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自作の詩です☆読んでいただけたら嬉しいです。
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#散文詩

散文詩 一筆したため春薄暮

散文詩 一筆したため春薄暮

前略貴女様

随分と笑顔を見せてくれるようになったと思います。
貴女のお母さんはやはり苦労の連続でしたが、いつもお話しているように大丈夫なのですよ。
思い出してください。髪をとかしてくれるのはお母さん。ぼろぼろの子犬のぬいぐるみを繕ってくれたのもお母さん。三輪車を押してくれたのもお母さん。
お母さんは大丈夫です。きっと幸せになりますよ。そして貴女を捨てたり、ましてや殺めたりなどあろうはずはありませ

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散文詩 花散る

散文詩 花散る

たった一輪が残るのです。
他の花は短い日々を染め上げて、ものも言わずに散ってゆくというのに。
たった一輪だけが残るのです。
落ちてゆく姿を見せたいただひとりを待っているかのように。

天真爛漫を装って、ただ無邪気に振る舞い続けた意味を知って欲しいと待っているのかも知れない。
散り際が美しいなどと、やめてくださいね。
残して欲しい姿は、きっとそれではないのですから。
来年また会えると人は言う。でもそ

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散文詩 まだ遠く

散文詩 まだ遠く

どんな季節にしても、夕方というものは気持ちを鷲掴みにしてくる。
忘れていた事をグッと空に浮かびあがらせて突きつけてくるかのように。
あの時漕いでいたブランコの、キコキコいう音までも。
歓声を上げた汗のほとばしりを。
もう二度と会えない人の皮膚の温度を。
やがてフェードアウトしてゆく切れ切れを、決して掴ませないように、大夕焼けという舞台装置に立ち上らせる。

人の夕暮れ。
ここを越えて、忘れ去る事が

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散文詩 相生(あいおい)

散文詩 相生(あいおい)

気がつけば口をつく繰り言は
先に旅立った父に向けられたものかどうなのか

そうかと思えば毎年実を付ける金柑に手を入れ
玄関先には母の育てる鉢植えがひとつまたひとつと増えていった

何が本当で何が嘘なのか
夫婦は互いの影を踏み
知ってか知らずか
やがてはそれも気にならぬ程
重なりあった影となる

あれから長い年月が流れ、母の娘は夫の影と
どれほど重なりあっているのだろうかとため息をつく
ガラリと窓を

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散文詩 宴のあと

散文詩 宴のあと

花の命は短いと申しますが、この土地で桜の木が今年の花を付けたのは、随分と前のように感じます。

青々とした立ち姿は、やがて老いた葉を落とすとは言え、ほんの少し背丈を伸ばし来年もまた咲き誇ろうと、上を上をと仰いでいる若者のようです。

いったいどちらが主役なのでしょうか。
それぞれがそれぞれに垣間見る物語がありそうです。
短い花と、ながらえる葉。
まるで宴の後のようなこの木の下で、わたしも自分の物語

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ひとひらを手に

ひとひらを手に

このnoteの中でも『さんごのみやこ』というものに魅せられた人は何人もいらっしゃるかと思います。その存在に。その解釈に。

さんごのみやこさんの『さよならの都』はこちらです。
https://note.mu/sango_no_miya_ko/n/n9b5edfd892ad

ここへ来て再び『さよならの都』『さんごのみやこ』について触れていらしたnoteを複数拝見して、わたしの中でもボワっとそのイメ

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色付く里に

色付く里に

自作の詩を朗読しました。
音、結構ちっちゃいです😎

観光地から少し外れた山あいの里。
お地蔵様に手を合わせる若くはない親子がいました。たっぷりと季節の風に包まれて、とりどりに色付いた木々の葉は、あと少しで土に還る支度をしているかのようです。髪に白いものが目立つようになった息子は何を。腰の曲がりかけた母は何を思い、手を合わせていたのでしょうか。

まるで 沁み入る山の色を映したかのように薄橙に染

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散文詩

散文詩

・・・・以下に、軽くですが思うことをこのような記述の練習をしたくて書いてみました。古典的な散文詩の形式にも近いと思います。

この記述方法は文体によって合う合わないがあると感じることができたので、良かったです☆彡

またパソコンならともかく、スマホだと横書きはやはり厳しいかな、と思い縦書きも作りました。
ちなみに横書きでsift改行は使わず、段落改行のみです。
縦書きの文章は、画像です。
これ以上

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