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☆本#230 不思議とリアル「一人称単数」村上春樹著を読んで

著者と思われる人物の、10代の頃のガールフレンドとその兄と偶然会った話や、醜いけど魅力的な女性との話や、温泉旅館で会った言葉を話す品川出身(?)の猿の話、書き下ろしが表題の、8作品の短編集。

それぞれそれなりによかったけど、品川猿と表題が印象的。

前者は、言葉を話す猿という設定で、著者の独特の不思議な世界観が出ていて、最後にそもそも品川猿はそこにいたのか?的流れもよかった。
著者は、5年ほど前に群馬の小さな旅館に泊まる。そこの浴場で、年老いた猿が働いていて話しかけられる。興味を持ち、夜話ができないか声をかける。で、実際注文した瓶ビール2本をもって猿は来るんだけど、それで、もともと品川にいて人間に言葉を教わったことも話すんだけど、翌朝主人公がビール代を精算しようとすると、そんなものは販売していない、と言われる。

後者は、著者ほど有名で顔が知られていると起こりそうな出来事。
主人公はある日普段着ないスーツを着る。妻は不在だったので外出し、普段行かないバーであと20ページの本を読んでいると、店が混んできて2つは慣れた椅子に座っていたアラフィフ女性がいつの間にか横にいて、話しかけられる。これが、どうやら言いがかり、普段していない服装について。女性のほうは彼を知っているようだけど。会話がかみ合わず、不愉快なまま主人公は店を出る。

短編集って、多くは最初の方にタイトルが載っているけど、この本ではそのページが最後に来る。この順番で読んでほしいってことかな。

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