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電子レンジ止めました

昨日一昨日で、最近始めた習慣や趣味について書かせていただいた。


オーストラリアに来てから新たに始めたものもあれば、逆に「止めた」ものもいくつか存在する。一つの事柄を止めることでその分だけ他に用いる時間を増やしたり、別のことを始める余裕ができたり。はたまた視点や見解が増えたり、といったメリットがあるように思う。



半年ほど前からだろうか、電子レンジを止めた。



大きな理由としては、これである。

イギリスのモンスターバンド、Radioheadが生み出した三枚目のアルバム、『OK Computer』

数年前は変な意味で「なんやこれは」と思っていた作品だが、最近ではつかみどころがなく不思議な印象を与えるところからしばしば拝聴している。

「Creep」や「High and Dry」などのしっとりしたロックも十八番のこのバンドだが、この『OK Computer』は「Paranoid Android」を始め、先鋭的でマニアックな曲が多いラインナップとなっている。この実験的アプローチは次のアルバム『Kid A』で更にゴリゴリの電子音を組み込んで飛躍を遂げるわけだが、それはまた別のお話。


そして電子レンジ止めることのきっかけになったのがこの作品に収録されている、「Fitter Happier」。

ピアノや金属音のようなものがバックで流れる中、機械的な音声が淡々と流れ続けるという何とも不気味な楽曲となっているのだが、肝心なのは何を話しているかである。

Fitter, happier, more productive
より健康に、幸せに、生産的に

Comfortable (not drinking too much)
快適に(酒を飲みすぎない)

Regular exercise at the gym (3 days a week)
ジムでの定期的な運動(一週間に3日)

Getting on better with your associate employee contemporaries
周囲の人たちと仲良くする

At ease
安らぎ

Eating well (no more microwave dinners and saturated fats)
よく食べる(レンジと飽和脂肪は控える)

ここでの詞では「いかにしてより幸福になりえるか」といったことが淡々と綴られているのだ。中には僕の現在の生活では難しいものも含まれていたが、特にこのレンジのクダリについてはより鮮明に聞こえてきた、ような気がしたので実践にまで踏み切ったわけである。

何たってトム・ヨークが言ってんだからやるべきだ。

1年以上もの間ベジタリアンとして過ごしたのも、同じくワールドクラスのバンド、RATMのザックの影響だったりするのだが、我ながらなんとも考えが安直なものである。


ということでレンジに触れない生活を続けているわけだが、正直全くといっていいほど困っていない。

レンジがなくともエアフライヤーなるものがあれば冷凍食品の温めにも困らんし、マイクロ波を用いない分遥かに健康的だそうだ。炊きすぎて冷凍した米についても、少し時間はかかるがフライパンで焼けば温め直すこともできる。日本に帰った時にどう感じるかは定かではないが、帰国までこの習慣は続けられそうだ。


なんて思っていたのだが…



どうやら僕は間違った解釈をしてしまっていたらしい。



先程引用した「Fitter Happier」の詞。より幸せに、健康になるための方法についてを述べたものというのは説明した通りだが、


この曲が真に意味しているところは、最後の数節の部分にあった。


Fitter, healthier and more productive
より健康的で、生産的であれ
A pig
In a cage
On antibiotics
薬漬けにされたブタ

最後に唐突に出てくる豚の文言。


なかなか抽象的な内容のため解釈は人それぞれなのだろうが、僕はこう捉える。



「幸せになる」ということやそれを促進する行為に執着しすぎれば

その思考に束縛され

やがて自由を失う=養豚所の豚と同じ



この詞、序盤こそ共感できるものが多いものの読み進めてみると


「銀行の残高を頻繁にチェックせよ」

「日曜日に自転車でスーパーへ行け」

「蛾を殺すな」


など若干意味不明だったりどこか歪な教訓が多くなってゆく。


考えが行き過ぎるとやがて人は狂っていく。


「Fitter Happer」の真意に気づき、ゾッとした数ヶ月前であった。



しかしながらレンジでチンしない日々は続く

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