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国際情勢:プーチン大統領について③

 プーチン大統領はここで、ウクライナの歴史について、長く語っている。(③は3,346字) 
 
 プーチン大統領
 「数十年の間、ポーランド人はこの地域の住民の「ポーランド化」に取り組みました。ポーランド語をこの地域に導入し、この住民は正確にはロシア人ではなく、縁辺部に住んでいるため「ウクライナ人」であるという考えを定着させようとしました。もともと「ウクライナ人」という言葉は、国家のはずれ、辺境に近いところに住んでいる人、あるいは国境業務に従事している人を意味していました。特定の民族を指していたわけではありません」

 President Putin
 “During decades the poles were engaged in polonization of this part of the population. they introduced their language there tried to entrench the idea that this population was not exactly Russians, that because they lived on the fringes, they were ukrainians originally, the word Ukrainian meant that the person was living on the outskirts of the state along the fringes or was engaged in a border patrol service. it didn't mean any particular ethnic group.”

 13世紀の話をしている。ポーランド・リトアニア大公国時代の話だ。

 なお動画の文字起こしだと、on the Frenchになっていたので、on the fringesと修正した。

 プーチン大統領
 「第一次世界大戦前、オーストリア参謀本部はウクライナ化の思想に依拠し、ウクライナ人とウクライナの思想を積極的に推進し始めました。その動機は明らかでした。第一次世界大戦直前、彼らは潜在的な敵を弱体化させ、国境地帯で有利な条件を確保したかったのです。そのため、ポーランドで生まれた、その領土に住む人々は本当のロシア人ではなく、むしろウクライナ人という特別な民族集団に属しているという考えが、オーストリア参謀本部によって広められ始めた」

 President Putin
 “Before World War I, Austrian general staff relied on the ideas of Ukrainianisation and started actively promoting the ideas of Ukraine and the Ukrainian. Their motive was obvious. Just before World War I, they wanted to weaken the potential enemy and secure themselves favorable conditions in the Border area, so the idea which had emerged in Poland that people residing in that territory were allegedly not really Russians, but rather belonged to a special ethnic group ukrainians started being propagated by the Austrian general staff.”

 プーチンは、ウクライナという国は、外国勢力によって、人工的に造られた国と言いたいようだ。

 これは21世紀のウクライナ人には、俄かに首肯しがたい主張かも知れない。

 だが1991年のソ連崩壊当時であれば、国として出発するにあたって、不安があった筈だ。

 これは当時の様子を、テレビで見ていたので、記憶がある。ウクライナの人々は不安そうだった。

 だが21世紀に入って、30年もすれば、自信もついたから、ロシアと戦っているのだろう。

 1991年当時であれば、ウクライナがロシアと戦うなんて、考えられなかった筈だ。

 プーチン大統領
 「1922年、ソビエト連邦が樹立されるとき、ボリシェヴィキはソビエト連邦の建設を開始し、それまで存在しなかったソビエト・ウクライナを樹立しました」

 President Putin
 “In 1922 when the USSR was being established the bolshevik started building the USSR and established the Soviet Ukraine which had never existed before.”

 動画の文字起こしで、the bikをthe bolshevikと修正。

 プーチン大統領
 「重要なのは、ソビエト国家の創始者レーニンがウクライナをそのように建国したということです。何十年もの間、ウクライナ・ソビエト共和国はソビエト連邦の一部として発展し、また未知の理由でボリシェヴィキはウクライナ化に取り組んでいました」

 President Putin
 “ What matters is that Lenin the founder of the Soviet state established Ukraine. That way for decades the Ukrainian Soviet Republic developed as part of the USSR and for unknown reasons again the Bolsheviks were engaged in Ukrainianisation. ”

 プーチン大統領
 「第二次世界大戦後、ウクライナは戦前にポーランドに属していた土地に加え、それまでハンガリーとルーマニアに属していた土地の一部(現在の西ウクライナ)を手に入れました。つまり、ルーマニアとハンガリーは自分たちの土地の一部を取り上げられ、ウクライナに与えられたのです。この意味で、私たちは、ウクライナがスターリンの意志で形作られた人工国家であると、断言するあらゆる理由があるわけです」

 President Putin
 “After the World War II, Ukraine received in addition to the lands that had belonged to Poland before the war part of the lands that had previously belonged to Hungary and Romania, so Romania and Hungary had some of their lands taken away and given to the Soviet Ukraine and they still remain part of Ukraine, so in this sense we have every reason to affirm that Ukraine is an artificial state that was shaped at Stalin's will.”

