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散文詩 相生(あいおい)

気がつけば口をつく繰り言は
先に旅立った父に向けられたものかどうなのか

そうかと思えば毎年実を付ける金柑に手を入れ
玄関先には母の育てる鉢植えがひとつまたひとつと増えていった

何が本当で何が嘘なのか
夫婦は互いの影を踏み
知ってか知らずか
やがてはそれも気にならぬ程
重なりあった影となる

あれから長い年月が流れ、母の娘は夫の影と
どれほど重なりあっているのだろうかとため息をつく
ガラリと窓をあけると、雨降りの軒下でまだ早い風鈴がかすかに風を受けていた

ちりんからりん


寄り添うて目立つ白髪も高砂の
松にならえばまだ道半ば



*最後の部分は、短歌にしてみました。
 
 高砂や この浦舟に 帆を上げて
 能作品であり謡曲は祝言でも有名な「高砂」
 この高砂の松は相生の松とも呼ばれます。

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