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☆本#213 女ともだちと料理「Butter」柚木麻子著を読んで

面白くて一気読み。読後感もよかった。

作者インタビュー記事リンク

主人公は、アラサーの週刊誌の記者。正社員で唯一の女性。仕事も頑張っているし、同僚の恋人もいて、学生時代からの親友とも交流があり、客観的に見ると充実している。

実在の数年前死刑囚になった女性をモデルとしたカジマナに、なんとか話を聞き出そうとしている。
拘置所に通い、彼女がいうことに従った食事をしたり、交換条件で聞かれると自分の過去を話したりする。説得してなんとか心をつかむも、最後は裏切られ、記事はうそだったといわれ、他社から本が出て、しばらく表に出れなくなる。

恋人との別れもあるけど、こっちは愛情がないことに気付いただけ。カジマナとのやりとりはまるで恋愛の駆け引きのようで、すっかり熱が冷めて離れようとすると相手が追ってきた。

裏切りによる待遇にもめげず、現状にとどまるためローンを組んでオーブン付きの家を買い、最後はカジマナが作ることのできなかった七面鳥の丸焼きを作り、母親、親友夫婦、同僚たちに振舞って終わる。
このシーンを読んでて、主人公のようにみんなが集まれる家を持つってよさそうとシンプルに思った。

途中、語り手が親友になり、6キロも太ってカジマナに影響を受けてる親友を心配し、ある行動を起こすも、その背景には彼女夫婦の問題があったりする。
ほかに、情報を提供してもらっていた通信社の男性の私生活を知ってしまったり、登場人物が多くても、それぞれの特徴が上手に描写されているので読みやすかった。

主人公はカジマナに言われ、バターを味わうことから食との関わりはじまる。読んでて良質のバターを味わってみたくなった。それで、彼女は最終的に10キロ太るも、精神的にやられることはなく、自分で考え、判断し、ダイエットはしない。

ナイルバーチと違って、主人公がメンタル弱くなくて、荒波や迷いに立ち向かえて、そこもよかった。

著者は何度か直木賞候補になっている。とれない理由で考えられるのは、ドロドロさがない点とか、審査員の好みじゃないからか…。

前者は、そこがむしろいいと思うのだけど…。後者は、たぶん一番大きいような気がする。
以前、違う作品の受賞作発表後の審査員のコメントを読んだことあるけど、結構主観的というか好きかどうかが大きかったような。


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