- 運営しているクリエイター
#眠れない夜に
森羅万象と話す女の子と災難が恩寵と気づいた男の子の話
○森羅万象と話す女の子の話
賢くて繊細でものをわかりすぎる女の子はそのまま寺院を出ました。あとのことは髪を一つにくくった寺院長がうまくおさめてくれるそうです。
「どこへ行こうかしら」
女の子は呟きました。いろんな人たちを観察しました。いろんな人生の苦しみと楽しみがあるのを知りました。土に水に火に風に生きるもののありようを体験しました。風が女の子に尋ねます。
「森はあなたをいつでも迎える準備
地を這う虫になった女の子の話
賢くて繊細でものをわかりすぎる女の子はいつのまにか街外れまで歩いてきていました。黄金の穂が揺れる畑が広がっています。街の喧噪がかすかに聞こえてきます。騒音に聞こえていたこれらの音も先ほどの女の人のように心の重荷を抱えながら生きている人たちが生み出す音なのです。女の子は足下をじっと見つめます。
足下をうねりながらミミズが横切ろうとしていました。
「虫たちから見たら人間の営みはどんな風に見えるのか
知らない女の人の中に入り込んだ女の子の話
賢くて繊細でものをわかりすぎる女の子は森の外へ旅立ちました。
風は街へ向かう女の子に質問をします。「どうして街へいくんだね?」
「私がやったことがないことをやるため、私が感じたことがないものを感じるため、私が考えたことがないことを考えるため」
風はため息をつきました。
「あなたの幸運を祈ろう」
「ありがとう」
東の街へ着いた女の子は大通りをずんずん歩いていきます。普段過ごしている森とは