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パルプアドカレ2022

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パルプで赤い爺さんを撃ち抜け! 今年もやるぜパルプアドカレ。
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#パルプ小説

#パルプアドベントカレンダー2022 閉会式

メリークリスマス!みんな元気? 私はタヌキです。むつぎはじめです。 みなさまのご協力により無事惨多苦労死は討ち果たされ、世界に平和が取り戻されました。そんな企画ではありませんでしたか。そうですか。 おつかれさまでした!各日担当作24作+飛込み参加作7作 合計31作もの投稿があり、見事大成功と相成りました。 更に言えば、各日担当作については、年末の忙しい中にもかかわらず一日の抜けもなく投稿していただき、不肖主催の立場からもお礼と称賛を送りたいと思います。 ふしぎSF、ファン

夏から来た星の舟 #パルプアドベントカレンダー2022

――2009/8/8、14:15 茨城県鹿嶋市、鹿島灘某所の海岸 (ねえお姉さん、名前はなんていうの?) ((あたしの名前はね……沙羅。沙羅って言うんだ)) 風に揺れる銀髪と白い服がまぶしかった。 (沙羅さんはどこから来たの?) ((ゆーちゃんになら教えてもいいかな)) そう微笑んで、少女が指差したのは……。 ――2022/12/24、18:40 東京都足立区某所、路上 「うーさーお前彼女とはその後どうなんだ」 「うまくやってるよ」

クリスマスの約束 #パルプアドベントカレンダー2022

 私は待っています。あの人を。行ってしまった、帰ってこないあの人を。  ええ、いい人だったとは言いません。頭は良くない、甲斐性もない、世渡りもうまくない。かといって優しい人でもありませんでした。  私がそんなあの人と一緒にいたのに理由なんてありません。ただ、なんとなく、一緒にいた。離れる理由がなかったから、それだけ。  強いて言えばその方が便利だったから。  この街では一人でいるよりも二人でいた方が、生き延びる可能性が高くなります。何かを手に入れるのも少しだけ簡単になります

劇場版 クアドラプルプレイ ドブキュア~聖夜に響け、魔法のメロディ~ #パルプアドベントカレンダー2022

 冬場のドブヶ丘では、屋外で夜を過ごすことは死を意味する。ドブ券は屋内で過ごすための命のチケットとなり、幸運な住人たちは安く過ごせる酒場に殺到する。  そのため今日も酒場「アンディフィート」は満席だった。 ◆◆◆ 「店長、3番さんにホットビールとポテトサラダベーコンマシマシ。16番さんに目玉ブドウ焼。87番さんに生命の水おかわりで」  顔色の悪い店員が両手いっぱいにグラスを抱えてカウンターにやってきた。よく観察する者がいれば、その右手が白く曖昧に蠢いているのがわかるだろう

セカイがオワルまでは #パルプアドベントカレンダー2022

 ――20XX年、6月のある日……俺達は衝撃の事実を告げられた。  “12月31日の24時、この世界が終わる”  そんな突拍子もない話、誰も信じる筈がない。今までだってそんな話は何度もあった。話題性を集めたい人間ってのはいつの時代もいるもんだ。  だが、今回ばかりは本当らしい。今年を最後に“この世界”が終わるのだと、みんなが信じた。信じざるを得ない理由があった。  俺達一人一人のところへ……いわゆる“天の使い”が、世界の終わりを直接告げてきたのだ。  “この世界”を管

クリスマス・キャロルには遅すぎる #パルプアドベントカレンダー2022

LEVEL 1  意識を取り戻した広瀬をまず出迎えたのは、磨き上げられた革靴のつま先だった。 「おう、起きたか広瀬」 「田口……」 「久しぶりやな、広瀬、お互い老けたもんやな」  田口は笑みを浮かべていたが、その目は笑っていなかった。  広瀬は、自分の状態を確認した。両手両脚を縛られ、冷たいコンクリの床に転がされている。 「俺とお前だけやない、煮懲羅組も、鮫島の親分もや。俺が二十年ムショにいる間に、みーんな変わってしもうた。……全部見させてもろたで」  煙草に火を

豪風の又三郎 #パルプアドベントカレンダー2022

 東京の片隅に、小さな暴走族がいました。  暴走族といってもメンバーはたったの七人きりで他に整備士もおらず、溜まり場は族長の馴染みのボロいサ店です。彼らは毎日のようにバイクをいじり、轟音と共に街を駆け、益体もない話をし、たまに抗争をしたりしていました。喧嘩は負けなしで、五十人もいる軍隊をたったの七人で壊滅させたこともあります。  総長の名前は片喰アキラ。銀色の髪をオールバックにした背の高い男でした。そんな彼が率いるチームは、名をカタバミ銀餓団といいました。 -1- 鮮や

