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デザイントレンドに踊らされたスタートアップの悲劇とその対応策

こんにちは。ニューヨークでデザイナーをしている mihomi です。

本稿はスタートアップにこれからローンチされる起業家や、もう始めちゃったけどデザイン的になんだか不安が残る起業家の皆さんにお届けします。

1. 年々低くなる起業家へのハードル

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スタートアップを取り巻くエコシステムは年々変化しています。エンジェル投資家や、大企業からの積極投資で資金調達がスムースになり、起業家育成プログラムなどの様々な支援組織も充実してきました。

MBAで学ばなくてもGithubの常連でなくても、グッとくるミッション、情熱、そして斬新なアイディアを持ち合わせれば、誰もが起業家になれるチャンスを摑めるようになりました。(成功するしないは別として...)

とりわけ、アプリ開発・支援のツールは日々進化し続けています。無料プロトタイプ作成ツール、はたまた安価なDevサービス、クールなUI ツールの普及など、昨今のインフラ整備の拡張には目を見張るものがあります。

グラフィックデザイン系にしても然り。クリエイティブマーケットプレイスや、LPページテンプレート、AIデザインサービスのフル稼働で非デザイナーのどなたでも、デザイントレンドを取り入れた、そこそこ見た目の良いウェブサイトや、マーケ用のデジタルプロモが簡単に作れてしまいます。


2. 悲劇は ”どっかで見たかも?” から始まる

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しかし、ここに最大の落とし穴が。プロの ”できる” デザイナーによるビジュアル全体のトータルコーディネートの欠如から、DIY(Do it yourself)では ”なんとなく” でプロジェクトが進んでしまうことが多くなります。ブランディングから始まる、デザイン戦略によるデザインでの差別化が成立しないため、これってどっかで見たかも?的なデザインの氾濫が起こり、ユーザーが混乱し始めるのです。結果、なーんだ、これってXX社のパチモン?となり、最悪、悲劇を産むトリガーになり得ます。せっかく自社独自のミッションに基づいたイノベーティブなプロダクトがあっても、見せ方を一歩間違うと本末転倒に。


3. リアルサイトで検証

では、実際のスタートアップによるウェブサイトで検証してみましょう。

アメリカにはたくさんのウェブサイト・インスピレーションサイトがあり、とても便利です。テック系をさーっと見るなら、lapa.ninja, や、saaslandingpage, 等。後者はページ毎にサーチができるので、かなり使い易くなっています。

他のカテゴリーまでじっくり観察したいなら、awwwards。ウェブデザイン業界を牽引する審査員付きのキュレーション系です。究極にクリエイティブなウェブサイトしかフィーチャーさせてもらえない為、かなり敷居が高く良い勉強になります。

これらをリサーチしてみたところ、テック系ウェブ、一見すると似たようなデザインがたくさん集まってきています。異業種ならまだしも、同業種ですと問題を引き起こしそうな具合です。分析結果から大枠で以下のようなデザインカテゴリーに選別できることがわかりました。そしてこちら、1-2年前から続くテック系ウェブのデザイントトレンドにもなっています。

1. 青い色メインのアイソメ図(立体を斜め上から見た図)で、ソフトウェアを抽象的にヒーローとしてフィーチャーしたもの

2. 白地バックに大きい文字と、大きいプロダクト(ソフト系)を起用したもの

3. 人々のイラストを使ったもの

4. 暗め色使いでプロダクト(ハード系)やサービスをヒーローに抜擢したもの


一つ一つ比べてみます。

1. 青い色メインのアイソメ図(立体を斜め上から見た図)で、ソフトウェアを抽象的にヒーローとしてフィーチャーしたもの

Ankr と Matic 。どちらもクリプトカレンシー関連の会社です。アイソメ図、色使いともほとんど同じ。

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left: Ankr, right: Matic


2. 白地バックに大きい文字と、大きいプロダクト(ソフト系)を起用したもの

Figma と Miro 。どちらもSaaS系のビジュアルコミュニケーションサービス会社です。それにしても良く似ています。ホントにぱっと見、どっちがどっちか区別がつきません。UIUX も酷似。わざと疑惑があってもおかしくないでしょう。

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left: Figma, right: Miro


3. 人々のイラストを使ったもの

ConfluenceTwist 。どちらもチームビルダー・コラボ系マネージメントのソフトウェア会社です。ヒーローにいわゆるテック的なイラストを使い、すぐその下にプロダクトの説明があるところまで似ています。お互い意識しているのでしょうか?

