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暗洞に声よ響いて #8

最初から
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実装前から新要素獲得競争の戦いは始まる。けして先走って実装前なのにダンジョンを走り回ってたというわけではないのだよ。

そうしておよそ一日かけて探し回った結果、試練の塔5階が件の新アイテムドロップイベントが発生するんじゃないかと目星をたてた。詳しく言えば、このフロアの隅にある、【崩壊領域】と呼ばれる塔オブジェクトが倒壊したmob無popエリア。前から何かあるぞ何かあるぞと噂されていた場所で、10年かそこら経ってようやくの実装だ。

BGの運営は人ではない。故に、そんな人でなしの実装スケジュールなのだ。と誰かが言っていた。

「緊張しますね」
「あ、そうですね、はは」
隣に立つやや初心者っぽい出で立ちのプレイヤー三人組の一人が話しかけてきたので、曖昧な笑みを返す。知らない人と喋るの苦手なんだよね。
「ステンバック……さんは一人で?」
「あ、はい」
レベル差的に言えばソロでも十分だろ。という判断だ。似たような考えのソロプレイヤーが他にもチラホラと見える。何処から嗅ぎつけてきたのやら……。ただし彼らは明らかに高レベルかつ派手な見た目をしているので(効率とステータス重視でチグハグな奇怪な装備、とも言える)、そうは見えないぼくに初心者ズは声をかけてきたのだろう。

サーバアップデート1分前。30秒。そして今。

門柱や扉はないが、エリア区切りになっている壁跡を跨ぎ、僕はエリアチェンジをした。

朝起きてご飯を食べ家事を済ませたあと、ダンジョンに再び潜ってみるとグッと人口密度が高まっていた。

『おはようございます、レイコ様。どうやらサーバーアップデートというものが数時間前に有ったようで、その影響のようです』
「タイミング悪いなあ」
なんだろう、そのアップデートって。
『おや? そのマフラーはおしゃれですか?』
正直BGは分からないことだらけ……熟練者でも全貌はわかっていないらしいが、それに倍して私は何もわからないと言っていい。そう考えていると、サンデイは私の新装備を指摘する。

「なんでも」
ないよ。と言おうとした瞬間、ダンジョンバットを追い回す別のエクスプローラーが目の前に現れ私は口を噤んだ。
「あすみません。ああ、まてー!」

人と出会うことなんて、昨日は思いもしなかったのに。

【続く】

資料費(書籍購入、映像鑑賞、旅費)に使います。