五百羅漢7

いきなり裏拳の方が、まだマシ。



高1だったと思う。


廊下を歩いていたら、後ろから来たヤツが、
追い抜きざまにいきなり裏拳を繰り出してきた。

裏拳、手の甲で殴る事。
格闘家の須藤元気がよくやってた、あれ。

不意打ちだったから、モロに喰らった。鼻に。
当然鼻血が出たし、滅茶苦茶痛い。
昔、シンナー少年に頭突きを喰らった時よりも痛かったと思う。

そいつは、「あ、ごめ~ん!」と言って去っていった。

要するに、イジメである。


中学の一時期、よく遊んでいたグループのメンバーだ。
だが高校に入り、疎遠になっていた。

そいつは所謂、”高校デビュー” をしていた。
そいつに何か恨みを買った記憶は、無い。
殴られる理由など、どう考えても無い。

要するに、疎遠になった事で、
高校デビューしたそいつにとって旧知の俺は、イジメの対象となった。
俺の鬱が酷くなり、ボッチ化が始まっていた事も、あるかも知れない。
とにかくそういう、訳の分からない、
筋の通らないイジメは、どこへ行ってもある。


で、その裏拳が何よりマシか? って話だが、


”陰険、陰湿に裏でコソコソ動き回り、
貶めよう、ハメようとするタイプのイジメ” 


よりマシ、って事。



社会人になると特に、暴力沙汰のイジメは無くなる。
当たり前だ。警察沙汰になる。

いや、有る所には有ると聞くが、少なくとも俺は経験が無い。

その代わり、イジメが水面下に潜る。

社会に出て約20年、そういうものは何度も経験したが、
印象的だったものを1つだけ。


*


ある有名カフェ・チェーンに社員登用されたばかりの頃。
配属された店舗で、マネージャーのような立場。
毎日の売り上げを管理するのは、俺の役目だった。

ある日、売り上げが合わない。
数百●十●円。微々たる額。

自分のあらゆるミス、計算違いを考えたが… 額が不自然だった。
間違える、合わないにしても… この額になるのは不自然だ、という額。

直感的に、とあるバイトの学生2名の顔が浮かんだ。

その2名に、何故か嫌われているのは分かっていた。
理由を考えても… ただ「虫が好かない」とか、そういう事だったろう。
そういう事はどこに行ってもある。

2名の内、年長のリーダー格に、カマをかけてみた。
…当たりだ。
現場を見ていない以上、断言は出来ないが、
彼は不意を突く質問に対して、咄嗟に嘘をついたように見えた。


一時期、タイに住んでいた頃、
生き馬の目を抜くような世界での交渉事が、日常茶飯事だった。
その中で生き抜くのに、嘘を見抜く能力は必須だった。

だからある時、鏡の前で数時間、

”自分が嘘をつく時に、顔面や体にどういう変化が表れるか?”
”その嘘を隠そうと努めた場合、どういう変化が加わるか?”
”逆に、事実を語る場合は、どういう動きが表れるか?”…

徹底的に研究し、一定の法則がある事を確信していたので…

今でも、カフェのバイトの彼が、
「小銭が消えた事」の真実を知っていたと思っている。

勿論、全ては闇の中。 俺がミスった可能性も、当然有る。
全部含めて、俺は責任を取った。


…で、そういう事より、遥かにマシだと思った。裏拳の方が。

正面切ってるじゃん。


万が一にも、俺がキレてやり返してくるという

リスクを負ってるじゃん。


そのリスクを回避して、
ましてや複数人で、とか、集団で、とか、(←大抵、1人じゃない 笑)
そんなのより、全然スッキリしてるわ。

そう… 今だから思う。


…許せてはないけどね、裏拳。

…しかも今、思い出した。
そいつ、連れと2人だったわ 笑




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