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開催レポート「花に逢う会」

11月4日(土)に花のワークショップを開催しました。

遠いところまでお越しいただき、ご参加くださった皆さまには改めて御礼申し上げます。

日々の花生けでお稽古の先生や私自身が大切にしている、以下のことをお伝えできる会にしたいと思い、準備を進めてきました。

・この季節ならではの草花や枝葉に触れる。
・自然の草花や枝葉の生命力(青々しさ、みずみずしさ)と移ろい(色の変化、状態の変化)を感じる。

この季節の草花や枝葉は春から夏にかけてぐんぐん成長し、花を咲かせ、実をつけた伸びやかなものばかり。その伸びやかさは晩秋から初冬にかけたこの季節だけのもので、それを存分に味わっていただきたいと思いました。

また用意した花材は一般の花屋さんでは決して手に入らない植物たちばかり。保存剤を使用していないため、おそらく翌日には色が黄、オレンジ、赤、茶色(褐色)と変化しはじめる。ご帰宅後は、そのような色の変化とともに、枯れてしおれて土に返っていく様子や風情を味わってほしい。

そんな思いを込めました。

ご参加者の皆様は、普段から私のnoteを読んでくださり、SNSなどを通じてエネルギー旺盛な植物たちをご覧になってくださっている方ばかりでしたので、一つひとつの植物に細やかな関心を寄せてくださいました。

実際に生けてみると、うねったり、くねったり、明後日の方を向いている植物たちは思った以上に手強かったようですが、格闘しながらも伸びやかさ、しなやかさ、頑なさなど、生命力そのものを感じて、生け上げてくださいました。

そのような植物との触れ合いを通じて、ご参加者のおひとりが、以下のご感想を寄せてくださいました。

「一夜明けまじまじと眺めると、実に見事。彼らの背景には太陽があり、風があり、雨があり、土がある。ごはんを食べるときに手をあわせたくなる、そんな感覚ですね。これからしばらく、玄関先で季節のうつろいを楽しみたいと思います」

まさにお稽古の先生や花材の生産者の方が大切にしている、植物を育んだ大地や自然の対する厳かな思いが届いたと感じた瞬間でもありました。

きっと私はただその思いを届けるために、このワークショップを開催したのだと思いました。

SNSなどで花生けやフラワーアレンジメントの投稿をたくさん目にする機会があります。私がそうであったように、おそらく多くの方は草花や植物が好きで、その素晴らしさを伝えたいという気持ちではじめたのだと思います。

しかしながら中には、花生けやアレンジメントの技術をショー化しているものや、生け手の意図どおりに形づくるために、見事な花や葉、枝を手荒く切り落としているものを見かけます。そこには植物や自然、生産者をはじめとする植物の担い手に対する敬意は感じられず、悲しい気持ちになるばかりです。

また近年は地球温暖化の影響で、植物の生育が年々、困難になってきていると言われています。植物との出会いが一期一会であることは今にはじまったことではありませんが、必ずしも前年と同じ種類の、同じ品質の植物に出会えるわけではないことを、毎年痛感しています。

自然の有り難い命をいただいている。私自身がそのことを忘れないための道標として、今回お寄せくださった感想を心の中にとどめておきたいと思いました。

そして、そのような中で生産者の方々が丹精込めて育てた植物たちが、多くの方々の手を経て、この日に届けられたことに感謝申し上げます。

開催にあたって、ご指導、花材の相談にのってくださったお稽古の先生、花器を制作してくださった陶芸家の方、会場をお貸しくださったコミュニティスペースの方々にも御礼申し上げます。


【当日の花材】
瑠璃瓢箪(るりびょうたん)、椿(嵯峨、初嵐)、山菊、風船葛(ふうせんかずら)、友禅菊、紫式部、錦木(にしきぎ)、グレープフルーツミント


【参加者皆さまの作品】

友禅菊や風船葛の繊細な可憐さを引き立たせて


紫の山菊、紫式部と白の椿をモダンに配して


一枝一茎を繊細に挿しながらダイナミックに仕上げて


主宰者による手解きのデモンストレーションにて


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