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☆本#318-322 「しない。」「サイレント・ブレス」「殺人出産」「さよならドビュッシー前奏曲」「筒井康隆かく語りき」を読んで

「しない。」群ようこ著のエッセイ。
著者が積極的にしないことが書かれていて、ネットショップでの被害や水回りの故障等、身近なものから遠いものまで幅広い。なるほどと思う話もあり。

「サイレント・ブレス」南杏子著。
医大で仕事をばりばりしていた30代女性医師が在宅で最期を迎える患者専用クリニックに行くよう言われ、左遷された、と本人は思っていたら、そうではなく。
クリニックで担当する患者はもれなく亡くなり、余命数か月の人に奇跡が訪れることもなく、患者をめぐって家族間でありがちな問題が起き、でも、重すぎることはなく。悩みつつ、主人公が医者として成長していく。

「殺人出産」村田沙耶香著
短編4作。全体的にほかの小説と次元が違う設定。筒井康隆のいうSF系の文芸という感じ。

表題の設定、10人産んだらひとり殺せる、出産は男女でできる、というのはなかなか新しい。会話文は若干似通っている。
どの作品も、マイノリティー的考えが主流というか、現在と逆な場合が描かれている。平穏な家庭を持つために夫婦でセックスしない(外で相手を持つ)とかは、現実でいうオープンマリッジ的。3Pの新定義とか、人が自然死しなくなり、ってのは新しい設定。

著者の世代(40代)は、バブル崩壊の影響で就職難だったのか、同級生で大学行ってから就職じゃなく、結婚して主婦になりたい人が割と多かったようで、著者は主婦になりたいのに、なぜ大学へ行くのだ、と思ったらしいと、何かで読んだ。
著者の書く男女は同等で、どこか中性的で、感情的でなく理性的。

「筒井康隆かく語りき」筒井康隆の対談集
著者曰く、SFはエンターテインメントにも文芸にもなる。
対談相手は、丸谷才一、井上ひさし、川上弘美等。
1997年に出た本だからか、差別の話等はなかなかブラックユーモアで、破滅に対してワクワクする等、作家との対談は奥深い。

「さよならドビュッシー前奏曲」中山七里著
要介護探偵の事件簿。車いすの高齢男性が主人公。資産家なので車いすの競技を開催したり、銀行強盗の若者の説教をしたり。正義感が強く、人情が厚く、癇癪もち。ただ、ラストはその後の火事につながるのでちょっとしんみり。
著者は、専門家に聞くことなく、リサーチのみで書くようだけど、専門的な説明が、ほんとに専門家のようだと今回も思った。

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