小説「あなたがここにいてほしい」
これ、乗ってみてもいいすか?
それがはじめて、あなたがわたしにかけてきた言葉でした。
わたしはその時、車いすから背もたれを倒した椅子に移り、うとうととまどろんでいました。職場の昼休み、軽い昼食をすませると、そうしてからだを休めるのが常でした。別に車いすのまま机に突っ伏してもいいのですが、一日のどこかで、五歳の頃から二十年以上乗り続けているタイヤと肘掛け付きの乗り物から解放されたい時間が欲しかったのです。
瞼を開けると、あなたは空の車いすのそばに膝をつき、興味深げに眺め