見出し画像

【本】『日本文化の核心』「ジャパン・スタイル」を読み解くとますます日本が愛しくなる

日本文化のことなら、松岡正剛さん!という友達のおすすめで、最新著書から読んでみました。


「稲・鉄・漢字」の黒船論、なぜ柱が大切なのか、日本神話、ジャパン・フィルターによる文化の編集力、迎える神、日本人にとってのお米の意味、宗教、「和」の起源、型・間・拍子、七五調、ミニマリズム文化、学び、家、庭・お金・支払いの意味、わびさび、粋、ジャパン・コンセプト、おもかげとうつろい、など盛り沢山。

日本文化を新鮮な切り口・視点から学んでみたい人に、一押しです!

縄文時代から現代文化まで、ありとあらゆる日本文化に触れられていて、日本の歴史も一緒に学ぶことができます。語源とか由来とか、なるほどー!と思うことも多数。

そのなかで印象に残った3つの言葉を中心に、ご紹介します。

1.かぐや姫が歴史的なポケモン第一号

なぜポケモン(小さなカプセルに入ったキャラクター)がヒットしたか?という文脈で、かぐや姫などの例がでてくるのですが、まさかポケモンとかぐや姫に共通項があるとは!と考え方の柔軟さにびっくりしました。

そして、カプセル・チャイルドという抽象化の言葉のセンスがすごいです。

かぐや姫は『源氏物語』よりもずっと古い平安時代初期の『竹取物語』に語られている話です。かぐや姫だけではありません。桃太郎や一寸法師だってポケモンです。
桃太郎は川をどんぶらこ、どんぶらこと流れてきた桃を割ったらそこから生まれてきたわけですから、かぐや姫同様のカプセル・チャイルドです。やがて立派に成長してイヌ・サル・キジを連れて鬼ヶ島に鬼退治に行って、金銀財宝を持ち帰った。一寸法師のほうは、子供が欲しいおじいさんとおばあさんが住吉神社に一心にお参りしていたら突然に授かるのですが、身体は一寸しかありません。一寸は約3 cm ですからかなりちっぽけです・・・ (第八講)

これは、昔から日本人が「小さなもの/ところ」を大事にする価値観や、美しいと思う美学と密接に関係している、とのこと。

和歌や短歌、短い俳句や小さな庭、小さな茶室なども全部つながっていて、清少納言も『枕草子』で「小さきものはみなうつくし」と綴ったほどです。

確かに日本人は、海外からみるとすごく細かいところまで凝っていたり、細工したりする職人技が得意な気もしますが、竹取物語時代から脈々と受け継がれてきている、日本ならではの感性なのですね(笑)


2.アマテラスとスサノオの「和」と「荒」

日本文化は、静かなものと荒々しいものが併存しており、それが日本の精神やルーツと深い関係があるというお話(第五講)

画像1

この併存の話は、日本文化だけでなく、日本神話に出てくる姉のアマテラスと、弟のスサノオの関係、国を作る過程での出来事とも結びつきます。

柔らかく優しいアマテラスのほうが「和」、強くて荒々しく出雲に追放されたスサノオのほうが「荒」なのですが、「荒(すさ)び」は「遊(すさ)び」ともつながり、ついにはとことん「好き」を極める「数寄」を生み出したそう。

なんともバランスが取れているものです。

3.景気も経営もアート

経済が、もともとの語源とは違った意味で使われている、という話から、景気と経営の話も出てきました。まさか「経営」が水墨画からだったとは・・

例えば「景気」と「経営」という言葉です。これらはいまは誰もが「景気はどう?」「景気循環」「好景気」「うちの経営」「経営指標」「経営悪化」などと何のためらいもなく使っている言葉ですが、景気はもともと和歌に余情を盛ることが「景気をつける」ということでしたし、経営は水墨山水画の六法の一つに「経営位置」(コンポジション)があって、そこから自立した言葉です。

水墨画の六法は謝赫の『古画品録』が最初に言い出した技法論なのですが、たいへん興味深い。水墨山水は、「一.気韻生動、二.骨法用筆、三.応物象形、四.随類賦彩、五.経営位置、六.伝移模写」で成り立っているというのです。景色を描くにはこの六つの心得が必要になるということです。その一つに「経営位置」があったわけです。

