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ちょっとしたキセキの電話 2時間

電話したいと
旧友から連絡があった。
こちらも近況報告したかったので
1時間後にかけ直すと言う。

オレ、転職することにしたんだよね

まずこう切り出した。
かくかくしかじか理由を語り
正直な挫折と次のステップへの
微かな希望をとくとく吐露した。

しゅんやさ、生きづらくない?

何だかシャープ過ぎる問い返しが
急に返ってきてどう返せばいいのか
分からなかった。

何を隠そう今が息苦しいから転職するのだ。
かくかくしかじかの理由は本質などではない。
シンプルに苦しさが理由だから。

しゅんやのそういう自分を追求していこうって
新しい場所にポーンって飛び込む生き方がうらやましくてさ。それで私はよくムカついてたのかも。自分にはそれがなかなかできなくて、仮面を被っているのが分かってたから。

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ぼくは中学2年生で川崎から札幌へ転校して来た。北海道にばあちゃん家があったから毎年来てて、楽しい思い出しかなかったから、正直意気揚々とした転校生活を予想していた。

その期待はちょっと大きすぎた。

こっちの学校は皆が冷めていて、出る杭は打つと言わんばかりの、どんよりとした空気にぼくは圧倒されてしまった。そこを生き延びるためにぼくは無意識のうちに仮面を被らざるを得なかった。

周りからどう思われるのかという問いに
行動を支配され何のために学校へ行くのか
全く分からなかった。

本音を語る相手などおらず
仮面を被らずにいつのまにか
素でいることを恐れるようになった。

その頃から
息苦しさと共に生きるようになった。

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うん、生きづらいよ
いつも仮面を被ってる感じ

友人もそれを感じながら
生きていたのだ。
だからぼくはこの人には
仮面を被らなくてよかったのだと
今になって気づいた。

中学のその体験が
今までの間ずっと
トラウマになっていたことに
なんと今気づいたのだ。

もしかしてさぁ
だからしゅんやは
海外に行きたいんじゃない?
仮面なんて付けずにさ
素の自分が出せるからこそ
あなたは外に行きたいんじゃない

胸がすく思いというのを
ぼくは初めてありありと
感じた瞬間だった気がする。

そうか、、、そうだったのか!!

途端に息がしやすくなった。

英語が全く喋れないのに行った
カナダの弾丸バスツアー。
出会ったブラジル人のおっちゃんが
初めての外国人の友達になった。

お前は親の金で英語学校へ来て
オレは家族持ちでここに自費で来てる
なんでいつも日本人と絡んでるんだ?
英語を学びに来たんだろう?
なんのためにここへ来たんだ?
時間をムダにするな

仮面をぶっ壊された。

半年間留学したフィリピンでは
熊本から来たアーティスト志望の
女の子と出会った。

アーティストになりたいんです
アメリカに行ってデビューしてみたい
だから今ここで英語を磨きたいんです

学校の前を広がる
海の地平線をじっと見つめながら
彼女はおもむろに語っていた。

自分もこう生きたいと思った。

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それでね
私やっと仮面を着けずに
自分を表現できることを見つけたんだよね
まだちょっと言える段階じゃないんだけど

それが何かとかあんまり気にならなかった
と言ったらそれは嘘になるけど。
でもあえて聞かなかった。
オレの感想なんてどうでもいいから。

いいじゃん
それやろうよ
まずはやってみようよ

だってやっと
まともに息できるようになったんじゃん

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