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本紹介

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#児童書

魔女のともだち

魔女のともだち

心が疲れているときは児童書を読むことにしている。『クローディアの秘密』でおなじみカニグズバーグの 『魔女ジェニファとわたし』(E.L. Konigsburg 著, 松永 ふみ子 訳,岩波書店)を読んだ。

↑ お値段間違ってます

「ぼっち上等。私はあんたらフツーの人間とは違う魔女なんだし」みたいに超然としているジェニファ(実は私も高校生くらいまでこんなスタンスで生きていました笑)。
そんなジ

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逃避先はやかまし村

逃避先はやかまし村

多少の差はあれども、誰しもメンタル参ってますよね。
私は、「自分が悩むべきではない領域のこと」も悩んでしまうタチで、五輪開催か延期か中止かを検討している人たち及び関連イベントの主催者ならびに出場選手のことを考えると泣きそうになります。
そして、医療現場で命懸けで働いている人々や死にゆく人々のこと、その関係者、マスクやトイレットペーパーなどの買い占め及び転売、朝イチで並ぶ高齢者などのことも考えると胸

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こどもの日に

こどもの日に

かねてより気になっていた『おしりたんてい』を読んでみました。
ううむ、バカ売れする児童書に必要な要素がすべて詰まっているかも。
親が「こんなくだらない本!」と言いそうなタイトルと絵。コロコロコミックに毛が生えたような見た目です。
名前も顔もずばり「おしり」です。そして彼は匂いに敏感です。でもどこが鼻でどこが口か(もしかしたらお尻でもあるのか?)がよくわからないのです。

敵の怪盗は「かいとうU」で

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現実と絵本

現実と絵本

昨日仕事から帰ったら、日経夕刊の一面記事のジビエ料理特集が目に飛び込んでき、日中職場で読んだ絵本のことが頭をよぎりました。

ブライアン・ワイルドスミスの『いぬとかりゅうど』です。

ハンターに同行して撃ち取った獲物をくわえて戻らねばならない猟犬くんですが、傷ついた獲物をかくまってしまい…

「捕獲・狩猟→解体・調理」という現実と、あまりに甘い絵本の世界。
絵本を読んでいると、「ああ、いつまでもこ

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迷い道くねくね

迷い道くねくね

多くの人が言うように、不惑を過ぎても、惑うことがなくなるわけではない。日々迷ったり揺れ動いたり。

そんな迷える中年も中2もみんなで読もう!と思える児童書を。

『夢はどうしてかなわないの?』大野正人/著(汐文社)

「そんなん大人でも知りたいわ!」と叫びたい。
そして、「夢はかなわないもの」との前提が衝撃的。
かなわないのには様々な理由(悪魔)と遭遇するからだけど、「説教臭かったら承知しないぞ」

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冤罪と失踪

冤罪と失踪

長らく気になっていながら読んでいなかった児童書『ぬすまれた宝物』(ウィリアム・スタイグ著 金子メロン訳)。(本当にごめんなさい!読んでないなんて児童書担当者としてあり得ないよね…)

いやー、これは大人が読む物語ではないか?

冤罪で失意のガチョウ、ガーウェイン。袴田さんを思い出す。
そして、逃亡の隠遁生活。小野田さんや横井さんを思い出す。

と思って、ついつい「小野田さん」で検索したところ、思い

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走って逃げる少年と、置き去り騒動

走って逃げる少年と、置き去り騒動

「小2置き去り事件」が世間を騒がせた先週ですが、この件が耳に入ってすぐに浮かんだのはウーリー・オルレブ作 母袋夏生訳の『走れ、走って逃げろ』でした(原題は“RUN, BOY RUN”です。お、「ラン・ローラ・ラン」みたいでかっこいい!と思ってしまいました…)。

