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[書評] 著者朗読版のトットちゃん

黒柳徹子『窓ぎわのトットちゃん』(要約版、講談社、2021)

著者朗読版のトットちゃんがあったとは

著者の黒柳徹子さんが朗読した『窓ぎわのトットちゃん』(1981)があったとは。

ただし、要約版である。人気の「もどしとけよ」は入っていない。

著者が朗読したオーディブル作品というのは、狭い経験しかないが、まず外れがない。すこぶる素晴らしい作品が多い。

プロの朗読者がいかに上手だろうと、いや、最近はAIナレーションのオーディブルも出ているくらいだが、著者の朗読には叶わない。

いい例が Elaine Pagels の The Gospel of Thomas: A New Vision of the Message of Jesus (2006) だ。これは本はなく、朗読版しかないが。

本書は日本国内での発行部数が800万部、外国語への翻訳の世界発行部数が2500万部という。ひとりの著者による自叙伝としてギネス世界記録を保持している(ギネス世界記録のサイトには 'The most copies published for an autobiographical memoir by a single author is Totto-chan: The Little Girl at the Window created by Tetsuko Kuroyanagi (Japan) with 25,113,862 copies printed and circulated by KODANSHA LTD. (Japan) from March 1981 to September 2023.' と記す)。

著者は翻訳を『長くつ下のピッピ』のリンドグレーンと、『飛ぶ教室』のケストナーに送り、それぞれからもらった手紙を宝物にしている。

老若男女を問わず、本書は、あることが信じられないような初等教育がかつて戦前の日本にあったということを、世界中に伝えることになった。その教育法は、スイスのエミール・ジャック=ダルクローズからリトミックを学んだ小林宗作・校長によるものだった。

型破りといえば型破りだが、こんな学校なら行ってみたいと思う。

そんな学校生活の喜びや楽しさが、戦争で終わってしまったのは残念だった。

しかし、今でも、発想力や想像力を活かせば、このような学校や教育は可能なのではないかと思える。

著者の迫真の朗読に泣き笑いしながら、あっという間に2時間半の作品を聴き終えた。すばらしい本だ。

#書評 #黒柳徹子 #小林宗作


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