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私のピタゴラスイッチ

薄れゆく覚醒の数分後、いつからなのか始まりが定かでない眠りが訪れる。この時、飼い犬のうみは、私の身体のどこかに背中をピタリと寄せて横になっている。最近は夢も殆ど見ない、いや、覚えていない。朝が訪れるまでの数時間、規則正しくレム睡眠とノンレム睡眠を繰り返す。夜中の4時頃に長男が早出の仕事に出て行く。出勤前の着替えやらで、私が寝ている部屋を何度か出入りする。殆ど、目が覚めることはないけど、もしかしたら、覚えていないだけで一瞬、覚醒してしまうのかも知れない。ただ犬のうみは、長男と入れ替わるように2階の長男の部屋に上がって行くらしい。次に、携帯にセットした目覚ましがなるか、ならないかの時間に不思議と目が覚める。更に不思議なのは、2階で寝ていた犬のうみが起きて階段を勢いよく降りてくること。私は二度寝を決め込んで、気配を消す。眠りと共に、止まっていたピタゴラスイッチのボールは、次の仕掛けをじっと待つ。飼い犬のうみも何故か私の枕元に気配を消して座っている。しばらくすると、右前脚が私の顔をそっと撫でる。薄目を開けると、じっと私をこれ以上ない近さで覗き込んでいる。次にまた右前脚が先ほどよりも勢いを増して、撫でるというよりも叩くような感じで向かって来る。寝返りでなんとかかわすと、次は耳の裏をベロベロを容赦なく舐めて来る。もう限界、ヘッドロックのようにして、抱え込みながら抑え込むと、3分くらいはじっとしていてくれるものの、今度は、奴の方が我慢の限界、顔を噛みつきに来る。ここに来て、ノロノロと転がっていたピタゴラスイッチは速度を一気にあげて、トイレから洗面、着替えから朝食、夕べ洗濯機にかけた洗濯物干し、次男起こしと加速して行く。転がりが少しなだらかになるのは、通勤のちゃりか車の中あたり、こうして私の一日のピタゴラスイッチは、予め決められた仕組みを、次の眠りの始まりの時間まで転がり続ける。きっと、私の一生も同じように、誰かに決められた、もっと大きな仕組みの転がりの中で、最期に向けて転がって行っているに違いない。皆さんは、こんなこと思いませんか。えっ、私だけかい。
20141125

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