ミオール / Mícheál

ピアニスト。楽理・韻律・神学の交わる愛蘭詩歌へ

ミオール / Mícheál

ピアニスト。楽理・韻律・神学の交わる愛蘭詩歌へ

記事一覧

[書評] 若菜上

紫式部『源氏物語 34 若菜上』 長寿の祝いと幼い新妻が招く不均衡 33巻「藤裏葉」で光源氏は絶頂を迎えた。だが、巻の終りには朱雀院をめぐる〈ずれ〉が現れ、その後の波…

[書評]藤裏葉と〈ずれ〉

紫式部『源氏物語 33 藤のうら葉』 大団円(かと思いきや) 『源氏物語』をここまで読んできた読者からすると、やっと胸のつかえがおりた心地のする巻である。すっきりす…

[書評] はたらく=はたをらくに

「岩戸開き」第13号(ナチュラルスピリット、2024) 隔月刊の雑誌「岩戸開き」の冊子体を初めて読んだ。第13号(2024年7月・8月)である。 これまでは電子版でときどき読…

[書評] 光りは東方より

山根菊子『光りは東方より』(日本と世界社、1937) 日本に残る聖人の足跡を訪ね歩く 特異な来歴の書で、こうした形で読むのは初めてだ。 それについては後述することに…

Divine Intervention 【追記あり】

フォトジャーナリストの Evan Vucci が撮った写真が Time 誌の表紙になった(記事)。 トランプ候補が共和党大会(15 July 2024)に出てきたとき、司会者らの呼称は〈次期…

[書評] 神代到来

保江邦夫『神代到来』(海鳴社、2018) 完全調和と素領域との あわい 本書は2017-2018年頃の著者の周りで起きたことを系譜としてまとめたもの。ここで述べられる内容は、…

[書評] 祈りが護る國 日の本の防人がアラヒトガミを助く

保江邦夫『祈りが護る國 日の本の防人がアラヒトガミを助く』(明窓出版、2023) 「AIエンペラー」その後 および若きイエス 本書は、保江氏の〈祈りが護る國〉シリーズの…

[書評] 祈りが護る國 アラヒトガミの願いはひとつ

保江邦夫『祈りが護る國 アラヒトガミの願いはひとつ』(明窓出版、2022) 欧州最大級の原発をすぐに抑えたロシアの狙いとは 保江氏の〈祈りが護る國〉シリーズはこれま…

[書評] 医師が教える新型コロナワクチンの正体2

内海聡『医師が教える新型コロナワクチンの正体2 テレビが報じない史上最悪の薬害といまだに打ち続ける日本人』(ユサブル、2023) 騒動の3年間を検証し総括する体ながら鋭…

[書評] アメリカ帝国消滅後の世界

ベンジャミン・フルフォード『アメリカ帝国消滅後の世界』(秀和システム、2024) 2024年が後世の歴史書に分水嶺と刻まれるか否か フルフォード氏は世界の地政学的な分析を…

[書評] 菊次郎とさき

ビートたけし『菊次郎とさき』(Audible版 – 完全版、2018) 俳優 柄本佑の朗読が秀逸。活写される下町と家族 ビートたけしの自伝的小説を俳優 柄本佑が朗読したオーデ…

[書評] 著者朗読版のトットちゃん

黒柳徹子『窓ぎわのトットちゃん』(要約版、講談社、2021) 著者朗読版のトットちゃんがあったとは 著者の黒柳徹子さんが朗読した『窓ぎわのトットちゃん』(1981)があ…

[書評] 西森マリー氏の近著

(秀和システム、2024年4月10日刊) アメリカ在住者の視点で書かれた2023-24年の米国情勢 この本に出会ったきっかけの一つは著者近影だった。記憶にある著者の姿はこんな…

[書評] こゝろ

夏目漱石『こゝろ』(Audible版、パンローリング、2015) 秀逸な朗読 この声で聴けてよかった 佐々木 健の朗読は見事である。一度、この声で聴くと、『こゝろ』は、この…

[書評] 大日月地神示(後巻)

大日月地神示(後巻)(野草社、2018) 2014-17年に神人氏に降ろされた神一厘の壮大な仕組み またも縁ありて、本書を読むことができた。前巻と同じく、著者のすすめに従い…

[書評] 大日月地神示(前巻)

大日月地神示(前巻)(野草社、2018) 2006-16年に神人氏に降ろされた神示 縁ありて本書をよむことができた。ここで〈よむ〉とは音読すること。 本書前書きに音読するよ…

[書評] 若菜上

紫式部『源氏物語 34 若菜上』 長寿の祝いと幼い新妻が招く不均衡 33巻「藤裏葉」で光源氏は絶頂を迎えた。だが、巻の終りには朱雀院をめぐる〈ずれ〉が現れ、その後の波乱を予感させた。 その波乱が早速34巻「若菜上」で顕在化しはじめる。その引き金は、案の定、朱雀院である。 朱雀院は出家を決意するのだが、愛娘の女三宮の行く末が気がかり。出家後に弱ってきた朱雀院を源氏が見舞った機をとらえ、言葉は悪いが、朱雀院は女三宮を源氏に押しつけ、結婚を承諾させる。これが波紋の始まりとな

