いつも笑顔をくれる店員さんへ
To. いつも笑顔をくれる店員さん
こんにちは。
少し前、あなたがいるお店に伺いました。
お会計を済ませ、丁寧に接客をしてくださったあなたに、
「ありがとうございます」
と声をかけましたが、いつもなら
「ありがとうございますっ」
と笑顔で返してくれるあなたが、今日はわたしの目を見ず、
一言も言わずに、次のお客さんの接客の対応をしてらっしゃいました。
まるで機械のように。
私はあなたを責めたくてこれを書いているわけではありません。
ただ、「ごめんなさい」と伝えたいです。
こんな時に、何もできなくて本当にごめんなさい。
今、全世界が警戒するほどのコロナウイルスの影響をあなたも受けていると思います。
もしかしたら、あなたのお店も休業に、もしかしたら閉店に追い込まれているかもしれません。
逆に、家では連日コロナウイルスの怖さを訴えているメディアやSNSに囲まれ、気も休まらずますます恐怖を募らせながらも現場で働いてらっしゃるかもしれません。
「自分が今まで続けてきた仕事を、お店を辞めるしかないかもしれない。」
「勤務中に感染して、短期間で具合いが悪くなったらどうしよう。」
まさに自分の命がかかった状態で、おそらく前例のない最も過酷な状況下で、いつも笑顔でなんて、
いられるわけがないですよね。
私もつい半年ほど前まで飲食店とリラクゼーションサロンで勤務をしており、サービス業に従事していた身なのに、
恥ずかしながらいつも笑顔で挨拶をしてくださっていたあなたの様子の変化にまったく気づくことができませんでした。
でも、あなただけではありません。
今までいつも笑顔で郵便物を届けてくださる配達員さんも、
行き先までの電車の乗り換えを丁寧に教えてくださる駅員さんも、
家の近くのスーパーの笑顔がやわらかい店員さんも、
今はみなさん、目も合わず、少しうつむき加減でお話しをされるようになりました。
サービス業でお客さまや多くの人と接するには、
そこにいる誰よりも自分が一番元気じゃないと続けていけないと思っています。
常に見られている意識を持ち、気を張っていなければならないからです。
現場に立っているときはもちろん、
休憩室にいるときだって常にお客さまの対応が必要なんじゃないかと気配をうかがいながら、10分くらいでご飯をかきこむ。
ご飯を全部たべられたらまだマシな方で、食べている途中に勤務に戻るなど、
到底休めているとは言えない状態でまた勤務に戻ることもざらにある。
そして家に帰ってからやっと1日の疲れをなんとか取ろうとする、
なんてことが当たり前の毎日だと思います。
なのに、家に帰って休もうとしても、
気持ちが暗くなるニュースが流れてくる。シャットダウンしたいけど日々状況が変わるから見ないわけにもいかない。でも見るとしんどくなる。
こんな状態で回復できるわけがない。
しかも現場では感染のリスクに恐怖を感じながら、普段と違う悪質なクレームに心を削られる。
言われても全く嬉しくないかもしれませんが、
少し前に、こんな状況下でも現場に立ち続けていたあなたは、
たとえ笑顔がなくても、私にとってヒーローです。
過去、仕事が辛すぎて何も楽しいと思えなくなっていた時、
知り合いに会うのが億劫で近くに日用品を買いに行くことしかできなかった時、
現場で嫌な思いをして泣きながら帰った時、
それこそ自分のココロを守るために、出勤して機械のように接客をし職場と家を往復していた時、
いつもあなたのお店に立ち寄ると、私の目を見てにこっとしてくださいました。私がどんなにつくり笑いしかできないときでも。
自分の仕事に疲れつつ、その疲れを日常のどこかで癒し、元気をくださったのは皮肉にも同じような環境で頑張ってらっしゃるあなたでした。
「何十年も続けてきたお店を辞めるしかない」
「あと1ヶ月、頑張るしかない」
と、肩を落とし、こらえきれない涙をも落としながら話す人をテレビで見る度に、
何もできなくてもごめんなさい、と喪失感に駆られています。
何か手書きのカードをお渡ししたら元気が出るかな、
でも今は感染の話もあるし物を渡さない方がいいのかな、なんて考え、
せめていつかの恩返しができたらと、
目をしっかり見て『ありがとうございます』と自分から言おう
と思い、次の日あなたに会った時にはすでにあなたの顔に笑顔はありませんでした。
それでも、次あなたに会う時は、あなたがもし笑顔じゃなくてもまた必ず「ありがとうございます」とあなたの目を見て言います。
逆に、あなたに昔もらった元気を少しでもお返しできるように。
今はもうあなたのお店がないかもしれない。お店を続けるための全てのお金も、気力も、体力もないかもしれない。
お店が長期的に休業になってしまい、仕事がなく家で将来に不安を感じながら過ごしてらっしゃるかもしれない。
現場で疲弊して、家ではもう何もできない状態になっているかもしれない。
「こんな状態の自分は、自分が今までやってきたことは、価値があったのか。自分は必要があるのか。」
そんな風に感じてらっしゃるかもしれません。
あります。価値も、必要もあります。
少なくとも私にとって、私が今の元気な状態を取り戻すために、
あなたも、あなたが提供してくださるサービスも必要でした。
今までご自身が続けてこられてきたこと、今それがどんな姿になっていても誇りに感じていただきたいです。
毎日生きるのも必死な状態のあなたに、
「明日もどうか元気に過ごしてください」なんて無責任なことは言えません。
ただ、もしまたあなたが笑える日が来たら、あなたの笑顔を見たいです。
あなたのサービスを受けたいです。
何の力にもなれないかもしれませんが、今までお礼をできなかった分、
私の方から少しずつ笑顔のお裾分けをしていきたいと思います。
どうかご自身の身体を最優先に、気をつけてください。
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全てのサービス業の方に届きますように。
今まで頑張ってきて疲れてしまた方、
今なお最前線に立っている方の気持ちが少しでも報われますように。
影響力も何もなく、微力でこんな声がけをすることしか、お役に立てずごめんなさい。
少しでも多くの人に届きますように。
あなたはわたしにとって必要な人です。
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