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連載小説 砂上の楼閣14

『発端9』

目を覚ますと私は体を抱えられていた。お姫様抱っこの形だ。

湿った布を嗅がされたまでは覚えている。しかしその後の記憶はない。

狭い階段を降りているのか?そして自分を抱えるこの男は誰なのか?

あれ?誰だろう?何処かで見た顔だ。危害を加える気は無さそうだ。

長期に渡る緊張と疲労。言い知れぬ安堵感。清香は再び意識を失った。

次に気付いた時、私は自宅のベッドの上にいた。玄関前で倒れている所を家人によって発見されたらしい。

清香は父親に事の顛末を話した。しかし父は警察に連絡する事を躊躇った。会社が急速に拡大している時期なのと、経団連の理事へ推薦の話も出ていた。

清香を拉致した奴らが言っていた事は本当だった。“お前の親父が金を渋っている”

結局話はうやむや。この頃から清香は松永家に疑問を持ち始めた。

奴らは何者だろう?そして私を助けたであろうあの男。

この日から清香の曖昧で実体を感じられない人生が長く続くことになる。

◆ ◆ ◆

「チクショウ!」

『暗闇』の溜まり場で河村が叫んだ。

「諸井の野郎!山上!お前何とか出来なかったのか!」

『河村さん。どのみちヤツに気付かれた時点で、この計画は終わりだった。』

それでも河村は納得いかない。

「お前が本当に俺たちの仲間なら、諸井を殺ってこい!出来なきゃ今度こそあのお嬢様は終わりだ。」

山上充は黙って河村を見詰める。そしてゆっくり吐き出す様に言った。

『俺に任せてくれ。』




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