冬の台所の夢は、外の音色をよびおこす

食洗機の音は、
ゴオゴオ、カタン、ちろちろ、ざああと
遠くの工場と海の音

換気扇からは風の唸り
がなる下で火をつける煙草の煙は
いつでも他の夜とつながっているなんて
マッチ売りの少女が示してくれたこと

彼女は死んでしまったけど

ここで、明日も生きるつもりの人達は
土を落とした野菜を刻んで肉を焼く
コンロのスイッチを、つければ、
カチカチ、バチバチバチ、
焚き火、あの夏のキャンプファイヤー

今日も自然を噛んでたらふく吞み下す
昨日よりおいしくできたね

おうちでどこでもつながっている

本棚は溢れだしそう

大きめの薄型テレビには、お気に入りの白黒映画が流れてる

異邦人は、
動かない鑑賞のむこうから足音もなくやってくる
運がよければ友達にだってなれるかもよ

衛星がつないでくれたインターネットで、旧交をあたためる

このままもっと寒くなっても大丈夫
秋は色づいた葉と落ちていく、窓辺にて、

灰色が降りる冬を待つ

壁には写真を飾ろう
こっそり描いた絵も紛れこませて

一年が入れ替われる季節、
おそとのことを想像して、
静かな空間であたたまる
ゆっくりと記憶を見送って、

緩やかに新しいときに慣れていく

そうでもしないと、
このへやのことも忘れてしまって、

そんな土地勘じゃあ、
寒さを我慢して流行りの服を着てでかけても、
どこにいるのとも変わりないでしょう

せっかく街の人にアドレスを聞かれても、

番地も言えず仕舞いなら、何も留めてもらえないよ

だから、春が来るまで、

この壁に包まれて音楽をかけてるの

たまっていった日記と手紙

少しピンクがかった光がさし込む時、
ずっと聴いていた音色は、
君の声をのせていた
いつしかドアはあけっぱなし

  

    (お久しぶりです)

  (今日はなに食べたい?)

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