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時を超えて、文化財を守る〜奈良博文化財保存修理所特別公開

奈良国立博物館で、文化財保存修理所の特別公開に参加してきました。

文化財保存修理所は、仏像や絵画、漆塗りの工芸品など、未来に残したい大切な文化財を修理するための場所。ふだんは公開されていないバックヤードなのですが、年に1日だけ、特別に公開される日があるのです。

事前申し込みの抽選制。一度は抽選にもれてしまったのですが、キャンセルの方が出たそうで、思いがけず繰り上げ当選。職人さんたちのお仕事を間近で拝見する貴重な機会、楽しみに出かけました。

見学の前に、文化財の修理や保存について、学芸員さんたちが丁寧なレクチャーをしてくれます。
彫刻や絵画、漆工品など、文化財のかたちによって、修理の工程や使われる道具も異なるのだそう。
「修理所は、手術室のようなもの」という学芸員さんの言葉が心にのこりました。

レクチャーの後は、いよいよ実際の修理現場を見学。
木彫、書画、漆工とそれぞれ作業室が分かれていて、専門の職人さんたちが作業にあたっているところを、ガラス越しに見学します。

仏像を下からのぞいたり、古い掛け軸に貼られた裏紙をピンセットで剥がしたり、漆塗りの鞘に螺鈿細工を貼り付けたりしている場面を間近で見せていただいて、どきどき。
静かな空間で、皆さんもくもくと手を動かしている様子が印象的でした。

気の遠くなるような、地道な作業の積み重ねで文化財を守っているのだなあ、と静かな感動が込み上げてきます。

奈良博の仏像館に展示されている金剛力士像も、修理作業のご苦労を聞いた後では、以前にも増して力強く感じられます。

奈良博で開催中の「春日大社 若宮国宝展」には、修理所の職人さんが手がけた宝物の「復元模造」が出品されています。
精緻な装飾がとても美しく、ガラスケース越しにしばし見とれました。

展覧会は、春日大社の摂社である若宮神社が、20年に一度の造り替え(大規模な修繕)を終えたことを記念して開かれたもの。

ちょうどいい機会なので、春日大社の南側に位置する「若宮十五社」をめぐるお参りをしてきました。

賑やかな春日大社の境内から奥へ入ると、千年以上ご神域として守られてきた森が広がっています。

人(や鹿)の姿も少なく、鳥の声と、葉っぱが風に揺れる音だけが響く参道。

心静かに歩きたいとき、おすすめの場所です。


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