ちょうど、先週末にこの本で読書会があり、強烈な印象を持って読んだばかりでした。

ナチス・ドイツから逃げるユダヤの子、逃げて逃げて逃げま

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臆病者の作りし怪奇児童文学

臆病者の作りし怪奇児童文学

最近、わたしの仲良くしている学校図書館司書仲間の間で、異様に盛り上がった作家、大海赫(おおうみ あかし)。

1966年にデビューして、1970年代以降、多数の児童書を刊行された大海氏です。当時の子どもたちの中には、強烈な影響を受けてずっと復刊を待っていた人もいます。
さらに、毎年、氏を囲む会も催されているとのこと。いい歳のとり方だと思います。Twitterもやられてます。

今回ご紹介するのは、

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平成における読み聞かせ絵本の定番中の定番

平成における読み聞かせ絵本の定番中の定番

ほとんどの赤ちゃんがいるご家庭には、この絵本があるのではないか?
と、密かに思っている定番中の定番絵本

まつおか たつひで作『ぴょーん』今日はこの絵本の作者の新作発売記念講演会に行ってきた。

新作は『だれのこえ?』

『ぴょーん』誕生秘話から物理、自然界、生物界にまつわる貴重なお話、めっちゃくちゃ面白かった!

とにかく、生き物をじっくり観察することの楽しさを思い知りました。

「ちょっとそこ

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博物館と初恋とディスレクシア

博物館と初恋とディスレクシア

小6の夏休み。
寂れた博物館で、スケッチブックを抱えたイケメン中学男子と出会った。
何かと憎たらしいことを言うアイツ。いけ好かない。別に会いたいわけじゃない。
でも、心とは裏腹に、今日も足は博物館に向いてしまう…

そんな、少女漫画のようなじれったい設定にヤキモキしながらも、ディスレクシアの少女が語る物語に引き込まれる児童書/YA作品だ。(ディスレクシアとは、読み書き障害のことであります。)

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顔。そしてアメリカ

顔。そしてアメリカ

人間として生きていくときに、顔はどれほど重要か?
ということを、今までの長い人生の途上で、時たま考えることはあった。

美人はいいよな、とか、バカでもかわいきゃいいのかよ、とか、同じ能力ならやっぱ顔がいい方を採るのかな、とか、そんな次元の、顔についての考察。

『ワンダー』(R.J.パラシオ著)を読んで、まずは「イケメンとかブサイクとか言えることの、なんとお気楽なことよ」という幼稚な感慨を覚えた。

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ブック探偵初仕事 一件落着

ブック探偵初仕事 一件落着

昨年末、ある友人よりお寄せいただいた、以下の調査依頼。
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みどりさん、わたし、どうしても何の本だったか判らない小学生の頃だかに読んだ外国のお話があるの。

○変わった学校とセンセイと生徒の話
○たしか、アルファベットがaで始まる生徒しかいない?
○蛇口をひねると何だかのジュースが出てくる章がある

こんな少ないヒントで

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ジャーナリズムについて

ジャーナリズムについて

昨夜は、古い友達と、3年ぶりくらいに酒を酌み交わしながら語りあった。
彼女は、若い頃はバリバリのカメラマンで、アーティストや市井の人々や静物やらを、とても素敵に撮っていたし、仕事一筋だった。

そんな彼女も母となり、自分のことより子どもや家庭のことを最優先して生きるようになり、カメラを持たなくなって久しい。
「別に写真なんてどうでも良くなっちゃったんだよね」

そんな彼女が、今ふつふつとやりたくな

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あしたするよ

あしたするよ

今年も残すところあと一週間あまり。
どうしよ、どうしよ〜!と常に心のどこかに焦りはあるものの、年賀状も大掃除もクリスマスの飾り付けさえも後回し。結局ダラダラ過ごしている天皇誕生日である。

枕元に置いている本の中に、がまくんとかえるくんシリーズの『ふたりはきょうも』がある。

この短編集の最初に収められている「あしたするよ」を教訓にしようと思い、数年前からベッドサイドに置いているのだ。

部屋

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