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記事一覧

時 秋の風に揺れて

時 秋の風に揺れて

秋の風にゆれて

身をあずけて揺れる秋桜の
少し光を通す花弁の裏
物思う白風に
薄紅の
薄く広がる翳りを見る
憂いは憂いのまま

陰をたずさえてこそ
花であれと

*白風 秋風の事。秋風と同じ意味の季語でもあります。
*季節を色で表す場合、春は青、夏は赤、秋は白、冬は黒とされるようです。
#詩 #創作

詩 夕顔の咲く頃

詩 夕顔の咲く頃

陽の落ちる少し前
空に浮かぶ白が
仄かに色付き
諦めの悪い熱気が
くちびるを噛んだ

ひとり物思いに沈む時

打ち水された路地裏をゆく
ひとりの人
藍染の浴衣に
ざっくり締めた帯
鬢にかかる後れ毛を
少し揺らして
振り返る人
微笑んだのかどうか

そこには開きかけた
白い夕顔の花

西陽はもう終わる
#詩 #創作

詩 白波の浜

詩 白波の浜

さらわれて立つ  
足元の儚さは
繰り返し繰り返し
寄せては返す
波に消える我が身の影絵
じっと見つめる先には
一点の答えすらない
ただ碧と青の境界を
染め落ちるしろがねの陽

寄せては返す罪と罰

この身がさらわれてさえゆけば
果たして
消えてなくなるものなのか
そんな事はあるまいと
遠く遠くから
入り込む懐かしい声

立ち尽くす
白波の浜
#詩 #創作

詩 神隠し

詩 神隠し

月影ならば
隠れる物陰のひとつも
見つかるものを
一天に広がり射抜くまたたきに
遠野の里の娘のごとく
囚われた時間の長さは
先細る伸びた黒髪
わずかなおののきに
身を屈める地の神々を諌める神話
それを前に
徒然の詩人は筆を置き
ただただ禁足から逃れるための
神を隠すための
しののめを待ち侘びる

*タイトルは本来の意味とは逆です。
#詩 #創作 #mymyth

詩 日、晴る

詩 日、晴る

梢でゆれる
目覚めたばかりの若葉

巣作りの場所を決める前の
いっときを遊ぶように
近くをいったりきたの雲雀が
それをつつく

遠く離れた水のせせらぎ
匂いを絡めた風の道
本当に
うららかとは
そこに居る者のこころが見聞きし
映り込んだ絵図に相違なく

春の雲雀

やがて
子のひとり立ちを見送るのは

日、晴る時



ひばりは雲雀と書きますが、「ひばり」の語源は「日晴る」との事。
良く晴れた空

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詩 花の吹雪く下で

詩 花の吹雪く下で

桜の枝先につくほどけた花びらに
去年の花を思い出す
風の揺らぎ
いくらか水を含んだ空気の重さ
霞の切れ切れからのぞく空の色
ヒダにしまった傷のいたわり
こうしてそれらを引き連れて
来る年来る年にやってくる
積み重なった去年の花

桜の枝先につくほどけた花びらに
思いもつかない次の年の花

しばし時が止まる

ひとひらふたひら
ほどけゆく桜の木の下で
わたしはいつかの

吹雪く花の中に身を預けた

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詩 雪の足跡

詩 雪の足跡

手の平で受けるでもなく
 ただ甲に触れる雪

さして冷たくもなく 
 気にするでもない雪

わたしの歩みは何処まで来て

何処に向かうとしても

振り返る霞の中の記憶のきれぎれは

やがてひと肌のぬくみに
 溶けてゆく淡雪

いくらか後ろ髪を引かれても

それは雪が残した
 微かな水滴に似て

忘れてゆくとは恐らく

そういう事



ここの雪柳はもう少し先のようです。

しっかり咲いてから花テ

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詩 因果な夜

詩 因果な夜

乾いた空
はだけた心を晒す星々の影
震えて膝を折る少女の嘘を
寝床を追われた夜の鳥が
笑う
おののきは
こわばる石の像

手に入れ損じた安堵は
もとより
拒んだものだと
往生を諦めた言葉が
罰を下す

因果な夜にひれ伏すまで
#詩 #創作

その一葉

その一葉



取り残された一葉が
風に吹かれて身を離す
この時に抗うわけでも
ましてや待つでもなく
ただ落ちる

小川の水面をゆらゆらと
役目を終える葉を抱え
水の流れのその先にあるものは
恐らく次の春

少し眩しい日の光に
手を翳したわたしは
運ばれるままの一葉を

見送った



短歌
#詩 #短歌 #創作

詩 ある言霊の行方

詩 ある言霊の行方

艶やかな黒のしじま
繰り返し地を這う吟詠
沈む事を拒絶した
いくつかの言霊が
枯れ枝の間をすり抜ける 

空を貫く星の影
凍える北辰は
眠らぬ詩人を諌める番人と化し
喉元を貫く

それでも
その意思を持たぬまま
野生と化した言霊を救うのは
緩んだ頬を伝う涙と
白くなってゆく月の姿
我に返った詩人は
途方に暮れて膝を折る

東雲の空
雁がゆく

・・・・・・・・・・・・・・

例えばですが、夜書いた

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詩 違和感

詩 違和感

季節の狭間
早いの遅いのと
挨拶代わりの愚かさに
季節を外れた花は
何を思う

水辺を歩く迷い鳥
枯野を彷徨う山の主
暦通りにはいかぬものを

ふと向けられた
違和の視線に気付いたのか
花は
花は粛々と
下を向いた

蕾をつけながら、綺麗に咲いていました。10月上旬くらいまでとされる芙蓉です。
そして今、我が家の沈丁花の花木に一箇所蕾を発見。
でも、そんな事があるのも自然な事だと思ったりします。

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詩 もみじ

詩 もみじ

「秋の夕陽に照る山もみじ」

夕陽に照り映える山々を
白くか細い髪の背中越しに眺める
目を凝らせどもかすむ頂
峠の景色は何処へ行ったか
歩むほどに
静まるものを目の奥に流して
やがて散る彩りは
路傍に刻まれる時の影
幾分小さくなったその背中を
いたわるように進める歩み
夕陽に照り映える山の木々

「濃いも薄いも数ある中に」

最後のひと葉を
見送るまでは



「紅葉」の一節を二箇所で引用してい

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詩 浮き雲よ遠く遠くへ

詩 浮き雲よ遠く遠くへ

いつのまにか
薄く伸びた雲は
まるで綿菓子の最後のひと巻き
たおやかな風は
熱と匂いのある景色を忘れ去る

わたしの歩く道が途切れるように
なにかと空を見上げる癖は
いつついたのだろうか

色付く前の落葉樹は
移ろいゆくものの躊躇いを
見逃す懐
ならば教えて欲しい
後ろに置いた荷物を
再び背負うか
置き去りにするか
この身はどちらを許すのか

今も耳に残る季節の残響
浮き雲の遠く遠くへ
ひぐらしよ

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詩 雨だれを数える日々に

詩 雨だれを数える日々に

野辺へと向かう身に施す
ひとさしの紅
見送る側を慰めるとも言う
引かれる色は無念の赤

掃き出しの障子を開ける
しっぽりと
濡れたブルーグレーの空の下
仮のお宿も見つからないか
ちいさな雀が
木々の間を行ったり来たり

単衣の合わせを固く閉じて
押し留めた情の絡みは
どこまで待っても無縁仏

軒下の紫陽花が揺れる
わたしは雨だれをひとつ
またひとつと数えた



前回の句会に寄せた句に書いた詩な

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