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☆本#214 突然は蓄積の爆発?「鍵のない夢を見る」辻村深月著を読んで

この著者の本はこれまえ読む機会がなかった。
読んでみて、この作品が直木賞を獲ったのがわかる気がした。人の深淵は描いているけど、読後感が悪くない。いたたまれないほどの救い感のなさは苦手だけど、そういうのはない。
メンタルやられてそうでも、ギリセーフな表現。

これは短編集で、表題の作品はない。なぜだろう...。

印象的だったのは、「芹葉大学の夢と殺人」。
主人公の女子大生は顔の整った同級の彼氏ができるけど、彼には夢があり、卒業後別れる。彼女にも夢はあるけど、母親のアドバイスで教師をしながらトライすることにする。
別れた後も二人の仲は続くも、彼のもとに向かう旅費やホテル代等お金を出すのは彼女。彼は卒業できず、医学部にも合格しない。
彼が行った殺人で逃亡中二人は会うも、身勝手な言い草で彼はまた彼女から離れようとする。蚊帳の外に置かれることに耐えられなくなった彼女が、想定外の行動をとる。

衝動的でも、命がけの愛、といえるかもしれない。

そういうとこ、深い。

ほかに、主婦がノイローゼ気味で、ベビーカーを玄関の前に置いたままなことを忘れて、お店で大ごとになり、そのことを隠蔽しようとするシーンで、子どもが犠牲にならなくてよかった...。
ここで方向性が違ってたら、賞獲ってなかったんじゃ、って気もする。その場合、さすがに後味が悪すぎて...。

この著者の作品は映画化されているのもあるけど、どれか読んでみたい気になった。

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