[書評]藤裏葉と〈ずれ〉

紫式部『源氏物語 33 藤のうら葉』 大団円(かと思いきや) 『源氏物語』をここまで読んできた読者からすると、やっと胸のつかえがおりた心地のする巻である。すっきりする。 第一部がここで終わる。光源氏はこの世の春を迎える。悶々としていた夕霧は晴れて雲居雁と結ばれるし、明石の姫は入内し、お世話役として母親の明石の君がついてゆく。六条院へは冷泉帝と朱雀院がそろって行幸する。 だが、物語はこのあと第二部、第三部と続く。光源氏の晩年といっても、40-52歳をえがく第二部、そして

[書評] はたらく=はたをらくに

「岩戸開き」第13号(ナチュラルスピリット、2024) 隔月刊の雑誌「岩戸開き」の冊子体を初めて読んだ。第13号(2024年7月・8月)である。 これまでは電子版でときどき読んでいたが、紙の本を手に取ると印象が変わる。 まず、大きい。B5判だ(25.8 x 18.3 x 0.7 cm)。全編カラー。紙質もよく、手に取った誌面の感じはいい。 ただ、頁数の割に高いという印象は正直ある(全128頁)。この価格の単行本なら当然期待するだけの質が果たしてあるか。そこが勝負だろう

[書評] 光りは東方より

山根菊子『光りは東方より』(日本と世界社、1937) 日本に残る聖人の足跡を訪ね歩く 特異な来歴の書で、こうした形で読むのは初めてだ。 それについては後述することにして、本書は神学の徒が、日本に残る4聖人の足跡を丁寧にたどり、古文献等も参照しつつ、現地の人の声に耳を傾け、考証を重ねた思索の書。 この4聖人については、一般には日本に来歴があるなどとは全く考えられてもいないが、本書の熱誠にふれるとき、いつしか読者も著者の勢いに巻込まれそうな迫力がある。 本書の結論への賛

Divine Intervention 【追記あり】

フォトジャーナリストの Evan Vucci が撮った写真が Time 誌の表紙になった(記事)。 トランプ候補が共和党大会(15 July 2024)に出てきたとき、司会者らの呼称は〈次期〉('the next')を冠してはいるが、名詞句の主体は President of the United States だった(PBS Newshour)。この呼称は意図的かもしれない。同句を聴くときに人が直後に予想する 'of America' がなかった。 * 信仰心のある人が

[書評] 神代到来

保江邦夫『神代到来』(海鳴社、2018) 完全調和と素領域との あわい 本書は2017-2018年頃の著者の周りで起きたことを系譜としてまとめたもの。ここで述べられる内容は、他の形(著作、講演など)で触れたことがあるという読者も少なくないと思われるが、本書で初めて知るような詳細も含まれる点では貴重な本である。 ただし、系譜の骨子を示すことに主眼が置かれているためか、個別の具体的記述は必ずしも尽くされてはおらず、要旨にとどまるところもある。それでも、相当くわしいところまで

[書評] 祈りが護る國 日の本の防人がアラヒトガミを助く

保江邦夫『祈りが護る國 日の本の防人がアラヒトガミを助く』(明窓出版、2023) 「AIエンペラー」その後 および若きイエス 本書は、保江氏の〈祈りが護る國〉シリーズの3冊めだ。第1の『祈りが護る國 アラヒトガミの霊力をふたたび』(2019)、第2の『祈りが護る國 アラヒトガミの願いはひとつ』(2022)に続く本。 本シリーズを読み続けている読者はどのように本シリーズを受止めているだろうか。 おそらくだが、評者のように、第1巻で「AIエンペラー」というとんでもないもの

[書評] 祈りが護る國 アラヒトガミの願いはひとつ

保江邦夫『祈りが護る國 アラヒトガミの願いはひとつ』(明窓出版、2022) 欧州最大級の原発をすぐに抑えたロシアの狙いとは 保江氏の〈祈りが護る國〉シリーズはこれまでに3冊出ている。 ① 祈りが護る國 アラヒトガミの霊力をふたたび(2019) ② 祈りが護る國 アラヒトガミの願いはひとつ(2022) ③ 祈りが護る國 日の本の防人がアラヒトガミを助く(2023) 本書は②に当たる。いづれも、天皇の負担を軽減し、日本を護る意図のもとに書かれている。 * 前著は昭和天

