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ごはんエッセイ、おいしい毎日

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日々食べたおいしいものをエッセイとしてまとめてます。 たかいものからやすいものまで美味けりゃなんでも食べる。
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2023年1月の記事一覧

松屋の豚汁と、おまけの牛めし

松屋の豚汁と、おまけの牛めし

 さんむい。今年は暖冬かもしれないですね、と言った気象予報士のほっぺに冷え切った手を当ててやろうかと恨み節と共に僕はひとり街を歩く。

 夜ふけの街並み。するどく冷えた冬風が我が物顔で踊る時、僕はいつも牛丼チェーン店の松屋へ避難する。丼ものはなんだっていい、大事なのはそう「豚汁」だ。

 松屋の豚汁はうまい。というかデカい。どんぶりと同じサイズの腕になみなみと注がれている。到着したらいそいそとたっ

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湿ったカツ丼がいちばんうまい

湿ったカツ丼がいちばんうまい

「かつ丼」

 どうやら僕は最近のかつ丼とは相性が悪いらしい。そう思ったのはかつ丼の名店を紹介するテレビを見ている時のことだった。どうも最近は玉子の上に「乾いた」カツが乗っていることが主流で、サクサクの食感も味わえるようになっている。

 だが違う。僕が求めるかつ丼はあくまで玉子と一緒にとじてあって、カツの衣はむしろじゅくじゅくのしみしみになっていないと困るのだ。

 ちょっと濃すぎるんじゃないの

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まるごと苺、ぜいたくな一本

まるごと苺、ぜいたくな一本

 幼い頃、風邪をひいた特別な日にしか食べられない甘味があった。桜桃のかんづめに、原液濃い目の瓶のカルピス。そして「まるごとバナナ」だった。

上手く持たないと破れてしまうようなふわふわなオムレット生地にたっぷり注入されたホイップクリーム。そしてその名を恥じない、まさしく「まるごと」バナナ一本。

 高熱でもうろうとする意識の中、母親が「まるごとバナナ買ってきたよ。食べられる?」とやさしく僕に呼びか

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手ちぎりキャベツと豚バラ肉のお鍋

手ちぎりキャベツと豚バラ肉のお鍋

「手ちぎりキャベツと豚バラ肉のお鍋」

 寒くなると鍋が食べたくなる、とはよく言うが僕の場合は作るのがめんどくさくなると我こそが、と鍋が台所から飛び出してくる。なのでつまりは年がら年中寒かろうが暑かろうが鍋は出現する。

 なかでも一番頻度の高い鍋料理はタイトルにある通り、ふたつの材料がメインのあまりに簡素なものだ。これが非常にうまいので紹介しよう。

 材料はキャベツと豚バラ肉。おおかたこれだけ

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ごはん全滅、しょうが焼き定食

ごはん全滅、しょうが焼き定食

「しょうが焼き定食」

 男の子というのは未来永劫しょうが焼き定食から逃れられない運命にある。渋いたべものを少量頂く、大人になったら自然にできるものかと思っていたが、僕は今日も定食屋で元気よく「じゃあ、しょうが焼き定食で」と宣言してしまう。

 じゃあ、とか仕方なしに選んでいるふうを装っているが、そんなことはない。初めからこれが食べたかったのだ。

 名古屋市大須。ここに創業百年超えの老舗大衆食堂

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