見出し画像

はじめての宿坊で見つけた、秘密の京都

先日、とても久しぶりに京都へ出かけてきました。

せっかくなので、京都らしい宿へ泊まろうと思って調べているときに、「宿坊」の存在を知りました。

もともとは、僧侶や参拝者がお寺に泊まるための施設でしたが、最近は、一般の人を積極的に受け入れてくれるところが増えているようなのです。

さらに調べて、今回は宿坊初心者でも比較的泊まりやすそうな、真言宗智山派の総本山、智積院の宿坊にお世話になろうと決めました。

今回の記事では、「はじめての宿坊体験」を写真付きでお届けします。

昨年建て替えたばかりという、新しくて清潔な建物。

チェックインの手続きは、僧衣をまとったお坊さんがしてくださいます。

客室も、まるでビジネスホテルのようにピカピカです。
食事は懐石料理と、精進料理から選べます。

私は精進にしましたが、味付けや歯ごたえもいろいろで、お肉やお魚がないことを感じさせません。

とても美味しくて、満足感もしっかり。

都の師走は冷えるので思わず熱燗を頼んでしまい、もはや精進できていませんが、至福のひとときでした。

特筆すべきは、早朝のおつとめ。

朝、6時前に館内放送が流れ、冬は6時半から、お堂での読経に参加できるのです。

11/12〜12/11までの期間は特別に、如来寿量品(にょらいじゅりょうぼん)というお経が聴けるのですが、読経が始まって度肝を抜かれました。

今までの人生で聴いたことのあるお経と、全然違うのです。

独特の抑揚、強弱、ビート、まるで音楽みたいな響き。

途中で転調? したり、ソロパート? もあったりします。

大勢のお坊さんが一斉に唱えるので、お堂がふるえるような大音量です。

場所を変えて、明王殿で聴く観音経と般若心経がまた、すごい迫力。

燃え上がる炎。打ち鳴らされる太鼓。

ライブ会場もかくやと思うようなグルーヴ感に、胸が熱くなります。

これはぜひ、一度は聞いてもらいたい! と思うような体験でした。

さらに宿泊者は、僧侶の方の解説付きで、智積院が所属する国宝、長谷川等伯父子の襖絵(写真は複製)や、美しい庭園を拝見することができます。

一般の拝観時間の前なので、とても静かな雰囲気ですし、宿泊者しか見ることのできない特別な光景にも出会えます(これからお泊まりになる方のため、詳しい内容は内緒にしておきますね)。

長谷川等伯の息子で、狩野派を超えるかと言われたほどの才能をもつ絵師の久蔵は、この桜の襖絵(写真は複製)を仕上げた翌年、26歳の若さで亡くなってしまったのだって。

そもそも等伯に襖絵を描かせたのは豊臣秀吉なのだけれど、秀吉がこの場所に智積院の前身である祥雲禅寺を建てたのは、3歳で亡くなった息子を弔うためだったそう。

お話を聞けば聞くほど、歴史のドラマがあるお寺。今の庭園の静寂からは想像もつきません。

上の写真は、後藤順一画伯による「百雀図」。

全国のお寺から智積院に集まって学び、また旅立っていく僧侶たちの姿を表しているのだって。

「百の雀(すずめ)」というのですが、描かれた雀を数えると、99羽しかいません。

恥ずかしがり屋の1羽は襖の後ろに隠れているんですよ…とふだん見ることのできない引っ込み思案の雀も見せていただき、キュンとしました。

宿坊に泊まる京都、修行の場にお邪魔させていただき、知らなかった表情を垣間見ることができました。

中でも早朝、凛とした静寂の中で自分の心身を見つめるひとときはとても貴重で、得がたい時間だと思います。

訪れる度に好きになる、好きになるほどわからないことが増える、いくら追いかけても振り向いてくれない女性みたいに謎めいて、京都はつくづく魅力的な街です。

この記事が参加している募集

旅のフォトアルバム

一度は行きたいあの場所

読んでいただきありがとうございます! ほっとひと息つけるお茶のような文章を目指しています。 よかったら、またお越しくださいね。