真冬の台所の夢、ノックでよびさます外

食洗機の音は、

ゴオゴオ、カタン、ちろちろ、ざああと遠くの工場と海の音

換気扇からは風の唸り

がなる下で火をつける煙草のけむりは

いつでも他の夜とつながるだなんて

マッチ売りの少女が示してくれたこと

彼女は死んでしまったけど

ここで、明日も生きるつもりの人達は

土を落とした野菜を刻んで肉を焼く

コンロのスイッチをつければ、

カチカチ、バチバチバチ、焚き火、あの夏のキャンプファイヤー

今日も自然をたらふく噛んで吞み下す

昨日よりおいしくできたね

すべての音は台所に通ず

秋は色づいた葉と落ちて、
窓辺にて灰色が降りた冬

一年が入れ替われる季節、
よく眠りよく食べ
芋の様に根を張る虫でした

這う夢は眩しくなって立ち消え

聴き慣れた音色に君の声が混じる頃
もうドアはあけっぱなし

トントントン、

まな板と三徳包丁が擦れあうのは、

聞き忘れたノック、もしくはずっと鳴っていた、

冷めない季節の足音だった


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