散文詩 宴のあと
花の命は短いと申しますが、この土地で桜の木が今年の花を付けたのは、随分と前のように感じます。
青々とした立ち姿は、やがて老いた葉を落とすとは言え、ほんの少し背丈を伸ばし来年もまた咲き誇ろうと、上を上をと仰いでいる若者のようです。
いったいどちらが主役なのでしょうか。
それぞれがそれぞれに垣間見る物語がありそうです。
短い花と、ながらえる葉。
まるで宴の後のようなこの木の下で、わたしも自分の物語を思い出したくなりましたが、やめておいた方が良さそうですね。
それよりもそよと薫る初夏の風に、気持ち良さそうに身を委ねている桜葉を、ただ眺めていることにします。
それにしても思い返せば、毎年毎年とは言え花吹雪のそこはかとない哀愁といったら。
風に飛ばされ掌にとどまってくれることもなく、指の隙間からはらはらと土に落ちて尚、色すら留めているのですから。
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