【ケンタッキー・フライドヒューマン】#パルプアドベントカレンダー2022

「チキンの配達ですー」 頼んでねえけどぉ?と、気だるげな返事がインターホンから返ってくる。 「303号室のスミダワラさんであってますよねー、お支払済みになってますけどー」 配達員はインターホンのカメラにチキンのバスケットをかざして見せる。 「あぁあ……?」 苛立ちと戸惑いの混じったため息。 4秒ほど無音になった後、ドア越しに威圧的な足音が近づいてくる。 サンダルを履く音。 感情を隠そうとしないタイプの息遣いをドアの向こうに感じる。 シリンダーがガシャリと回転する音。 鍵が開い

あか、しろ、みどり  #パルプアドベントカレンダー2022

「ツモォッ!」  有線が流す竹内まりやの歌声は、牌を叩きつける音と野太い声に掻き消された。  マスターの矢島が珈琲を淹れる手を止めて卓上に目を遣る。和了ったのはまたしても大橋だった。赤五萬を引き入れての面前清一色、自摸。赤ドラを入れて八翻、一万六千点の倍満。  同卓する三人から点棒をせしめると、大橋はヤニに染まった黄色い歯をむき出しにしてがはははと笑った。  矢島がこの部屋でマンション麻雀を開いて二ヶ月になる。摘発に備え三ヶ月に一度のペースでハコを変えているが、幸い未だにガ

シンパンマン #パルプアドベントカレンダー2022

1 沸き昇る湯気。金色に透き通った湯舟。ここはどこかの温泉施設の露天風呂。癒しを求める人々の憩いの地である筈のここは、しかし今、暗澹とした雰囲気で満たされていた。 「――でさ。俺、ワンちゃんが哀れでしょうがなくて、財布に入ってた万札募金箱にぶち込んじゃったんだよね!」 「マジかよ。拓ちゃんマジ善人じゃん」 「よせって」 「こないだも掃除か何かのボランティアしてたべ?世界中が拓ちゃんみたいな人で溢れれば紛争戦争全部なくなるっしょ」 「マジ、そういうのいいから」  露

【地獄サンタ】 #パルプアドベントカレンダー2022

intro. 二〇二一年、サンタは死んだ。だがやつは戻ってくる……そう今宵、この聖なる夜に。 Ⅰ. カチ、カチ、カチ、と腕時計の針は進んでいく。少しずつだがゆっくりと、十二月二十五日は近づいてくる。  だが、夜明けまで……あと十時間もある……。  山田太郎は腕時計を見つめ震えていた。呼吸は荒く、手足は凍えるように冷たかった。太郎のいる路地裏は生臭く、不気味なまでに静まりかえっている。  表通りとはまるで別世界だった。楽しげな人びとの声。仄かに差しこんでくるクリスマス・

即・サイ売り #パルプアドベントカレンダー2022

1.  雨が止んで間もない夜だった。街灯がアスファルトを照らす。平日の駅前の通りは10時を超えると人気がなくなっていた。  宇和島剛はチヒロの手を取りながら走る。背後から怒号が追い立てる。チヒロの小さな歩幅では追いつかれてしまう。剛はチヒロを背負い、走る。冬の始まりの冷気が肺を苛む。剛はでたらめに道を選んで駆けた。ジュエリーショップの前を過ぎ、中華料理屋の油臭い排気口を抜ける。足音は先ほどよりも大きくなっていた。  大通りに出て信号にさしかかる。青信号が点滅し、渡る前に赤に

【総合目次】 #パルプアドベントカレンダー2022

よくきたね🦝 この記事は、#パルプアドベントカレンダー2022の総合目次です。 期間中随時更新されます。 各日の担当者さんの自己紹介を載せておりますので、事前にどんな作家さんかチェックしたい人はレッツ・アクセス! ▼企画概要はこちら▼ ▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼12月1日 ベンジャミン四畳半 往生!月面コンビニ事故物件 12月2日 電楽サロン 即・サイ売り 12月3日 岸正真宙 緑と赤い雨 12月4日 遊行剣禅 あなたに紙の祝福あれ 12月5日 しゅげ

【飛び入り参加歓迎!】 #パルプアドベントカレンダー2022 やります

みんな元気? 私はタヌキです。むつぎはじめです。 今年も逆噴射小説大賞が大変な勢いで盛り上がりを見せつつも無事終息し、2022年も終わりを見せ始めた今日この頃。パルプスリンガーの諸氏におかれましては如何お過ごしでしょうか。規定数が一本減らされたことで脳内化学物質がばくはつし、遣り場ない創作意欲でギラついておいでではないでしょうか。 というわけで、今年も年末のワクワクをパルプで盛り上げ、以て来年への活力と為すあの時期がやってまいりました。 パルプアドベントカレンダー2022