つまり景気も経営もアートだったのです。アートの語源はラテン語のアルス(技芸・方法)で、かつては絵画の書き方だけでなく、建築も医療も交易もアートですから、これは当然と言えば当然のことです(第十五講)


まとめ

第一講から第十六講まで、下記の順番で触れられていきますが、どの章から読み始めても、楽しく読めると思います。

柱を立てる、和漢の境をまたぐ、イノリとミノリ、神と仏の習合、和する/荒ぶる、漂泊と辺境、型・間・拍子、小さきもの、まねび/まなび、或るおおもと、かぶいて候、市と庭、ナリフリかまう、ニュースとお笑い、経世済民、面影を編集する

最後は、日本はいままでさまざまなジャパン・フィルターを通すことで、大いに発展してきたわけだから、これからもその独自性を大事にして、頑張っていこうよ!というメッセージでした。

たまに見返して、新たな気づきと、そこからさらなる文化の深堀をしていきたいと思います。


※松岡さんの過去著書と、紹介・おすすめされていた本を下記でご紹介します。たくさんありすぎて、次何にしようか、悩みます(笑)

【再掲&松岡さん過去代表著書】









【紹介&おすすめ本(ほんの一部)】

愚管抄』(ぐかんしょう)は、鎌倉時代初期の史論書。作者は天台宗僧侶の慈円。全7巻。承久の乱の直前、朝廷と幕府の緊張が高まった時期の承久2年(1220年)頃成立したが、乱後に修訂が加えられている。北畠親房の『神皇正統記』と双璧を為す、中世日本で最も重要な歴史書と評される。


五輪書』(ごりんのしょ)は、宮本武蔵の著した兵法書。武蔵の代表的な著作であり、剣術の奥義をまとめたといわれる。


茶の本』(ちゃのほん、The Book of Tea)は岡倉天心の著書。原文は英語。 日本の茶道を欧米に紹介する目的で、1906年(明治39年)、米国ボストン美術館で中国・日本美術部長を務めていた天心が、ニューヨークの出版社から刊行した。茶道を仏教(禅)、道教、華道との関わりから広く捉え、日本人の美意識や文化を解説している。


夜明け前』(よあけまえ)は、島崎藤村によって書かれた長編小説。2部構成。「木曾路はすべて山の中である」の書き出しで知られる。


村田珠光の『心の文』

現代語訳
この道において、まず忌むべきは、自慢・執着の心である。達人をそねみ、初心者を見下そうとする心。もっての他ではないか。本来、達人には近づき一言の教えをも乞い、また初心者を目にかけ育ててやるべきであろう。
そしてこの道でもっとも大事なことは、唐物と和物の境界を取り払うこと。(異文化を吸収し、己の独自の展開をする。)これを肝に銘じ、用心せねばならぬ。
さて昨今、「冷え枯れる」と申して、初心の者が備前・信楽焼などをもち、目利きが眉をひそめるような、名人ぶりを気取っているが、言語道断の沙汰である。「枯れる」ということは、良き道具をもち、その味わいを知り、心の成長に合わせ位を得、やがてたどり着く「冷えて」「痩せた」境地をいう。これこそ茶の湯の面白さなのだ。とはいうものの、それほどまでに至り得ぬ者は、道具へのこだわりを捨てよ。たとえ人に「上手」と目されるようになろうとも、人に教えを乞う姿勢が大事である。それには、自慢・執着の心が何より妨げとなろう。しかしまた、自ら誇りをもたねば成り立ち難い道でもあるのだが。
この道の至言として、
 わが心の師となれ 心を師とするな
(己の心を導く師となれ 我執にとらわれた心を師とするな)
と古人もいう。
(現代語訳 能文社 2009年)


九鬼周造 実存哲学の新展開を試み,日本固有の精神構造あるいは美意識を分析した。日本文化を分析した著書『「いき」の構造』で知られる。


柳宗悦 民藝運動を起こした思想家、美学者、宗教哲学者。


岡潔 日本の数学者。


利休にたずねよ』(りきゅうにたずねよ)は、山本兼一による日本の時代小説


岩下尚史 日本の作家。


中村 昇 日本の哲学研究者。


古事記伝』(こじきでん、ふることふみのつたえ)は、江戸時代の国学者・本居宣長の『古事記』全編にわたる全44巻の註釈書である。


この記事が参加している募集

推薦図書

読書感想文

最後までお読みいただき、ありがとうございます!スキ💛コメント、とても嬉しいです💛