[書評] 医師が教える新型コロナワクチンの正体2

内海聡『医師が教える新型コロナワクチンの正体2 テレビが報じない史上最悪の薬害といまだに打ち続ける日本人』(ユサブル、2023) 騒動の3年間を検証し総括する体ながら鋭い切込みが仕掛けてある 内海氏の本テーマのシリーズは全部で2冊ある。 ① 医師が教える新型コロナワクチンの正体(2021) ② 医師が教える新型コロナワクチンの正体2(2023) 本書でシリーズは完結したと思われる。 ① は刊行時の最新の知見を盛込んでいたが、② は最新情報でなく、これまでの検証かつま

[書評] アメリカ帝国消滅後の世界

ベンジャミン・フルフォード『アメリカ帝国消滅後の世界』(秀和システム、2024) 2024年が後世の歴史書に分水嶺と刻まれるか否か フルフォード氏は世界の地政学的な分析を日々おこない、世界中に読者がいる。その2024年5月時点の最新の情勢分析を収めたのが本書だ。本書の伝える通りだとすると、本当に2024年は〈あの時、人類の未来が変わった〉と後世の歴史教科書に記される年になるかもしれない。 5つの章からなる。 ① 米欧の権力者「失脚ドミノ」 ② ウクライナ戦争、イスラエ

[書評] 菊次郎とさき

ビートたけし『菊次郎とさき』(Audible版 – 完全版、2018) 俳優 柄本佑の朗読が秀逸。活写される下町と家族 ビートたけしの自伝的小説を俳優 柄本佑が朗読したオーディブル版。 いったい柄本佑がどのように下町言葉を読むのかに興味があって聴いたが、見事だ。この生き生きした語りが作品を何倍もおもしろくしている。 この柄本の読む〈バカヤロー、コノヤロー〉は、実際に耳にしないと、どういう感じか分らない。たけしの一家およびその周りでは、接頭語のように、あるいは口癖のよう

[書評] 著者朗読版のトットちゃん

黒柳徹子『窓ぎわのトットちゃん』(要約版、講談社、2021) 著者朗読版のトットちゃんがあったとは 著者の黒柳徹子さんが朗読した『窓ぎわのトットちゃん』(1981)があったとは。 ただし、要約版である。人気の「もどしとけよ」は入っていない。 * 著者が朗読したオーディブル作品というのは、狭い経験しかないが、まず外れがない。すこぶる素晴らしい作品が多い。 プロの朗読者がいかに上手だろうと、いや、最近はAIナレーションのオーディブルも出ているくらいだが、著者の朗読には

[書評] 西森マリー氏の近著

(秀和システム、2024年4月10日刊) アメリカ在住者の視点で書かれた2023-24年の米国情勢 この本に出会ったきっかけの一つは著者近影だった。記憶にある著者の姿はこんなではなかった。 著者の2023年の著書カバーの写真で、あれっ、こんな方だったっけと思ったのが、きっかけだ。ムスリムの女性として写っている。カイロ大学へ留学したとの話にも興味を惹かれた。 * 本書はアメリカ在住者の視点で書かれているとのこと。これは貴重だ。 と思って読みはじめると、早速、アメリカ

[書評] こゝろ

夏目漱石『こゝろ』(Audible版、パンローリング、2015) 秀逸な朗読 この声で聴けてよかった 佐々木 健の朗読は見事である。一度、この声で聴くと、『こゝろ』は、この声で蘇る気がするくらい印象的。 『こゝろ』は日本で一番売れた作品とのこと。2000万部の数字を聞くと驚くが、日本人の6人に1人が読んだ計算にしては、作品の議論をあまり聞いた記憶がない。むしろ、日本で歴代発行部数が二位の小説『ノルウェイの森』(1000万部)のほうが、よほど話題になっているのを耳にしたこ

[書評] 大日月地神示(後巻)

大日月地神示(後巻)(野草社、2018) 2014-17年に神人氏に降ろされた神一厘の壮大な仕組み またも縁ありて、本書を読むことができた。前巻と同じく、著者のすすめに従い声に出して読んだのだが、後巻は前巻(245頁)に比して大幅にページ数が多い(349頁)だけでなく、内容においてもずしりと重い。 どう重いのか、簡単に説明できないくらい、内容が壮大で深い。かと言って、読後感が重々しいかというとそんなことはなく、かえって身も心も軽くなったように感じる。すがすがしい氣に充ち

[書評] 大日月地神示(前巻)

大日月地神示(前巻)(野草社、2018) 2006-16年に神人氏に降ろされた神示 縁ありて本書をよむことができた。ここで〈よむ〉とは音読すること。 本書前書きに音読するようにと書かれている。音読するわけは、人と霊との両方に聞かせるためであると思われる。書かれた文章は、読者以外に霊的な存在へも向けられている。 本書をよんだ結果は〈御魂相応〉に表に顕れ始めるとのこと。したがって、受止める存在の魂に応じて結果が顕れ始める。 * 巻頭の著者説明によれば、本書は〈かつて岡