まるごと苺、ぜいたくな一本
幼い頃、風邪をひいた特別な日にしか食べられない甘味があった。桜桃のかんづめに、原液濃い目の瓶のカルピス。そして「まるごとバナナ」だった。
上手く持たないと破れてしまうようなふわふわなオムレット生地にたっぷり注入されたホイップクリーム。そしてその名を恥じない、まさしく「まるごと」バナナ一本。
高熱でもうろうとする意識の中、母親が「まるごとバナナ買ってきたよ。食べられる?」とやさしく僕に呼びかけると、仮病だったんじゃないかと思うほどに僕は飛び起きて、おでこの冷えピタが落ち