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転職活動からの学び②ー面接や一般常識テストだけでは最高の人材は採用出来ない

前回は「不採用の理由は採用する会社側にある場合がある」ということで、転職活動をしてみての実体験をハーバード・ビジネス・レビューの記事を交えて書きました。


今回は、実際に働くことになるポジションの仕事を想定した課題が出された採用プロセスが素晴らしいと感じた会社について書きたいと思います。

その会社は北欧に本社がある会社で、会社の知名度は非常に高く、私もそこの製品を使ったことは何度もありました。しかし、今の業界とかなり離れてしまうので、面接を受けることに難色を示していたですが、エージェントが強引に進めてしまったので、会社の方々には本当に申し訳ないと思いながら受けたのでした。

しかし、その会社の面接を受けてみると、実際に働くことになる部署内の同役職レベルの2人が実務について、組織についてをかなり詳細に説明してくれて、そこから企業の文化を垣間見ることができました。

そして、一番感動したのが、面接が終わった後に実務で直面しそうな課題が出されたことです。その課題までを含めてが1次面接でした。

この課題を解いていく中で、「実際にこういう業務が日々行われるんだろうな」と入社後を想像することが出来ました。

このような採用プロセスについて、最近読んだハーバード・ビジネスレビューの記事で「最高の人材を採用したければ「実用最小限の能力の証明」を求めよ 面接という手法では採用後のパフォーマンスを予測できない」というものありましたので、ご紹介したいと思います。

採用面接で「最高の人材だ」と判断しても、入社後のパフォーマンスが期待通りであることは少ない。そこで、筆者らが推奨するのが「実用最小限の能力の証明」と呼ばれるアプローチだ。これは、スタートアップが最終的にプロダクトの生産を始める前に「実用最小限の製品」(MVP)をつくり、消費者の反応を伺うのと同様に、そのポジションに期待されるパフォーマンスを検証できる課題を採用候補者に与え、実際にどのような行動を取るかを見るものだ。
ジェフ・タフ ,スティーブン・バッシュ ,ジェフ・ジョンソン(ハーバード・ビジネス・レビュー)


実際、面接だけでは最適な人材を取れないという理由として下記のように述べています。

面接が教えてくれるのは、質問に答える能力やその人の持つ知識や意見、情報の優先順位を見極める能力にすぎない。そのすべてが、募集しているポジションに必要があるかどうかは別の話だ。

 伝統的な面接では、採用担当者と似たようなタイプの人材、すなわち「ミニ・ミー」が採用される可能性が高い。どれだけ客観的なつもりでいても、避けることのできない認知エラーだ。組織心理学者のアダム・グラントは、これを「『私にはバイアスはない』バイアス」と呼んでいる。
ジェフ・タフ ,スティーブン・バッシュ ,ジェフ・ジョンソン(ハーバード・ビジネス・レビュー)


私が今まで働いてきたいくつかの会社は全て面接だけで人材を採用してきたので、トップクラスの大学や有名企業の出身者を雇ったのに、いざ入社してみたらその仕事を上手くやる事が出来ない人で周りが苦労したという例を何度も見てきました。

これは、面接だけ、もしくはそこに追加でSPIテストというプロセスで人材を採用している会社では、同じような経験をされている方も多いのではないでしょうか。

では、どのように「実用最小限の能力を証明させる」のか。筆者たちが実例を挙げています。

メディアの場合には、ライター候補者にライティングや編集のテストを行うことが多いが、ジョンソンの場合はさらに分析的なアプローチを取った。課題の提出を受けた後、候補者とフォローアップの会話を行い、そこに書かれている内容だけでなく、その課題を完成させるためにどのような選択をしたか、相手に話を聞いたのだ。

 このアプローチは、候補者の採用後のパフォーマンスを予測するのに役立っただけでなく、候補者自身が仕事の内容をよりよく理解する助けになった。採用する側が、タスクのさまざまな要素を実際のポジションに期待されることと結びつけて説明したからだ。
ジェフ・タフ ,スティーブン・バッシュ ,ジェフ・ジョンソン(ハーバード・ビジネス・レビュー)


私の場合ですが、その北欧の会社で最初に出された課題は「本社が行っているキャンペーンのクリエイティブをあなたならどのように日本語に翻訳しますか?」というものでした。

私の職務経歴書には、本社のクリエイティブのローカライズ作業は箇条書きでは書いていますが、実際の能力までを見せる機会は面接だけでは作られません。ですからこの課題が出された時には、「日々行なっている業務を活かせるかも」と生き生きと取り組んで提出したのでした。

実際、この方法を使うことの利点について、さらに記事の中では下記のようにも述べています。

それまでほとんど検討対象にならなかった経歴を持つ人の採用にもつながりました。この方法では、履歴書や職務経歴書の内容をそこまで気にする必要がないためです。採用プロセスそのものが、相手が優秀かどうかを教えてくれるのです
ジェフ・タフ ,スティーブン・バッシュ ,ジェフ・ジョンソン(ハーバード・ビジネス・レビュー)

私はその会社の一次を通過し、2次に行くことになったのですが、その面接の前に、また別の課題が出されて、面接までにやって来るようにと言われました。その課題も入社後の具体的な仕事が想像出来るもので、このプロセスを課すことで即戦力となる人材を採ることが出来るのだろうなと非常に感心しました。

色々悩んだ結果、素晴らしい会社だったのですが、映画業界から離れる決心がつかず、それ以上の面接などで担当の方々の時間を無駄にしてはいけないとお断りをしたのでした。

この会社の方には申し訳ないことをしましたが、受けて本当に良かったなと思っています。
「実用最小限の能力の証明」を求めるという課題は非常にスマートな方法です。

入社後に採用した側、された側の両者が違和感を持ってしまうことをを避けるためにも、事前に課題を作るという手間は掛かりますが、人材採用のプロセスを決める権限のある方にはぜひ試してみてほしいなと思います。
私もそのような機会があったら、ぜひ試してみたいと考えています。


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