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☆本#187 研究者と実験「密林の夢 state of wonder」アン・パチェット著を読んで

ついに読み終わった。さすがに500ページ以上で濃い内容なので時間がかかった。
巻末の訳者あとがきを読んで、あ〜これは面白いやつだ、とわかり、読み終わって、いろいろ想像・考えさせるとこもこの作品のすごいところだ。

主人公はアラフォーで製薬会社の研究員。恋人はかなり歳の離れた上司。ある日、同僚が南米の研究所で死亡したと知り、彼の妻の希望や流れで現地へ赴く。そこには大学で研修生だった頃の教授がいて、そこでは高齢でも出産できることを調査研究している。

結局同僚は死んでおらず、ある部族のところから逃げ出せずにいたんだけど、現地に行ってからその同僚と会うまでが長い。全体の8~9割?正直、途中で飽きた…。主人公がマラリアの予防薬で悪夢を見る子ども時代からのくだりや、携帯を空港で機内預けにしちゃうどんくさいところとかで...。

ショッキングだったのは主人公がなぜ産婦人科医にならず、研究員になった理由と、72歳の教授の妊娠。

前者は研修医のころ、緊急で帝王切開をした際、子供の顔の向きがこちらだったことに気付かず、額から目、頬をメスで切った…。目は失明。アメリカは無痛分娩が多く、日本は自然分娩を推奨してるのがなんかわかった。教授曰く、失明したのは運が悪かったけど、頬を切る程度ならあるとか...。まじか。こういう経験で医者になることを主人公は選択しなかった。

後者は、教授が心底から研究者で、仮説を検証し、細部まで調べるため、自身がある樹の皮を使い妊娠を試みる。で、主人公の手を借り出産し、子供は冷凍保存してもらう。←これ結構衝撃。子供は両足がくっついた症状で稀な人魚症候群だった。ある意味自分の命をかけて調査対象を得るって半端ない。研究者の世界では当たり前なのかもしれないけど。
で、研究のため、主人公に戻るよう言う。きっと戻ってくるだろうと。

主人公は、トラウマだった出産手術を乗り越え、南米での体験を経て変わる。そして、新たな分岐点に立つ、印象。

この本がアメリカで出版されたのは2011年。
数年前のアメリカの記事で、高齢女性の卵子の部分を若い女性の卵子に入れる(?)ことで、高齢女性でも自分の遺伝子を引き継いだ子どもを持てる研究がされていることを知った。おそらく近い将来にはこれも選択肢にひとつになるのではないかと思う。

インドの高齢女性が体外受精で出産してニュースになっていたけど、後日談で、夫も高齢だったので老衰で亡くなり、一人で育てるのに苦労しているようだった。
選択肢が増えることはいいことだと思うけど、タイミングや環境も大事。

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