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[1分小説] 痴漢についての考察 - by 風俗嬢

「H乃ちゃん、怖い顔してるぅ。そんなんじゃ指名来ないぞ!」
「え?あぁ...聞いてくれる?
昨日めずらしくチョー朝早い電車乗ったんだけど」
「うんうん」
「お尻触られてさ」
「痴漢かー。ドンマイー」
「渾身の力でそいつの手の甲つねって、足蹴ってやったの」
「やるねぇー」
「『痴漢するのぉ、やめてもらえますかぁ』って車両中に聞こえる声で言ってやって」
「あははは、気持ちいわ」


「でね、次の駅で引きずり降ろして、駅の事務所に連れて行ってさ」
「素直じゃん、その人」
「褒めてる場合じゃないよ!そいつは私たちが普段提供してるものをタダで使ったんだよ。盗みだよ、盗み」
「あー、そうなるのかー」
「私たちが出勤時間内に差し出してる体はフリー素材じゃないんだよ」
「フリー素材?」
「そ、被害者みーんなが泣き寝入りして無料利用がまかり通ったら、私たちの食い扶持なくなっちゃうでしょ」
「そうか、そりゃーたしかに、許すまじだわ」



「でさ、そいつ『慰謝料払うから』って泣きついて示談求めてきたんだけど、無視して駅員に引き渡したの」
「えぇー!?慰謝料ほしくないっ?!」
「大丈夫。取り調べ受けさせて身柄拘束されても、示談金ってもらえるから」
「え?罰うけさせて、お金も払わせられるの?」
「そっ。私、前にもらったことあるよ」
「ほんと?幾らくらい?」
「この店で最初の頃の1ヵ月のお給料くらい♡」
「やばぁー!」

―――H乃さん、指名はいりました

「あ、呼ばれちゃった。
んじゃお先にいってくるね♡」




(370文字)

(550文字)



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