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left: Confluence, right: Twist


4. 暗め色使いでプロダクト(ハード系)やサービスをヒーローに抜擢したもの

CruiseNuro 。どちらも AIベースの無人車デリバリー系の会社です。一見同じ会社?と見間違えるようなデザインで没個性です。ヒーローの車のビデオ使いまで同じです。ここまで似ていて訴えられたりしないのでしょうか、とこっちがドキドキしてしまいます。色々とリサーチしてみましたが、物流系テックはこの手のデザインが多いことに気がつきました。

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left: Cruise, right: Nuro


4. 対応策としてのブランディング

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いかがでしたか?こちらにアップしたものには有名会社もあり、当然プロのデザイナーにより構築されたものと思われます。それでも尚、これだけ似通ったデザインが多いという衝撃。戸惑うのは私だけではないはずです。同じセクターでのビジネスの場合、競合他社のやり方とあまりにかけ離れてしまっては、かえって逆効果だと言う声も聞かれます。何故ならユーザーは、慣れ親しんだ「型」に当てはまっている方が居心地が良い、と感じることがあるからです。しかし、あなたの会社ならではのUSP(自社独自の強み・売り)でユーザーに何度も語りかけ、エモーショナルな繋がりを深めていくことで、両者の間に良好な関係が築けるのです。

ここで一つわかりやすい例を紹介します。

今では伝説となったアップル社のテレビコマーシャル、”1984”。スーパーボウルで放映されたこの雄大なステートメントは、IBM全盛当時のパーソナルコンピューター業界に、革命を起こす目的で作られました。結果、アップルの型破りな挑戦は、100日で72000台のパーソナルコンピューターを売り上げる、という偉業を成し遂げたのです。そして13年後に作られた、"Think different." のキャンペーン。マイクロソフトシェアからの奪還を目指し成功した、これまた歴史に残るキャンペーンでもあります。ブランドイメージに焦点を当てたこの戦略はその後のアップル帝国の礎を築き、そのブランド価値を不動のものとしました。

スティーブ・ジョブズは、当時、

"Changing the world, one person at a time."[個人がコンピュータの力を持つことで、一人ひとりがクリエイティビティを最大限に増幅させて世界を変えていこう

を企業理念とし、先ずは内部のチームからそして外部のユーザーへとその熱い想いを伝えていきました。それはアップル製品を使うことによって得られる素晴らしい体験を、ユーザーの人生に与えるポジティブなインパクトへと昇華させたのです。そして2020年で、2兆ドル(約212兆円)という世界一の市場価値、また、ブランド価値では3,230億ドル(約34兆円)を持つスーパー企業へと成長し、数々の優秀なプロダクトと、計り知れない価値や副産物を私たちの社会生活に与えてくれました。

このように、ブレないブランディングであなたの会社独自の強みを、ユーザーと触れ合う全てのタッチポイントに仕掛けることが大切です。そして、それはユーザーにとって ”素晴らしい体験” でなければいけません。


5. 終わりに

見た目だけのデザインの良さ、とブランディングは全くの別物です。あなたの会社から生まれ出る全てのものは、ユーザーが一度インタラクトしたならば、決して忘れることのない、ユニークなものでなければいけません。似たものだらけのこのご時世、改めてスティーブ・ジョブズの "Think different." が胸に突き刺さります。プロダクトでも、ウェブサイトでも、ソーシャルキャンペーンでも然り。見るもの、聞くもの、体験するものの全てを利用し、あなたの会社だけが持つ独自の世界観でユーザーの心を魅了することがポイントです。その為には高品質なブランディングで、あなたのビジネス戦略を根本から強化してみてはいかがでしょうか?


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私は、ニューヨークのアートスクール卒業後、数々のリアルワールドでのプロジェクトを通じ、本物の ”ビジネス戦略としてのデザイン” を習得しました。アメリカ式デザインで世界的に活躍されたい方、なんだかよくわからないけれど、ご自身のコーポレートサイトに危機感を感じている、テックスタートアップ関連の方、あなたの会社の魅力を最大限に引き出すブランディングに興味のある方など、こちらまで お気軽にご連絡ください。

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