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詩 浮き雲よ遠く遠くへ
いつのまにか
薄く伸びた雲は
まるで綿菓子の最後のひと巻き
たおやかな風は
熱と匂いのある景色を忘れ去る
わたしの歩く道が途切れるように
なにかと空を見上げる癖は
いつついたのだろうか
色付く前の落葉樹は
移ろいゆくものの躊躇いを
見逃す懐
ならば教えて欲しい
後ろに置いた荷物を
再び背負うか
置き去りにするか
この身はどちらを許すのか
今も耳に残る季節の残響
浮き雲の遠く遠くへ
ひぐらしよ
詩 雨だれを数える日々に
野辺へと向かう身に施す
ひとさしの紅
見送る側を慰めるとも言う
引かれる色は無念の赤
掃き出しの障子を開ける
しっぽりと
濡れたブルーグレーの空の下
仮のお宿も見つからないか
ちいさな雀が
木々の間を行ったり来たり
単衣の合わせを固く閉じて
押し留めた情の絡みは
どこまで待っても無縁仏
軒下の紫陽花が揺れる
わたしは雨だれをひとつ
またひとつと数えた
*
前回の句会に寄せた句に書いた詩な