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世阿弥『風姿花伝』を読むための予備知識

の予備知識 編。


伝書一覧

Wikipedia.jp による「世阿弥の伝書一覧」でも分かるけれど、情報を追加しています。典拠は『新編 日本古典文学全集88・連歌論集 能楽論集 俳論集』(小学館)、および『能・狂言必携』(学燈社)です。

  1. 風姿花伝(ふうしかでん)

  2. 花習内抜書(かしゆのうちぬきがき)

    • 奥書の世阿弥自筆本が現存。『花鏡』の前身である『花習』からの一か条の抜書。

  3. 音曲口伝(おんきょくくでん)

    • 奥書。六か条からなる音曲関係の論。

  4. 花鏡(かきょう)

    • 奥書。ただし、応永一〇年頃以降の約二〇年間の世阿弥の著述の集成である。応永二五年には題目六か条、事書八か条の形で『花習』と題されていた。増補が行われて『花鏡』と改名されたのは応永二八年以前。子の元雅に相伝。

  5. 至花道(しかどう)

    • 奥書。内容的には『花鏡』よりも後年の著述。「二曲三体事」「無主風事」「蘭位事」「皮肉骨事」「体用事」の五か条の習道体系論と跋文からなる。

  6. 二曲三体人形図(にんぎょうず)

    • 『至花道』第一条に記された二曲三体論を絵図入りで詳述した書。

  7. 三道(さんどう)

    • 「能作書」とも。奥書。子の元能に相伝。一三か条からなる能の作り方に関する著述。

  8. 曲付次第(ふしづけしだい)

    • 奥書がなく、成立年次は不明であるが、『音曲ロ伝』よりは後年、『風曲集』よりは先行する内容で、応永二九年(一四二二)前後の著述らしい。八か条からなる能の節付に関する流。

  9. 風曲集(ふうぎょくしゅう)

    • 奥書がなく、成立年次は不明であるが、『曲付次第』よりは後年で、応永三〇年(一四二三)の『三道』と同じ頃の著述。四か条からなる音曲論書。

  10. 遊楽習道風見(ゆうがくしゅどうふうけん)

    • 奥書がなく成立年次は不明ながら、『三道』と同じ頃の著述。四か条からなる習道論書。

  11. 五位(ごい)

    • 奥書はないが『遊楽習道風見』と同時期の著述らしい。擬漢文体の小篇。水準以上の能の芸風を五種に分けて簡潔に説明する。

  12. 九位(きゅうい)

    • 奥書はないが、原形は『六義』以前の成立。現存本は世阿弥自身による後年の改訂本。能の芸位を九段階に分け、簡潔な解説を加えた前半と、九位による習道論を展開する後半とからなる。

  13. 六義(りくぎ)

    • 応永三五年(一四二八)奥書。金春禅竹に相伝。和歌の六義を九位前に結びっけた短篇の論書。

  14. 拾玉得花(しゅうぎょくとつか)

    • 奥書。金春禅竹に相伝。問答体の六か条からなる。『花伝』『花鏡』『至花道』などの前著に説いた問題を視点を変えて再論したもの。

  15. 五音(ごおん)

    • 奥書はないが、永享六年(一四三四)前の成立で、『五音曲条々』と同じ頃の著述。二巻からなり、上巻は抄写本のみ伝存。五音説に基づく音曲伝書で、各音曲ごとに曲趣を説明し、例曲を掲出する。

  16. 五音曲(ごおんぎょく)条々

    • 奥書がなく成立年次は不明であるが、『曲付次第』『風曲集』よりは後年で、『五音』と同じく永享初年の著述。能の音曲の曲趣を五種に分け、代表曲をあげるなどして解説したもの。

  17. 習道書(しゅどうしょ)

    • 永享二年(一四三〇) 奥書。観世座の座衆一同に読ませるための著述。能を演じる際の各役の心得を説く。

  18. 夢跡一紙(むせきいっし)

    • 永享四年(一四三二)奥書。子の元雅が同年八月に伊勢の津で早世したのを追悼する短文。

  19. 却来華(きゃくらいか)

    • 能楽論書ではない。永享五年(一四三三)奥書。元雅だけに口伝してあった「却来風」が、元雅早世のため後代に伝わらなくなることを恐れて記し置いたものとする。

  20. 金島書(きんとうしょ)

    • 永享八年(一四三六) 奥書。能楽論書ではなく、佐渡配流中に作った八篇の謡物。配流の日時や配所での動静が知られるなど伝記史料として貴重。

  21. 世子六十以後申楽談儀(ぜしろくじゅういごさるがくだんぎ)

    • 能楽論書ではない。奥書。世阿弥の芸談を子の元能が編集したもの。世阿弥時代の能および他の諸芸能の実態を具体的に知りうる史料として貴重。

  22. 金春こんぱる大夫たいふ宛書状(あてしょじょう)

    • 世阿弥から金春大夫(禅竹)にあてた二通の書状。五月一四日付書状は永享初年頃、六月八日付書状は佐渡からの発信で永享七年(一四三五)のものらしい。両状ともに能楽論と言いうる内容を含む。

系図

禅竹とは? 世阿弥の父は? 音阿弥? というときに。

世阿弥は様々な名前があります。

幼名は鬼夜叉おにやしゃ、一時期は藤若とも呼ばれ、通称は三郎、実名は元清。父の死後、観世大夫を継ぐ。40代以降の法名は阿弥陀仏。世の字の発音が濁るのは、寵愛を受けていた足利義満の指示によるもの。正しくは「世阿彌」。

Wikipedia「世阿弥」

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