 動画の文字起こしで、at st’s willをat Stalin's willに修正。
 
 ここで、ウクライナは人工的な国家である、とプーチンは結論付けている。

 経緯としてはその通りかもしれないが、ウクライナ人はそう思っていないかもしれない。

 そうでもなければ、ウクライナもロシアと戦争しない。国家の意識はあると思われる。
 
 国家が形成されるまでの経緯がどうあれ、そこに住む現在の人々の意識も重要だ。

 この点、ウクライナの抵抗が激しい理由にもなり、「特別軍事作戦」の読み違いになった。

 戦争が短期間で終わらず、ロシアが戦争に梃摺るのは、ウクライナ人の意識の変化も大きい。
 
 当初、ロシアの「特別軍事作戦」は、三日程度で終わらせる予定だったのだろう。

 ゲラシモフ参謀総長が作戦を立案し、ショイグ国防相から提出され、プーチン大統領が承認した。

 今回の戦争の特徴は、インターネットで、戦況がリアルタイムで伝わる事だろう。

 詳細は分からなくても、全体の結果は伝わるので、考えれば、何が起きているのか分かる。

 話を聞いたその場では、想像するしかないが、後で詳細が伝わるので、答え合わせもできる。
 
 戦争に参加していないが、戦況をどう見るべきかという思考訓練にはなる。
 
 印象に残っているのが、戦争初日のアントノフ国際空港の戦いだ。2022/2/24の話だ。

 ロシア空挺軍が降下して、空港を占拠したが、作戦を読まれて、逆に殲滅された。

 ウクライナ側は、戦争初日に、ロシア軍がこの空港を押えに来ると読んでいたのだろう。

 敢えて一度取らせてから、包囲殲滅する。用意周到だ。これでスペツナズが全滅した。

 輸送機やヘリに乗ったまま、特殊部隊の隊員たちは、撃墜されて、皆死んだ。

 彼らは一度もその特殊技能を発揮する事なく、空港の近くに墜落して、爆散した。

 一体何のために厳しい訓練を経て、特殊部隊に入ったのか分からない。作戦上の失敗だ。

 個人の特殊技能など、作戦という大きな枠の中では、何の役にも立たない。犬死だ。

 彼らは浮かばれないだろう。不成仏霊だ。幽霊の特殊部隊が、夜な夜な空港を徘徊する。

 この場合、ウクライナが賢かったのか、ロシアが愚かだったのか分からない。

 だが戦争初日で、精鋭をこういう形で失う事は、この戦争全体の兆候を示していた。

 後にプリゴジンの乱が起きる遠因ともなる。クレムリンは戦争が下手だった。

 その後も、キエフに向かうロシア軍が、長い車列を作って、渋滞している様子が報道された。

 これはウクライナ軍がダムを破壊して、キエフに向かう道を塞いだためである

 日本ではこの長い車列を、今川義元の桶狭間だと揶揄していたが、織田信長は現れなかった。

 ダムを破壊して、キエフ進軍を阻止する作戦は、第二次世界大戦の独ソ戦争でもあった。

 今回攻守が逆転して、ウクライナ軍がダムを破壊して、ロシア軍を阻止している。

 前回はソ連軍がダムを破壊して、ナチス・ドイツによるキエフ進撃を阻止した。

 この場合も、ウクライナが賢かったのか、ロシアが愚かだったのか分からない。

 ただウクライナが用意周到だった。ロシア軍の初動は全て読まれていた。

 これは諜報機関の活動で、事前に情報を入手した訳ではないだろう。

 空港の件も、ダムの件も、よく考えてみれば、定石だし、戦史の前例もある。

 モスクワが作成した特別軍事作戦は、あまりに稚拙だったと言わざるを得ない。

 こんな作戦、素人でも読める。あえて乗って、罠を張ったウクライナ側が狡猾だ。

 クレムリンが、伝統的に、戦争に下手な事が、また一つ立証された。

 結局、いつも物量と国土の広さと気候を味方につけて、ロシアは戦争に勝つ。

 作戦勝ちなど一度もない。だからロシアの指導者がどれだけ下手でも、最終的には勝つ。

 プーチン大統領
 「ロシアとウクライナの基本的な関係は、現地の人口の90%以上が共通語であるロシア語を話す事だ
 
 President Putin
 “ The fundamentals of the relationship between Russia and Ukraine were in fact a common language more than 90% of the population there spoke Russian.
 
 ウクライナ人は、ウクライナ語を話すが、ロシア語も話せるという事だ。
 語彙的には、ウクライナ語は、ロシア語の語彙を62%持つと言う。
 文法的には、もっと近いのだろう。なおウクライナ語には、呼格がある。
呼格があるポーランド語の影響だろうか?ロシア語には、呼格はない。
 
 プーチンは、ここまでウクライナの歴史的経緯を語った。彼の主張は以下だ。
 19世紀以前は外国勢力によって、20世紀はソ連の権力によって、ウクライナは人工的に造られた。
 そしてウクライナの大半の人たちは、ロシア語を理解できるし、話せる。
 ウクライナは、ベラルーシ同様、ロシアの兄弟国である。

 


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