ありえないぐらい好きな曲

昔、高校の合唱の先生が、授業中にこう言った。「コンサートで演奏する時に、私は緊張しない。楽しみだ!なんて言う、ちょっとおかしな人が、たまにいますね」

それを聞いて、みんなはどっと笑った。もちろん私も。

たくさんの人が見ていて、しーんとした所で演奏するんだから、緊張はつきもの、と思うのが普通なら、話に出てくる人の言い分は、確かに宇宙人的に聞こえるだろう。

その後、プラハにやって来て、音楽院の学生となった私は、ありえないぐらい好きな曲に出会った。noteでも以前録音を公開し、今は記事を販売させてもらっているスメタナの練習曲"On the sea shore"という曲だ。

初めて弾いた頃からずっと、自分はこんなにこの曲が好きだからみんなも絶対に好きになるはず!と、強く思っていた。

練習曲なので、テクニック的にも簡単ではない作品で、コンサートで失敗するリスクももちろんある。それにもかかわらず、当時の私は、本番で弾く前も、緊張を飛び越えて、ワクワクと楽しみな気持ちの方が勝ち、早くこの曲をみんなと共有したい!と、意気込んでいたのを思い出す。

そんなわけで、合唱の先生の言っていた人前で弾く時に緊張せず、むしろ楽しみ、という例の人の気持ちが、時を経て、私にもちょっと理解できたのだった。今思うと、プラハに来て、初めて得た感覚だ。

あれからも、本番前に緊張は皆無、というわけではもちろんないけれど、好きな曲を演奏するんだ!と、高揚する気持ちは、いつだって大きい。

ありえないぐらい好きな曲、ぜひご試聴ください。皆さんに音楽の素晴らしさが届くことを願って。

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