補生養成の大学を持っていた。私が籍を置いていた中央鉄道学園は国分寺市にあったが、民営化と同時に、その姿は消えてしまった。そんな民営化の瀬戸際に、私たちが国鉄時代の最後の卒業生として籍を置いていた。全国各地から約半数の30数名が東京は銀座に集まった。懐かしさが時間と共に湧き上がって来る

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税務署にいいね!

税務署にいいね!

 この前、NPOの決算報告と法人税の申告のお手伝いをした時のこと。確定申告の書類を持って分からないところの指導と申告をお願いしますということで、大分税務署に行ったのですが、総合案内の窓口に並んで待っていると、対応してくれる係が4名、順番に取り次いでいるわけです。年配のおっさん二人と、やはり年配のおばさん一人、そして、ちょっとイイ感じのやっぱりおばさんがもう一人、誰に当たるか微妙なところ、あのおっさ

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教会の葬儀

教会の葬儀

土曜日は、かみさんが会長を務める難病の患者・家族会の仲間の前夜式に参列して来ました。仏教でいう通夜とのこと、教会での結婚式は経験があったけど、葬儀は初めてだったので、作法が分からない。ちょっと、ネットで下調べをして、30分前に教会に到着、記帳を済まして、会場を見渡す。故人の奥さんを探して、近寄り言葉をかける。後ろの方の端っこに空いていた木製の椅子に座る。会場はまだ一様に戸惑いのざわつきに包まれてい

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初恋

初恋

昭和40年頃の話、大分駅の裏側には木造の階段があって、階段を降りて見渡すと、左手には鉄道グランドとその向こうに鉄道病院、右側には国鉄物資部という今で言うスーパーマーケットがこれも木造平屋建て、後は国鉄の社宅と他は墓地公園まで一面が田んぼと畑、道路はまだ全て未舗装という風景が広がっていた。色調は蒸気機関車の煙の白から黒、木造家屋の茶から走路の薄茶、墓地公園の深緑から田畑の薄緑と、記憶を手繰り寄せる程

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